9.マリアの悲しみ
9.マリアの悲しみ
白井玲子のスラノバ国での演奏は、週三日のリサイタルを三週間予定している。
人口四十万人の小さな国にもかかわらず、通常の演奏期間より長かった。
このことだけでも、今回のリサイタル依頼の裏には、別の目的があるように思えてならない。しかも、今回のピアノ演奏の本当の依頼者が誰なのかを、サイルは教えてくれない。
『今回の演奏は、王室が代理で依頼しています』
これがサイルの答えだった。
玲子は、その謎を解き明かしたかった。
おそらく、それがわかれば、マリアの過去も明らかになる。
今日はリサイタルの準備だけだったので、玲子は早めにホテルへ戻ってきた。この後、近藤と一緒に夕食をする予定になっている。
午後六時になり、ホテルに近藤とムハマドがやって来た。
サイルは、ムハマドの姿を見ると驚いた。
「ムハマド、久しぶりですね」
サイルは、古い友達に会ったような顔で、ムハマドの肩をトンと叩いた。
「お、サイル、元気にしていたか?」
ムハマドも、サイルの姿を見て笑顔になった。
二人は親しい間柄のようだ。ムハマドとサイルの関係に、玲子は興味をもった。
「サイルさんは、ムハマドさんとお知り合いですか?」
「ムハマドは、私と同じ王国軍にいたのですよ」
サイルは懐かしそうに、昔、王国軍で撮影した写真を見せてくれた。写真には、サイルと一緒にムハマドが写っていた。
「へー。サイルさんも王国軍にいたことがあるのね」
マリアは大きな瞳をクルクルさせ、信じられない表情をしている。
「私は、見ての通り貧弱だから、王室秘書に変更になりましたよ」
サイルはマリアの頭を撫でながら、恥ずかしそうにこたえた。
そのときムハマドは、一瞬、吹き出しそうな笑い顔をした。
「サイルさん。こちらの人は、私の高校のときの友達の近藤君です」
玲子が近藤を紹介すると、
「玲子さん。この国の人は、誰でもドクター近藤のことを知っていますよ。彼には多くの国民がお世話になっています」と説明し、
「はじめまして。私は王室秘書のサイルです。玲子さんのピアノ・リサイタルのサポートをしています」
サイルが敬意をこめて挨拶した。
「はじめまして、近藤です」
サイルが玲子にドクター近藤の人気を説明したため、近藤は照れていた。頬に少し赤みがかっている。
「玲子さん、今日は近藤さんたちと夕食でしたね。それでは、みなさん楽しんでください」
そう言うとサイルは、王宮へ戻って行った。
その後、玲子、マリア、近藤、ムハマドの四人で中立地区のレストランに向かった。
訪れたレストランは、落ち着いた雰囲気の店だった。食事の価格もリーズナブルなので、この時間は多くの客が店の外で並んでいた。
「混んでいるみたいね。結構待つのかしら」
「大丈夫だよ。昨日のうちに予約しておいたから」
近藤の予約により、玲子たちは待つことなく店に入り、テーブルに着席した。食事のオーダーも既に予約済だったため、すぐに料理が運ばれてきた。
料理は野菜や豆をメインとした前菜から始まり、ブルガー小麦とラムのひき肉を混ぜて油で揚げた料理や、チキンのシチューなどが出てきた。いずれもスラノバ国独特の味付けがなされている。香辛料の香りが食欲を掻き立てた。
「ムハマドさんは、いつも近藤君と一緒なのね」
「ムハマドは、僕の護衛をするといい、いつも近くにいる」
「へー。近藤さんは、まるで重要人物みたい!」
マリアが驚いた。
「ドクター近藤は、今ではアフマド国王や革命軍司令官ヒアムと同じほど、この国で人気がある。特に貧民層からの人気が高い」
ムハマドは、近藤の人気を誇らしげに説明した。
「すごーい。近藤君。こんなすごい人と一緒のクラスで勉強したのは自慢になるわ。嬉しい!」
玲子が目を輝かせると、すかさず近藤が、
「白井だって、認知症の人をピアノで回復させただろう?」と、尋ねた。
「えっ。なぜ知っているの?」
