プリンセス氷雨!
「一級パーティーアシガル一行様方、こちらへおいで下さい!」
突然開いた扉から兵士が恭しく言ったが、
「ねぇ、このお菓子美味しいねぇ!」
「ほんとほんと! なんか見た目も味にも高級感があるわね! んぐっエッホンエホッ……」
「あぁあぁ! そんなにせっつくから! はい、紅茶が入りましたよ!」
想像以上に寛いでいる三人に兵士は唖然としていた。
「あれ? 誰か来ましたよ」
「おっ氷雨さんが呼んでるんすかね?」
「はぁ……死ぬかと思った……んじゃまぁ行きましょ!」
寛ぎも新たにまた広く冷たい廊下をぐんぐん進んでいき、通された場所に到着してみて初めて気付いたのは愛姫子と美菓子だ。
「あれぇ!? ここってお城じゃん!」
「だから既視感を感じてたんだねぇ」
「デッジャブー!!」
(この人らは本気で気付いてなかったんか! 天然?)
そこはつい先ほど王様から一級パーティーの称号を与えられた玉座の間に他ならなかった。
国王ケムタ13世はその時と何一つ変わらず、玉座に座っていたが、もう一方の玉座にも誰か座っていた。
先ほどは居なかったその女性に三人は興味を抱いた。
「寛いでくれたかしら?」
その女性は言わずもがな、この国の姫君であることは一目瞭然であったが、目映いばかりのドレスに身を包み、黄金のティアラを頭に付け、純白のロング手袋から延びる長い指で唇に触れると淑やかに笑った。
「え? えぇまぁ……」
「綺麗!! 羨ましいなぁ……」
愛姫子も美菓子もその美しい姫様に釘付けとなって答えるが、アシガルは違った。
(う~ん。こっちの衣装もいいなぁ……)
そんなやり取りはさておき、国王ケムタ13世は重々しく口を開く。
「娘から話は聞いた。早速伝説の名の元にモンスターの奇襲を防いでくれたとか! 礼を言うぞ、アシガルパーティー!」
「えっ!? 娘?」
「なんで? なんで姫様が!?」
どうにかならないのかこの二人はと思い、アシガルは姫様に目と頷きで合図を送った。
「ウフ。まだわからない? 私よ、氷雨よ」
数秒ほど謎の間があってから愛姫子と美菓子は盛大に驚きおののいた。
「な、なんですってぇ!? ヒサ姉がお姫様ぁ!?」
「全然わからなかったです! 雰囲気が全然違うんだもの氷雨お姉様ったら!」
(天然っていうかただの鈍感!? バカ?)
「ウフ、驚かせちゃったかしら? 王国の危急存亡の時に王族だけのほほんと城の中に居るなんて私にはできなかったのよ」
「左様、我ら王族も先陣を切って魔軍との戦いを繰り拡げておる。現に我が国の第一王子にして氷雨の兄でもある雲月もまた魔王討伐のため旅立っておる」
「へぇーそうなんだ!」
「えぇ。だから私も伝説のスズキさんとサトウさんがこの世に出現したと聞いて、いても立ってもいられなくなってね。こちらからあなた達に会いに行ったのよ!」
「その通りじゃ! 今一度戻ってもらったは他でもない、改めてその伝説の力をお借りしたいと願い、更なる旅の物資を授けたいと思ったのじゃ!」
「わぉ! ラッキー! 今度こそ軍資金ちょうだいよね!」
愛姫子は一国の王にさえタメ口で、しかもおねだりしたし、美菓子は美菓子で王様の話を聞く振りをして煌びやかな氷雨にばかり気を取られていた。
(おぉ! なんだ? アシガル君運が良すぎですよぉ! そうか、氷雨さんは二人の力を試し、本物と確信したからこそ一回城に戻って王様に話したのか……)
「物資を受け取り、今後の目的地やらをゆっくりと相談するがよい! 頼むぞアシガルパーティー!」
国王からの絶大なる信頼を勝ち取ったアシガルパーティーはまた例の部屋へと戻ると新たに授かった物資を開いたり、仕立て直されたセーラー服に着替えたりとワイワイガヤガヤとするのであった。
つづく




