純の記憶
何処かじめったい空気に包まれた
山に囲まれただだっ広い草原
廃墟のように佇む煙突が
世界を鮮やかにした
鈍色の網に絡まり
巣立ち間もない雀が墜ちた
この景色は幾多の
亡骸の上にそびえ立っている
赤色の雨が降って
藍色の空を平らげた
その時気づいた
果てから近づく水色の傘に
黒に染まった石塔
溜め息をついて
周囲を一旦灰で塗り潰した
彩度の落ちない傘は
僕の横に止まって
その顔を上げた
「久しぶりだね」
たおやかな少女の顔
そのまま少女は消えた
朱に染まる
白い菊を遺して
それから幾度の月を見た
相変わらず蒸すような匂いだった
泣き止んだ蝉が
草のベッドに飛び込んだ
少女は来なかった
赤い菊は今も残っていた
それは熱帯魚のように
今も鮮やかなままだった
今日も彼女は来なかった
瞬きの時は開くのを待ち
夜が随分長くなっても
流れる星に願いを込めても
沸き立つ雲が僕の顔を隠した
いつかの空を見た
肌に纏わり付く空気
降り始める白い雨
その時気づいた
果てから近づく黒い傘に
白を願った永劫
叶わぬ願いも
吐き出す白煙に苛まれた
記憶の誰かがそっと
僕の両頬に手を添え
口づけをした
「やっとこれたよ」
傘を差し出す少女が
僕の横で微笑んだ
手に持った赤い菊は
白い雨と染まって
真実を照らし出していた
「あなたと交わした契りを
叶わなかった祈りを
やっと伝えられるなら」
純白に身を包んだ彼女は
白に染まった花を
純白に染まった僕は
赤に染まった花を
互いに送りあって
その時全てを悟った
花が紡ぐ言の葉を
光と語った六月を
変わらなかった想いを
世界全てを包んだ白は
自分を、彼女を
運んで―――――
何か書きました。
初めまして。私です。
何で六月って何もないんですかね?
とまあ、六月に喧嘩を売るのは止します。
こんなのを書いたのは理由がありまして。
まあ、言いませんが。
誰かに影響受けたなんてことではありませんよ?
最後に、本文をお読みいただいた皆様、誠にありがとうございます。
ではでは。