お師匠さん!? じいちゃん!?
「まぁ薄々勘づいてるとは思うが、俺のお師匠さんはガンテツさんだ」
(やっぱり! 祖父ちゃんだ!)
「やっぱり俺のじいちゃんなんすね。なんか見たことある作りなんすよね。いちいち」
「ニシナカ村から来た鍛冶屋の倅でピンッときたぜ! それで? ガンテツさんは元気か?」
「いやぁ、祖父ちゃんは旅に出て留守っす」
「へぇそうか。あの人も世界中に弟子がいっからな!」
「そうなんすか? 俺もじいちゃんが旅に出るまで鍛冶の手解きを受けてたんすよ」
「ほう。だったらあの娘らの装備品のメンテナンスもバッチリだな!」
(俺は勇者だっつーの!)
「ねぇ? なんの話してんのよ!」
「そうですよぉ! これからどうするのか決めていかないとぉ!」
お互いを褒めちぎった二人はモデルのようにポーズを決めると次の目的へと早くも移行したいようだ。
しかも代金は国が免除。
流石は一級パーティーだ。
「なになに? えっ!? この剣はアシガルのじいちゃんが作ったの?!」
「私の弓杖もですか!?」
二人はまだ会ったこともないアシガル祖父に天を仰ぐようにお礼を言ったりとやはり騒がしい。
「もしかすると旅の途中で会ったりしてな!」
アシガルはマスターのそんな他愛ない一言に一抹の不安を覚えたが何も言わなかった。
(できれば会いたくねぇなぁ……)
「それで? これからお前達は旅立つのかい?」
「う~ん。もう一人くらい仲間を募ってからにしたいとこなんすけど、どこかにそんな旅人が集まる場所とかありますかねぇ?」
マスターは太い腕を組むと、
「そうさなぁ、酒場とかどうだい? 毎日都を目指して来た輩がひしめいてる! きっと腕に自信のあるヤツもいるんじゃねぇか?」
まさしくグッドアイディアだと言わんばかりに盛り上がる愛姫子は、
「そうだよ! 出会いを求めるならやっぱ酒場しかないっしょ!」
「そ、そうなの? なんか恐い人とか居そうで不安だなぁ……」
そして愛姫子は思い付いたかのように問い質した。
「ちょっと待って! 美菓のは薔薇の弓杖とかってカッコいい名前が付いてるのに、あたしの剣は何か名前ないの!?」
最重要ではないが、そこそこ重要な件ではあると三人はマスターを見た。
「あぁそうだったな、その二剣は双俊の剣と言うんだ。遣い手は恐ろしいほど素早い斬撃を繰り出すって話だ! そこに魔法の力が加われば……言いたいことはわかんだろ? まぁ遣い手のセンス次第だわな」
「なるほど! 確かに軽いわね! まぁあたしのナイスセンスを見せてあげるわよ! よし、そうと決まったら酒場へ直行よ! 酒場ぁ!!」
「はぁ……じゃあ行きますかぁ?」
「もう! 愛姫ちゃんは言い出したら止まらないからなぁ……」
アシガルと美菓子は猪突猛進な愛姫子に引っ張られるように鍛冶屋を出た。
「んじゃまぁ、達者でな! ガンテツ師匠によろしくなぁ!」
もはや既定路線となった祖父との再会を今から憂鬱に感じるアシガルは、己に化した最後尾を歩くことだけは忘れてはいなかった。
(まぁじいちゃんに会うことはないだろ! なんたって俺達は魔王退治に行くんだ……それよりも美菓子さんのお尻に愛姫子ちゃんの太モモをチェックしなきゃ! 眼福眼福ぅ!!)
どこまでもポジティブでエロいアシガルであった。
つづく




