攻防の先に
「よし、このまま押せばそのうちダメージを与えられるわよね!」
「そろそろ命中させたいよねぇ!」
まるでアッパレの言葉が耳に入っていないかのように再攻撃の態勢を取った二人に、これでもかという程の渾身の声を再度張り上げた。
「だからちょっと待てーい!! 人の話を聞けーい!!」
「人? あんた魔物でしょ?」
(やっと言葉が通じた!)
「今度は私から始める番ね!」
だが美菓子はまだ話を聞く気はないようだ。
「あのぉ、あちらさんがちょっと待てって言ってますけど……」
(そうだ小僧! お前がリーダーだろうがっ)
「えっ? なんですか、アシガルさん」
やっと攻撃態勢を解いた二人にアッパレはここぞとばかり口を開く。
「お前らは召喚されたばかりではないのか?」
顔を合わせた二人は、
『そうだよ』
「では何故そんなに強い!」
『さぁ……』
アッパレは会話が成立したことに安堵の表情を浮かべたが、話は終わりなのだと勝手に解釈した二人はまたもや攻撃態勢に移行した。
「だ、だから待てーい!! 会話をする気はないのかっ」
「なによ?」
「話し合いによる解決でしょうか?」
「自分達で攻めて来てー?」
「まぁ話を聞きましょうか」
「アッパレ様……どうしましょ……」
最初と打って変わった態度のピューロはコソコソとアッパレの後ろに隠れた。
(グムムム……どうしよう。まったく勝てる気がせん! こんな強い人間は始めてだ)
作戦も言葉も何も思い付かず、身震いするだけのアッパレを見て、愛姫子は速攻を仕掛けた。
「話は終わりー? じゃあそろそろ終わりにしてあげるわぁ!」
愛姫子の斬撃はついにアッパレの甲冑を斬り裂き、鋼鉄の肉体にまで至った。
(グヌッ、こいつは本物だ! くっ、このまま殺られてたまるかっ)
へなちょこっぷりが露見したとはいえ、腐っても魔軍隊長としての矜持が鋭いカウンターを愛姫子に返した。
(ヤバイ!)
愛姫子は危機感を刹那に感じると、咄嗟に上体を反らした。
そのカウンターは下から上へと斬り上げる行為であり、烈風が如きその切っ先はすんでのところで愛姫子を両断するところであった。
しかし紙一重で避けた愛姫子にダメージはなかったものの、ヘソから胸元にかけてセーラー服を引き裂かれ、美乳がポロンと出てしまった。
「くっ! 油断したわ……」
後方に大きく跳躍し距離を保つと、愛姫子は悔しそうに言ったが、胸元が露になっていることに気づいてはいなかった。
「おぉ!! 愛姫子ちゃんの胸が見えそうで見えない! 角度が悪いぃ!!」
アシガルよ身体の心配をしろよ!
「愛姫ちゃん大丈夫!?」
少し距離をおいた場所から美菓子が声をかけたが、悔しさのあまり周りが見えなくなっている愛姫子には聞こえてはいなかった。
(ぐおぉぉ!! 見たい! 愛姫子ちゃんのおっぱいぃぃ!)
その時、勇者アシガルの眠っていた力が目を覚まし始めるのであった。
(なに!? アシガルが不思議なオーラをはなっている?!)
それにいち早く気付く氷雨であったのだが。
つづく