魔階段の戦い2 ローウェン・エピカ×魔界十鬼衆
魔界十鬼衆にまったく歯が立たないローウェン、そして逃げ惑うばかりのエピカ、それを見て激怒するラヴチューンとバレンコフ。
嘲笑う五明、お国の恥と殺気に似た熱気をモニターにぶつける獣人国の人々。
しかしローウェンは意外と冷静であった。
(た、確かに勇者アシガルはそこまで来ている!)
本当かどうか、実はエピカもただ逃げ回っているだけではなかった。
(は、早く来てぇ~)
「我が配下は圧倒的ではないか!」
ご満悦のヴォルクスと五明は獣人の本当の力をまだ知らない。
アシガルらは足早にマンテス城を後にし、遂に魔城まで辿り着いていた。
心眼の腕輪が一飛びに護送してくれたからなのだが。
「こ、これが魔城か……」
「最悪なデザインね」
「私嫌いだなぁこんなお城……」
「いかにもって感じよね」
お決まりのダメ出しをしたアシガルパーティーであったが、アッパレとインラバ、それに二使い魔のピューロとミューロは久しぶりに戻った、いわば故郷を見るような感慨深い顔で懐かしんでいた。
そして勝手知ったる魔城の内部を案内するように先頭に躍り出るのであった。
「付いて来い! アシガル!」
「なぬ!? め、命令すんじゃねーよ!」
物語全般からストーリーを動かしてきた面々の行動に呆気にとられた雲月と前戯、さらにはガンテツは見失うまじと、不気味な回廊を急いで追い掛けて行くのであった。
「ぬぬ!? お前はアッパレ! それにインラバではないかっ」
装置完成にほくそ笑み、技術神官テンガンと意気投合していた魔参謀ビジョンはモニター越しに獣人らの劣性を観るに付け、手に汗握る熱視線を送っていたのだが、急な来訪者についつい相好を崩していた。
ビジョンはただ今の状況をざっと説明し、ラヴチューンらが繰り返し語ってきていたエロ勇者アシガル、そして伝説のスズキとサトウを老眼鏡越しにジロジロと見詰めた。
マンテスとは既に同盟を結び、互いを補い合う協力者同士となってはいたが、勇者パーティーといったいどう接っすればよいのか判断に迷ったビジョン。
それを一瞬にして払拭するかのように心眼の腕輪が意外な人物に親しげに話し掛けた。
「おぉやはりお前が技術支援にきていたのか、テンガン!」
「お久しぶりにございます! ご先祖!!」
アシガルらは心眼の腕輪をご先祖と呼んだ技術神官・テンガン をジロジロと観察するように調べ付くし、仰天した。
「あー!! 愛姫子ちゃんと美菓子ちゃんを召喚する時にいたクソ神官じゃないか!」
「本当だ! ただの脇役じゃなかったの!?」
「確かにぃ!」
「だぁれがクソ神官だっ!」
三人の驚きを和らげるように補正したのは氷雨だ。
技術神官テンガンはマンテスの軍事力と魔法力を一手に担う国の中心人物であると。
「ハッハッハッ! その通りじゃ。我が子孫もこうして342年の因縁にケリを付けるために日夜働いているのだ!」
いったいどれだけの伏線を張り巡らせていたのか、そしてそれらを一つも逃さず回収してきていたのか。
アシガルらは心眼の腕輪の緻密にして綿密な計画に改めて驚かされるばかりであった。
そして意気投合したテンガンのご先祖が、アシガルらの味方であると知ったビジョンは先程までの迷いなど吹き飛ばすようにアシガルの腕を握って心眼の腕輪に語りかけた。
「おぉテンガン殿のご先祖様ですか! あなたの子孫は実に素晴らしい発想と確かな技術を持っておりますぞ! 彼の協力無しに、ただ今遂行中の突撃作戦はありえませなんだ」
興奮気味にそう話したビジョンはアシガルらとのわだかまりも解け、元来の人の良さを滲み出し、ホウレンソウを行った。
「話は分かりました! このアッパレ、全身全霊戦って参る!」
「ビジョン様もあまり無理しないでねぇ! 年なんだから」
そう捨て台詞を吐いたアッパレとインラバを含めて、全てを把握したアシガルらは突撃部隊と急ぎ合流すべく、魔階段目指して駆けて行くのであった。
月の満ち欠けにより、いまいち調子の出ない聖人ローウェンとエピカは獣霊石を携えるアシガルらを待つために時間稼ぎをしていたのだ。
(待ってろエピカちゃん! 久々に清楚な君の姿がみたいのさ)
何しに行く気だ、アシガルよ。
つづく
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