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魔階段の戦い5 シン×魔界十鬼衆マッソォ

シンはいきなり己の力を一気に開放すると、カバの魔獣に突進した。


「俺の名はエダゴー・シンボ! その首もらった!」


しかし相手も腕力でならした魔界の猛者、シンの攻撃を容易く受け止めると名乗りついでに反撃に転じた。


「我が名はマッソォ! 魔界で俺のパワーに勝る者など皆無であった! それはこの表の世界でも同様と知るがよいっ」



魔軍きっての剛力者たるゴウワンと渡り合ったシンである、即座にマッソォの力が自分より数段上であると悟り、特攻覚悟でなおも攻め続けた。


「うぉぉぉ!! くらえ! ドワーフショック!」


常日頃より大地と語らい、その恵みに感謝し生きるドワーフにとって、大陸全土の地力を借りたその技は凄まじく、魔階段全体が揺れ動き、マッソォを取り囲むように一点集中。

マッソォは超局地的大地震の餌食となった。



「す、スゴい……これがドワーフの力!?」

「これじゃ粉々だぜ! ゴウワンと互角な戦いをしただけのことはあらぁ!」


現地リポーターのように実況したはラヴチューンとバレンコフであったが、その一撃でもマッソォにダメージは与えてはいなかった。



「表世界のパワータイプはその程度か。ガッカリしたぞ。本当の剛の技とはこういうものをいうのだっ! 鉄血無双(てっけつむそう)ぅ!!」



己の拳を強固な鉄の塊に変えたマッソォは猪突猛進、シンに向かっていくと、巨大なハンマーで打ちつけられる杭のようにシンは大地に叩き伏せられ、その激しさを象徴するかのように砂塵が、辺り一面を覆い尽くした。



「くっ……なんという力の持ち主だ……たて! 立つんじゃシーン!!」

「なんてヤローだ!」

「まずいんじゃない!? アシガル!」

「そうだよぉ! 早く他人玉使ってシンさんの援護しなきゃ!」



ゴウワンは拳を握ってシンにエールを送り、愛姫子と美菓子はマッソォのあまりにも強力な打撃力に目の色を変えてアシガルを促したが、アシガルは冷静に戦況を見詰めていた。



「わかってる! だけど、きっと他人玉だけじゃこの戦力差は埋まらない。俺にいい考えがある」



アシガルはそう言うと魔城に待機するビジョンとの通信手段にしてカメラでもある猫型ロボット、通称ニッタさんを呼んだ。



「どうしたアシガル!?」

「ビジョンさん、ちょっとお願いがあるんすけど」



準備が出来たアシガルは大地にめり込んだシンに聞こえるような大音声(だいおんじょう)で叫んだ。



「シンさぁーん! 今からモニターに映像が流れるから、それを見てくれー!!」


相当なダメージを負ってしまったシンはボロボロになりながらもその声だけはきちんと耳に入っていた。

そしてうつ伏せの状態を何とかひっくり返し、何段も連なる魔階段を朦朧(もうろう)と見詰めていた。



しかし突然目の前に愛する者、つまりは妖精国の女王クイーンスフレが不安そうな顔をして、氷雨と凌ぎを削ったたわわな爆乳の前で両手を組んでシンを見詰めている姿が映し出された。



「クイーンスフレさぁーん! 頼みます!!」


「シン……これ以上貴方に傷付いてほしくありません! 頑張って! 貴方はこの世界で唯一のドワーフを束ねる王様。魔界の悪に負けないで……」



その言葉を聞いた瞬間、どこにそんな力が残されていたのか、シンは立ち上がると額に(したた)る真っ赤な血を拭いさると、これまた名工・ガンテツの逸品である鉄槌(てっつい)を構え、命を削って霊力を高め始めた。



「ダメだ! それじゃシンさんの身体が持たない! これを受け取れ!!」



アシガルはそう言って他人玉をシンに向かって送球した。

どうやらシンは嫌悪の部類には入らなかったらしい。


その他人玉から放出された光を浴びたシンは、これまでに感じたことのないほどの力がみなぎ(みなぎ)り、それまでを遥かに越える霊力を持って鉄槌を振り回し、マッソォへの攻撃に転じた。



(くっ、先程まで死人も同様だったはずが……なんだこの噴火した火山のように燃え盛る霊力は!?)


ジリジリと後退を余儀なくされたマッソォはそれでも何とか鉄槌攻撃を弾き返しながらも対抗。

ガッチリと両腕を組み合ったシンとマッソォ。


「ぐぬぬぬぬ……この死に損ないがぁぁ!!」

「ぬかせっ! 俺は負けんぞぉぉぉ!!」



(なんだ!? 何か一度見たことのあるシチュエーションだな?)


アシガルは痛烈な既視感に襲われ、それは氷雨も同様であった。


「これはまさにシンさんとゴウワンの戦いの再現!!」


それだと思い出したアシガルは、その後どうなったのかと、記憶という名のビデオテープを再生した。



(頭突きか!)



「いくぞぉマッソォ! くらえぇい、岩石額々(がんせきがくがく)!!」



まさにあの時の再現であるかのような戦いであったが、決着の時は少し違っていた。

それはシンとゴウワンのバトルでは最後に互いの頭突きで相討ちとなったが、今回の相手であるマッソォの思考回路の中に頭突きというチョイスはなかったようだ。


従って一方的に岩石のように硬い額が、いわば無防備なマッソォの眉間にクリアヒットしたのだ。



「がはぁあ……」


ショックの瞬間に意識が飛び、白目を剥いたマッソォは崩れるように真後ろへと倒れたが、シンはなんとか持ちこたえてその場に立っていた。



愛とアシガルの照射のダブルコンボで見事強敵、マッソォを木っ端微塵に降したシンなのであった。




(フム。コヤツはなかなか戦術に長けておるようだ)


人知れずアシガルの機転に感心する心眼の腕輪なのであった。



つづく





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