いよいよアシガル開眼の時!
氷雨は見事にしてスマートに奥義を会得し、インラバらと共に模擬戦の観戦者となっていた。
「えい! やぁ!」
「さすが忍者、素早いじゃない」
愛姫子と前戯は劇場のアクションシーンさながらの組手をやり合っていた。
「だからね、雲月お兄様とお呼びしてもいいですかぁ」
「ぐぬ……氷雨を敬愛してくれる美菓子殿のたっての願いとあらば俺に異存はないが……」
「ピピィーー!! 美菓子選手、反則っす! いま少しだけおっぱいを雲月選手の腕に接触させたっす! 主審!!」
「美菓子選手、重なる反則により退場!! しっかぁく!」
何故かルールブックもない模擬戦に熱がこもるアッパレとピューロ、そしてぶりっ子全開で色仕掛けに打って出たはいいものの、失格を言い渡された美菓子はお尻をブリブリさせながら観戦席へと歩いて行った。
(邪魔されればされる程、私ってば燃えちゃうんだからね!)
模擬戦ではなかったのか、美菓子よ。
そして武具のメンテナンスは佳境に入りつつあった。
「いくぞっ! そこで瞬時に圧し当てシワを瞬時に伸ばぁす!」
「わかってらぁ! 次は薔薇の弓杖! 霊山・弥彦山の御神木、五葉松の樹液をタップリと塗りつけぇる!」
鍛冶バカ師弟のバカメンテはまだまだ続く。
「まだまだぁ! 各種ブーツはお天気さんで天日干し!」
「アクセサリー系は磨き粉で軽くブラッシング! そして乾拭きぃ!!」
「最後は竜王の神器をさっと湯銭! 温まったところで誠心誠意、磨きまくれぇーい!!」
「忘れちゃいけない刀剣類の検品! 刃こぼれ一つ見逃すまじぃ!」
「聖なる砥石でサッと研いだら即座に水気を拭きとぉーる!!」
『完成!! アシガルパーティー御用達、武具一式仕上がってござい!!』
何の演劇ですかとポカンとする一同に、新品同様となった武具が進呈され、輝きを増した装備品に目を見張る一同。
さすがは世界に轟き渡る名工とその愛弟子と言わんばかりの職人芸に拍手と喝采を送った面々。
アシガルは爽快にして軽快な笑顔を振り撒き、鍛冶屋としての本領を発揮して見せたのであった。
怒涛のメンテナンスが終わり、美菓子の退場を持って模擬戦を終了させたメンツは、今度は居島が六角凧サブレを提供してくれたを合図とばかりに小休止と相成った。
これまたお茶が合う美味な食感を堪能したそれぞれは、最後に行うべきアシガルの能力開眼について心眼の腕輪に聞き込み調査を開始していく。
心眼の腕輪は確かにここに居並ぶ女性陣の力が必要であると豪語した。
初めから共に旅してきた愛姫子達はどんな無理難題を押し付けられるのか気になっている様子だ。
相変わらずの何も知らない前戯はどんなことでも協力すると安請け合いしてしまっていたし、インラバはおっとりとした口調で暇だから付き合うと、これまた軽率に協力を惜しまなかったのだが。
「嫌な予感しかしないわね……」
「これよりアシガルの深層心理にダイレクトに接触し、コヤツの本能を引きずり出す。が、その後、コヤツが行う行動に一切抵抗せず、コヤツのやりたいようにやらせてもらいたいのじゃ!」
それはまるでセクハラを許し、受け入れろと言っているようなものだと愛姫子以下二名は身の毛もよだち、寒気を催したは言わずもがな。
「それでは行くぞっ煩悩勇者アシガルよ!」
心眼の腕輪は青白い触手のようなものを幾つも出すとアシガルの前頭部を、後頭部を、左脳右脳を押さえつけると、深層心理へと精神感応しゆくのであった。
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(ん? ここは?)
気付くとラバ子は保健室の椅子に座っていた。
黒のタイトスカートに黒のタイツ、黒のヒールを履き、白いブラウスの上に白衣をまとって、少し濃いめのメイクと真っ赤な紅をひいていた。
ガラガラガラ。
そんな養護教諭・ラバ子に仄かな恋心を抱く生徒・アシガルがいつものように保健室へと侵入してくる。
よほど追い込まれていたのか、生徒・アシガルは入るやいなや施錠するとラバ子先生に飛び付き、耳元で囁くのであった。
「せ、先生……俺、もう我慢出来ないよ」
「ちょ、やめなさい! 突然どうしちゃったの、アシガル君! ここは神聖な学舎よ」
そう言って激しく拒むラバ子に、だからこそ昂るのだと、なおも詰め寄る生徒・アシガルなのであった。
異世界最強! スズキさんとサトウと旅に出ることになったが俺は最後尾を行く!
でしたよね。
俺サイですよね??
つづく
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