酒場でランチ!
「おぉ! ここが酒場ね!」
好奇心の塊のような愛姫子はキョロキョロと酒場の中を見渡すと手頃なテーブルを見付けてさっさと座る。
しかし少々引っ込み思案な美菓子はなかなか中に入ろうとせずモジモジしていた。
そしてモジモジ美菓子の魅惑のお尻をしゃがんで観察するアシガル。
「おーい! こっちこっち! 早くー!」
腕に自信のある屈強な男達らがひしめき合う酒場。
そんな場所で一際大声を張り上げて美菓子とアシガルを呼ぶ愛姫子を店内に跋扈するならず者達は注目した。
(ひぇーーあんまり目立たないでよぉ愛姫ちゃぁん……)
(おぉ殺伐とした店内で一輪の華のように芳しきボイス!)
と二人は異色の感想を抱きつつもそそくさと席に着いた。
「ねぇ! どうする?」
せっかちな愛姫子は依然としてキョロキョロしながらお気に入りのアイテムでも探すかのように気軽に言ってくれる。
「私は紅茶がいいです」
(メニューですか? 追加メンバーの話ですか?)
「えっと……じゃあ俺はホットミルクで」
「ちょい待ち! そうじゃないっしょ! 何をしに来たのよ」
珍しく真面目な顔つきをした愛姫子だったが、美菓子にメニューを渡されると腹の虫が泣いたのか食べ物を注文した。
「あたしはカレーラーメン!」
「えー食べるの? じゃあ私はイタリアン!」
(あれ? やっぱ飯ですか?)
「あっじゃあ俺は背脂ラーメンを……」
ちゃっかりランチとなったアシガルパーティーはしっかりと注文した品が来るまでチラチラと回りを見ながら何故かヒソヒソ話で語らう。
「ねぇみんな強そうよ!」
「けど強面さんばっかり……」
「俺は女性がいいかなぁ」
そんな風にバラバラな会話に花を咲かせていると注文の品が届いた。
「うわぁ旨そう! いっただきまぁす!」
「頂きます」
「給油給油!」
それぞれが舌鼓を打ちながら食に没頭し始めた頃、店内で揉め事が起きていた。
「おい! 誰かアイツを捕まえてくれ! 泥棒だ!!」
店内は騒然となり、殺伐とした輩が剣を抜き、弓を構えゴタゴタの内に総出の喧嘩が巻き起こっていた。
「ふぅ……やっぱカレーラーメンは美味しい! たまに食べたくなるのよね!」
「イタリアンもたまに食べたくなっちゃうよね! ご馳走さまでした!」
「大油にしとけばよかったかな……まぁ太麺はサイコー!」
そんな感じでようやく食事を終えた三人は周りの喧騒にやっと気付き、その気付きは何事かイベントが始まったのだと確信に変わった。
泥棒を捕まえるはずのならず者達は盛んに喧嘩に明け暮れていたが、両者が刃物をちらつかせ一触即発となった時、一人の女性が間に入った。
「そこまでよ! 全員、喧嘩はやめなさい! 泥棒はこの私が捕まえました」
名だたる猛者達を睥睨するかのように毅然として言った女性は愛姫子と違って落ち着いていて、美菓子と違って凛々しかった。
剣士なのかその抜群のスタイルを主張するかのように漆黒のボディスーツに身を包み、腰には短めの日本刀を差している。
艶のある長い髪は鮮やかなエメラルドグリーン、宝石のような瑠璃の瞳は見詰められるだけで人々を魅了するかのようだった。
(ムムム!! あの女の人がいい! 絶対に! 今度は大人な雰囲気がいい!)
エロ勇者アシガルはそう主張しようと二人の顔を覗いたが、愛姫子も美菓子も何故だかわからないが、アシガルに賛成の面持ちでいることが即座に理解できた。
『三人目はあの人だ(よ!)!』
つづく