「この国にもニュースが伝わったよ」
近藤は、当時の新聞記事を読んで驚いたことを伝えた。
「近藤君、そのときの新聞記事を今も持っている?」
「病院にあると思うけど…、どうして?」
「新聞記事の写真に、マリアの顔が写っていたかどうか知りたいの」
「ああ、あのとき一緒に歌っていた女の子は、マリアちゃんだったね」
近藤は、マリアの顔を見ながら納得したような表情をしている。
近藤の説明で、玲子は確信した。
(誰かがマリアを探している。そのために私たちはスラノバ国に呼ばれたのだわ)
玲子は、マリアを探している人物を知りたかった。
「ところで、近藤君。お願いがあるのだけど…」
「どうしたの?」
「実は、リサイタルに来る人を誰かに調査してほしいの」
「王室秘書のサイルさんじゃダメなの?」
「ごめんね。サイルさんには、この相談はできないのよ」
玲子は、マリアに過去の記憶がないことや、今までのいきさつを近藤に説明した。
近藤は静かに玲子の説明を聞いていたが、全てを理解すると、
「わかった。それではムハマド、すまないが白井のリサイタルに毎回一緒に行き、何回もリサイタルに来る人を調査してほしい。おそらく、その人がマリアちゃんの過去に関係がある人だろう」
と、ムハマドに調査を頼んだ。
だが、ムハマドは、うかない表情をしている。
「ドクター近藤、私が調査している間は、誰があなたの護衛をするのですか?」
「ハマーに護衛してもらうから大丈夫」
近藤は、ムハマドが自分の安全を常に気づかっていることを知っていた。だからムハマドを安心させるよう心を配った。
「ムハマドさん、お願いします」
玲子とマリアが両手を合わせ、拝むように頼んだ。二人の声がシンクロしていた。
男には強いムハマドだが、女性には弱かった。
「女性二人から頼まれたら断れないな…」
そういってムハマドは、玲子の頼みを引きうけた。
「ありがとう。ムハマドさん」
思わずマリアが、ムハマドのたくましい腕に抱きついた。
マリアのあどけないしぐさに。ムハマドは照れた。
次の日からムハマドは、玲子のリサイタルに毎回一緒に行くことになった。
リサイタルを行う音楽ホールは、五百人を収容できる。それほど広くはない。だが、音響効果や照明、防音装置など、会場の設備は、しっかりしていた。
玲子がサイルにその理由を尋ねると、
「王室では音楽活動を奨励しています。だから音楽ホールを充実させているのです」
サイルの説明には、濁りが無かった。
おそらくサイルの説明に嘘はないだろう。だが、なぜ内戦中の王国が、このような立派な音楽ホールをつくるのか。玲子には疑問だった。
リサイタルも三日目となり、ムハマドは毎回訪れる人物に気づいた。
必ず王室の車がリサイタル会場に来る。中から現れるのはアマル王妃だった。王妃は、必ず最前列で演奏を聴いていた。
かつてムハマドが王国軍にいたころ、アマル王妃が毎朝ピアノを演奏していたことを、ムハマドは思い出した。
(あの頃は毎朝七時頃から八時にかけて、王宮からアマル王妃のピアノの音色が聞こえてきた。俺たちは、あの演奏に励まされたな…)
ムハマドは、昔を懐かしく思った。
(アマル王妃は、今でもピアノが大好きなのだろう)
ムハマドはそう思っていた。
しかし、腑に落ちない点があった。アマル王妃の視線の先である。
アマル王妃は最前列の席にもかかわらず、玲子のピアノ演奏を見ていなかった。
(いったいどこを見ているのか?)
ムハマドは、アマル王妃の見ている方向を確認した。
アマル王妃の視線の先には、ステージ横で玲子のアシスタントをするマリアの姿があった。
最初は偶然かと思った。だが、三日目となると、偶然とは思えない。
マリアの姿が見えなくなると、アマル王妃はそわそわした様子に見える。そして、マリアが見えると、アマル王妃は思わず頬笑んでいるようにも見える。
(なぜマリアを見ているのか?)
