上陸、竜人の国!
魔王ジクイル直々に魔竜王ヴォルクスとの会談をなすために陸鬼将オルドランを護衛に付け、五明らを水先案内人として魔界に向かった。
それを見送った魔参謀ビジョンを始めとした魔軍幹部らは元の席に戻ると一息ついた、
そこで前々から気になっていたことをビジョンに質問したのはマキだ。
「そういえばヒノモトに遣わした参謀直属の一行はどうなったのでしょうか?」
その事実を知っているのは先に愛姫子と美菓子に敗れ、一番手に魔城へと戻った経緯のあるマキとラヴチューン姉妹だけであった。
「ウム……ここまで音沙汰なしということは失敗したか、闇に葬られたか。ヒノモト……手強い国だ」
魔軍の情報網を持ってしても未だ概要すら知れぬ謎の大陸、ヒノモト。目下の最重要は竜人国攻略なれど、不気味な静けさを保つヒノモトも厄介であることに変わりはなかった。
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ところ代わって、ついでに時を戻して。
バルザークにこっぴどくやられた初老の火竜人・久遠は這う這うの体で龍神が月番で守護する神殿へと戻っていた。
「ふぅー……バルザークのヤツめ、遠慮と手加減ちゅうもんを知らんのか! しかしあの無限変化とは……まさか…………」
独り言をこねながら、この竜人国を守護するという真羅八龍神らが集う場所まで辿り着くと、またもや忙しなく考えだした。
(ちょっと待てよ、今月の月番の龍神は誰であったか? はて……)
そう首を捻って愚考したが、ボケ初めているのか、サッパリ思い浮かばなかった。
イメージとは裏腹に龍神詰所と札が提げてある部屋を軽くノックし、返答によって誰が今月の当番なのかとそれとなく理解しておこうと試みた。
「おーぅ! 誰だぁ?」
(ムム!? この声は……選りにも選って一番気性が激しい雷龍・伴峰様か……)
愕然とした久遠は襖を開くと、そこにはもう一人の月番龍神の瑞龍・海鏡が黙々と天界通信チャンネルモニターを観ていた。
(なんと! 海鏡様もおられたか! た、助かった!!)
激しく落ち込んだ後、凄まじく喜んだ久遠に伴峰は言った。
「久遠、なにかあったか? 今ちょうど天界から通信が入ってなぁ白爺と話してたとこだぜ」
(なんと! 都合のいいことに八龍神の最長老の巌鉄様と交信中だとは!!)
喜びも最高潮に伴峰そっちのけで通信モニターに事の次第を告げていくのであった。
「なにぃ!? バルザークだとぉ? あのヤロー、どの面提げてまたこの国に来やがった! ぶっ殺してやんぜ」
どうしたことか、伴峰はバルザークの名を聞くやいなや激怒し、今にでも飛び出しそうな勢いであった。
それはただ単純に気性が激しいだけではない、何事かバルザークとは因縁があるとしか思えなかったが。
バルザークに敗北し、頼りの綱たる真羅八龍神を頼った久遠。
そこで当番である伴峰の激昂。
アシガルパーティーが向かう地はそんな波乱に満ちた最も危険で過酷な大陸なのであった。
「おっ! 見えてきましたよぉ」
「どれどれ!? おぉ、火山が噴火! まさしく竜の住処って感じぃ」
「えぇー!? もうやだよぉ……」
「まぁそう言わず。久しぶりの四人水入らずの旅を楽しみましょうよ、美菓子!」
「こらこら我を忘れとるぞ! 氷雨の嬢ちゃん」
「あらやだ私ったら……口なしさん抜きでは冒険もままならないわよね♡」
「そうじゃとも! ガハハハハ」
「コラー! 氷雨さんとイチャイチャすんじゃない」
ポカッ
「やかましい! 小僧」
「いったいなぁ! 何すんだよ糞じじぃ」
何も知らぬアシガルパーティーの上陸風景であった。
つづく
 




