旅立ち編 出会い!
「わわわわわわぁぁぁ!」
「ちょっとぉ! スカートがめくれまくりよ!」
「何処まで堕ちるのぉぉぉ!!」
「次の者!」
「は、はい!」
ここは広大な王宮の一室、そこには異世界から新たなる救世主を召喚する為の陣が敷かれ、神官達が祈りを捧げる神聖な場所であった。
この世界の人々は今、世界を覆い尽くさんばかりの一大勢力と化した魔王と魔王軍を退治すべく、名乗りを挙げたものに勇者の称号を与え、異世界から1人だけ共に旅をする者を召喚することが許される。
「うぅ~……なんで俺が魔王退治に行かなきゃならないんだ!」
そう愚痴る少年の名はアシガル。
王宮近くの村に住む何処にでもいる普通の少年。
ひょんなことから雪崩式に、トントン拍子に、するすると名乗りを挙げさせられた彼は、冴えない面持ちで召喚の時を待っていた。
「行くぞ、若者よ!」
「お、お願いしまーす……」
神官の祈りが陣の中央に小さな光の球を作り出すと、真っ赤に燃える光と、揺蕩う青き光とが螺旋となって真っ白な扉を作り出した。
「さぁ若者、アシガルよ! ソナタの旅の共を呼ぶがよい」
「え? えーっと……おーい! い、行くぞぉ……」
アシガルは極々微小な声で片手を口に当てながら呟くと、真っ白な扉がゆっくりと開いていく。
「こ、これは!?」
扉を開けた転移者を何故か驚愕の表情で迎える神官。
そんなことは露知らず、アシガルは神官の背後から覗くように出現した者の姿を目を細めてみる。
「はぁ、ここが異世界ってやつ?」
「そうみたい……なんか薄暗くて陰湿だね」
「ど、とういうことじゃ!? 転移者が二人!?」
「あのぉ……何か問題でもあるんすか?」
元々自分の意志で勇者に志願したわけではないアシガルにとって、この奇跡を奇跡と認識することは出来なかった。
「今まで何百、何千という勇者の為、異世界からの転移者を迎えて来たが、勇者一人に対して二人も出現することなどなかった!」
まだ理解出来ない体のアシガルはさらに問い合わせる。
「それってなんか問題があるんすかね……だったら俺、降りようかな。ハハ……」
振り返った神官は手に持つ杖でアシガルの頭を打楽器のように何度も打つと、息切れしながら揉んどり打って喚いた。
「バカ者! これはまさしく瑞祥! オヌシは只者ではないのかも知れぬ!」
「いやいや、タダの村人ですって」
アシガルは手を横に振りふりしながら絵で書くならば、縦線を顔中に張り巡らして否定した。
「であえであえぇ! 奇跡が起こった! すぐに国王様に知らせるのじゃあ!!」
慌てふためき、よろめきながら神官は一室を出ていき、その場にはアシガルと美少女二人が運命の出会いでも果たしかのように、互いを見詰め合うのであった。
つづく