ムハマドには、アマル王妃がマリアを見ている理由が分からなかった。
ふと、ムハマドは、三日前に玲子から教えてもらったマリアの過去を思い出した。
(そういえば、マリアは六歳以前の記憶が無いといっていた。いまから八年前だ)
「八年前…」
ムハマドは、突然、閃いたものがあった。
「まさか…」
ムハマドは、急いで控室に駆け込んだ。そして、控室にいた王室秘書のサイルに声をかけた。
「サイル、ちょっと話がある。付き合ってくれ」
強引にサイルを誰もいない場所に呼び出し、サイルに尋ねた。
「マリアは…、あのお方なのか?」
「……」
サイルは無言だ。何も答えない。
沈黙が続いた。
だが、サイルの沈黙で、ムハマドは確信した。
「そうか、わかった。マリアの過去が、ようやく分かった」
ムハマドは、まるで自分自身に言い聞かせるような話し方だった。
「生きていた…。よかった…」
思わず目を閉じ、ムハマドは、両手を組んで天を仰いだ。
「ムハマド。そのことを誰かに話すのか?」
「話すとしたら…、サイル、お前はどうする?」
「……」
再び、沈黙があった。
やがて、サイルが重い口を開き、
「すまないが、ムハマドには死んでもらうしかない」
と、残念そうに告げた。
「そうか…。そうだな…。王国の危機につながるからな…」
そうつぶやきながら、ムハマドは、サイルの両肩をつかみ、
「安心しろ。誰にも話さない。もちろん玲子にもドクター近藤にも話さない」
と、サイルを安心させた。
「問題は玲子とドクター近藤に、どう説明するかだ…。生半可な嘘だとすぐにばれてしまう…」
それからムハマドは、サイルと今後に関して話し合った。
その日の夜、玲子のもとに王宮への招待状が届いた。
「玲子さんのピアノ演奏に感動されたアマル王妃が、国王、王妃、王女の三人とともに夕食をされることを望まれています。もちろんマリアちゃんも同伴で構いません」
サイルが玲子に説明した。
国王陛下と夕食を共にするのは、スラノバ国では大変光栄なことだった。
「ありがとうございます。光栄です。でも、マリアも同伴で本当に構わないのでしょうか?」
「もちろん大丈夫です。アフマド国王は、仁徳のある方です」
とサイルが答え、さらに、
「玲子さんとマリアちゃんが姉妹のように仲が良いことは、国王陛下は既にご存知です。だから、気になさらなくともいいですよ」
と、玲子を安心させた。
次の日、西の空が紅く染まる時間に、玲子とマリアは、サイルの車に乗り、王宮へ向かった。
王宮は格調ある建物だった。玲子は初めて見る王宮内部にある装飾品の数々に驚いた。まるで博物館と美術館を合わせた建物の中を歩いているようだ。いつの間にか、歩みが遅くなってしまった。
しかし、マリアはそれほど驚いていない。
(マリアが装飾品の数々に驚かないのは、昔住んでいたリヒテンタール教会にも多くの装飾品があったからだろう)
玲子は、そう思っていた。
やがて広間にて、玲子たちはアフマド国王、アマル王妃、モナ王女と対面した。
アフマド国王の第一印象は、『温和』だった。『どこにでもいる優しいおじさん』といった感じである。不思議と、国王としての威圧感は感じられない。それに対してアマル王妃の第一印象は、『綺麗』だった。アマル王妃より美しい女性を、玲子はスラノバ国では見たことが無い。『美の女神』と称賛するのに最もふさわしい女性だった。そして王妃の目は、優しさに満ちていた。
このような優しい国王と王妃がいる国で内戦が起きているとは、玲子には信じられない。おそらく、玲子の知りえない理由で内戦がおこっているのだろう。
そして、最も印象的なのは、モナ王女だった。どう見ても場違いな衣装をまとっている。玲子は、違和感をもった。
モナ王女は、頭部を隠す『ニカーブ』と全身を覆う『アバヤ』を身に着けている。これでは顔があまり見えない。しかも、これから一緒に夕食をとるのに、食べづらい。
(なぜ、室内なのに、この衣装を着ているのだろうか? しかも、私もマリアも女性なのに、顔を隠す理由は無いはずだが…)
玲子は疑問に思った。だがその驚きを顔に見せることなく、挨拶を開始した。
