本丸編5 聖竜姫とマジカルフェアリー! あなたはどっち派?
もう以前のように抱き上げることは叶わなかったが、それでも力尽き、横たわるオモチを優しく包容したのは氷雨であった。
「頑張ったわね、オモチちゃん」
自己修復機能を持つオモチはそのままでも回復するのだが、それでも頭を撫で、微笑む氷雨。
聖妖精巫女へと進化し、数百年も貯め続けた霊力と、アシガルの煩悩照射を持って勝利したオモチの実力は他を圧倒したに違いない。
だからこそアッパレらは手酷くやられてはいたが、オモチの快勝に盛り上りをみせ、四天王からは余裕の笑みが消えた。
「我ら四天王を降す実力者がいたとは驚きだな」
「でしょう? だから油断は禁物。特に伝説と名高いスズキとサトウ。それに刻の賢者というあの老人は何を考えているのか分かりません。僕はあの老人を抑えておきますよ」
五明は言葉巧みに四天王らを誘導すると、自身はシンガンと向き合いニタニタ笑った。
「気持ち悪いぞ頭脳くん」
「あなたのその尊大な態度をやっと消すことが出来るかと思うとつい顔が弛んでしまうのですよ」
魔技場に続いて本丸でも対峙するシンガンと五明。
シンガンはアシガルらを促し、四天王との戦いを進めた。
すると四天王の中から一番若そうな少女が前に出て、氷雨を指名した。
格好はまるでお姫様のように漆黒のドレスを着こなし、金髪縦ロールの髪をなびかせながらパラソルを氷雨に突き指すようにした。
(なんだぁ? ただのお嬢様って感じで可愛いんですけど! あの娘もめちゃくちゃ強いのかよ)
アシガルは心疑問を抱いたが、指名された氷雨はゆっくりと立ち上がると、オモチをアシガルに任せ、その四天王と対峙した。
「よし、全員フルバージョンでいくぞ! 愛姫子ちゃん、チェンジだ!」
その言葉に傷付き片膝をついていた長峰も反応する。
「愛姫子! 僕の力も使ってくれ!」
「オッケー! 来い、神竜石! 竜・王・憑・依!」
アシガルの鎧に収まっていた聖玉盤から神竜石が飛び出し、氷雨から竜心の胸当と双翼のピアス、そして美菓子からは竜気のマントが離れ、愛姫子を取り巻くと燦然と光り輝く姿に変わった。
「聖竜姫・愛姫子、降・臨!!」
「よっしゃ、次は美菓子ちゃん! いくぞ」
「はぁ~い! おいで、精霊石! フェアリーアップよ!」
続いて同じく聖玉盤から精霊石が四大精霊の輝きを放ちながら美菓子を優しく包み込むと、トップアイドルのようにヒラヒラと聖なる衣をなびかせた姿に変化。
「誕生! マジカルフェアリー・美菓子!」
聖竜姫となった愛姫子はメラメラと燃え盛るようなオーラと、通常よりも一層清廉された神器を身につけて、美しくも内に秘めた闘志が他を圧倒する強さとなって現れていた。
しかし他者とは違う視点で見るのはやはりアシガルか。
(きたきたぁー! うひょースカートが一段と短くなることを知ってるのは俺だけか!? しかも……う~ん……純白のサテンパンティがたまらないのよ! お尻がキュッとしててさぁ)
心ムラムラするアシガルは続いてマジカルフェアリー・美菓子を上から下へと何度もなぞるように観察しまくる。
(あのねぇもう最っ高! たゆたうような優しさをイメージしたあのヒラヒラの衣が美菓子ちゃんによく似合ってて……胸元のたわわなおっぱいを挟み込んだ感じとかもうどうしてくれるんすか! ムチムチボディを強調しててナイスですねぇ!!)
完全無欠のスズキとサトウを心行くまで堪能し尽くしたアシガルは、鼻血が止まらず興奮し過ぎて、そこここの血管がはち切れそうであったが、敵も含めて何かの儀式なのかとアシガルらを見ていた。
「勇者の様子がおかしいが……」
「霊気がどんどん上昇しておる……恐るべき奴!」
ロングサンとヴォルクスはそんなアシガルを見ると畏怖の念を抱いたが、五明は失笑していた。
(バカめ、ただ欲情しているだけではないか)
「か、可愛い……あの姿の二人もコンプリートしたいぞ! 余は!!」
アシガルに負けじとムラムラするおバカさんがここにもう一人、いや多数。
「美しい……愛姫子……」
「べっぴんさんだな……愛姫子……」
「長峰さまっ!」
「アッパレッ!」
「長峰様、アッパレ殿、美菓子殿も負けてはいませんよ!」
「雲月ってば……ボクがいるのにぃ」
長峰とアッパレは一瞬で愛姫子の虜となったが、すぐにロキスとインラバに目隠しされ、美菓子派閥の雲月も前戯によって縛り上げられた。
「俺はやっぱり氷雨派だな! うん」
「あらそうなの? あたしは断然アシガル派よ! バルザークとオルドランは誰派!?」
みな一様に閏閥作りに躍起になり、バレンコフは恥ずかしげに氷雨を推し、断然アシガル派のラヴチューンはついつい真面目一辺倒の重鎮二人にまで勧誘してしまったが、驚きの回答を頂くこととなる。
「俺はバレンコフと同様に氷雨だな。あの献身的な心に惹かれる。オルドラン殿はどうか?」
「俺か……俺は……オ、オモチかな……」
バルザークはキッパリと答えたし、何故かオルドランは頬を赤らめて先程まで幼女であったオモチを推した。
そんな姿を見ていたジクイルは血相を変えて大喝した。
「バカモノ! それはあの気品に満ちた氷雨とかいう御婦人に決まっておろうが! 落ち着いた感じが実にヴィーナスではないか! 余は氷雨もコンプリートしたいぞ!」
もはや何のためにそこにいるのか分からなくなる一堂なのであった。
(わかってないなぁみんな。俺は美女全員だな! うん!!)
いつからお前のハーレムになった、アシガルよ。
つづく
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