12.モノローグ2
12.モノローグ2
生暖かい風が沼地に吹きつける。
沼の周りには大勢の人が集まっていた。
ほとんどのこの村に住むものが、ここに来た。そして、近隣からも、多くの人が集まった。中には遠く離れた場所からやって来たものもいる。
皆の視線の先は、沼の中央に浮かんでいる大きな桶だった。そして桶の中には、一人の少女が佇んでいた。
純白の絹のドレスをまとい、眩しく輝く宝石を身につけている。その服や宝石を見ただけでも、少女が高貴な家柄の者だとわかる。
少女は幼かった。おそらく、小学校に入学するかしないかの年齢だろう。
普通、若い子供は元気いっぱいのはずだが、なぜか少女は虚ろな表情だった。まるで、これから始まる絶望的な出来事を理解しているかのように、目の焦点が定まっていなかった。
遠くを見ているようでもあり、何も見ていないようでもあった。少女の心は、既にここにはなかった。
沼のほとりに設けた儀式の場で、太鼓や銅鑼が打ち鳴らされた。太鼓や銅鑼の音が水面を伝わってゆく。沼の中央にも水中にも、その音は届いた。
すると、沼の中央の水面が、突然盛り上がった。
やがて、集まった人たちは、少女の冥福を祈るように、両手を組んで祈り始めた。
しばらくして、滞りなく、儀式は終了した。
水面に浮かぶ桶には、もう少女の姿はなかった。
集まった人々は三々五々と、沼の周りから姿を消した。
儀式の式場もかたづけられた。
だが、祭司官アブドラは、深く溜め息をついた。そして、少女の冥福を祈るかのように、沼の中央に向かい、再び両手を合わせて祈り始めた。
しばらくすると、東南の風が吹き始め、雨雲がやって来た。そして、この国では珍しい雨が降り始めた。
スラノバ歴296年11月の出来事だった。
この情景が何を意味するのか…
それは次回、明らかになります。
次は、いよいよマリアの過去がすべて明かされます。




