よろしく新メンバー!
その場で立ち上がった三人は凛然と立つ美女に釘付けだった。
どう声をかけたものかと話し合っていると、なんとその美女は三人のテーブル席に落ち着くとサラサラと語り出した。
「困っちゃうわよね。ここの酒場、毎日のようにあんな騒ぎが起こるのよ。だけどあなた達は流石ね、あの騒音の中で驚きも慌てもせずに食事が出来るなんて!」
(いや背脂ラーメンが旨すぎて……)
「あの……私、美菓子です! お姉さんお名前は?」
珍しく美菓子は興味津々に大人な雰囲気の美女に率先して話し掛けた。
「ウフ。氷雨よ。サトウさん!」
「氷雨。いいお名前ですね! あっ美菓子ですから」
(あれ? なんで私の苗字知ってるんだろ?)
美菓子は相手の名前を褒め、暗に下の名前を強調することを忘れなかった。
「なんかビシッとしてて憧れるわぁ! あたしは愛姫子、よろしくです!」
「よろしくね、スズキさん」
「愛姫子でいーよ!」
(あれ? なんであたしの苗字知ってるんだっけ?)
愛姫子も氷雨が一目で気に入ったように懐き始めたし、下の名前で呼ぶように誘導することを怠らなかった。
(チャンス! これはもう勧誘するしかないっしょ!)
「あ、あのぉ氷雨さん? 氷雨さんは職業はなんすか?」
「私は忍者よ」
「へぇ~! 益々カッコいい!!」
「くの一ですね! 本当にカッコいいです!」
(よしよし、魔法・剣士、狙撃・魔女ときて忍者ですか! もう少し、後わずかで俺のハーレムが完成する!!)
アシガルよ、お前は何の為に仲間を集めているのだ。
「あの、お姉さん! もしよかったら俺達と冒険の旅にでませんか!?」
「ウンウン! 一緒に行こうよぉ!」
「氷雨さん! 美菓からもお願いします!」
三人にせがまれた氷雨はビックリするほど簡単に言ってのけた。
「いいわよ!」
『えっ?』
まさかの即答に三人は唖然としてしまった。
「私も王宮であなた達の話を聞いて興味を持っていたのよ! だから旅の初めには必ず寄るであろう酒場で待ち伏せしていたってわけ!」
(なんですってぇ~!? 美女が俺を待ち伏せぇ~!?)
想定外の即答OKに三人は王宮でという言葉を聞き逃していた。
「スズキさん、サトウさん。あなた達二人の力が必要なの! 何としても魔王ジクイルを倒しましょう!」
(えっ? 俺は??)
(愛姫子でいいってば!)
(もう! 美菓子と呼んで下さいよぉ……)
氷雨はそれだけ言ってアシガルに天使のように微笑んだ。
(まぁいっかぁ~ウヘヘヘヘェ)
ほんの一時ではあったが、四人は雑談混じりの会話を楽しんでいたが、氷雨は急接近する強い殺気に気が付くと突然立ち上がり外へと走って出ていってしまった。
「なになに!?」
「どうしたのかなぁ?」
(……。ちょっと変わった人なのかなぁ? いやいやあの美貌にはかえられませんがな!)
「とにかく追いかけてみましょう!」
『うん!!』
三人は氷雨を追いかけて外へと出ていくのであった。
つづく