「初めまして、白井玲子と申します。本日は王宮にご招待していただき、ありがとうございます。こちらが私の妹マリアです」
マリアも丁寧に挨拶をした。
するとアフマド国王は、
「玲子さん、マリアさん。そのような堅苦しい挨拶は抜きにしよう。今日は遠慮せず、大いに食べて飲んで楽しんでほしい」
優しい笑顔で語るアフマド国王は、玲子とマリアをくつろがせた。
(噂どおりに仁徳があり、気さくな王様だわ)
玲子は感心した。
するとモナ王女が玲子に向かって、
「顔を隠すようでごめんなさい。実は頬にできものができていて、恥ずかしいので頬を隠すようにしたの。私、玲子さんとお話しするのを、すごく楽しみにしていたのよ」
と、愛らしい声でいった。モナ王女の重厚な服装に似合わない、明るく活発そうな話し方だった。
そのギャップに、玲子は戸惑った。
やがて、料理が運ばれてきた。ラクダ一頭を丸ごと焼いた料理や、玲子が見たことが無い巨大な魚の姿煮など、とても豪華な料理だった。
食事をしながら国王や王妃や王女は、玲子にいろいろと質問した。玲子がひとつひとつ答えると、答えの内容に驚いた顔をしていた。
また、国王家族は、マリアにもいろいろと質問をした。マリアが質問に答えると、皆が笑顔でうなずいていた。
玲子への質問の数と、マリアへの質問の数は、ほぼ同じだった。
(本当に国王や王妃は気さくな人だ。マリアにまで気を遣い、質問されている)
玲子は、国王家族の思いやりに感謝した。
夕食会は、和やかに進んだ。
事前に玲子は、アマル王妃の趣味を調査していた。そしてアマル王妃の趣味がピアノ演奏だったので、つい質問した。
「ところで、王妃は以前、ピアノをよく演奏されていたとお聞きしましたが、ピアノはどこにあるのでしょうか?」
玲子の質問に対し、アマル王妃が困った様子で、
「ちょっと壊れたみたいなので、奥にしまっています」と、こたえた。
「いつ壊れたのでしょうか?」
「……」
その質問にアマル王妃は答えることができない。
国王や王妃、王女が無言になった。
「ずいぶん昔だったので、皆様は忘れられたみたいです」
サイルが思わず横から口を挟み、明るく答えた。
玲子は一瞬、ぎこちなさを感じた。
(何か不自然だわ。そういえば、やはりモナ王女の衣装もやはり不自然よ。頬にできものができているだけならば、あそこまで顔を隠す必要は無いはずなのに…。食事がしづらいに決まっている)
すると、モナ王女がマリアの顔を見ながら、
「私、手相を見るのが得意なの」と、いった。
手相を見て占うのであれば、モナ王女の服装は違和感が無い。玲子は、モナ王女の服装は占いが趣味のためだと納得した。
「マリアちゃん、掌をみせてちょうだい」
モナ王女が頼んだ。
マリアが掌をモナ王女の前に差し出すと、モナ王女は両手でマリアの手を触り、ゆっくりと手相を見始めた。いや、どちらかというと、マリアの手の感触を確かめているようにも見える。
「マリアちゃんは今、愛する人と一緒にいます。マリアちゃんを愛する人も一緒にいます」
モナ王女が手相を見ながら告げると、マリアも嬉しそうな顔をした。
「うん。そうよ。玲子姉さんと一緒だもの」
マリアが玲子の方に顔を向けたので、玲子も笑顔でうなずいた。
それ以降、モナ王女は、マリアと楽しそうに話し続けた。先ほどは玲子に会うのを楽しみにしていたと言っていたが、現金なものだ。今はマリアと話すのに夢中になっている。
玲子の視線に気づくと、モナ王女は無邪気に、
「だって、マリアちゃんと私は、ほぼ同じ年齢なので、親しみが湧くの」
と、嬉しそうにしている。
おそらく、王宮にはモナ王女と同年齢の子がいないため、友達と呼べる者がいなかったのだろう。
マリアも、モナ王女と楽しそうに話している。
驚いたことに、モナ王女は自分の携帯電話の番号を書いた紙をマリアに渡し、
「時間があれば遠慮せずに電話してね」
と、告げた。
玲子は、マリアにも友達が出来たことを喜んだ。
やがて、夕食も済み、玲子とマリアが帰る時間となった。
玲子たちが別れの挨拶をしようとすると、アマル王妃が突然マリアのそばに駆け寄り、
「マリアちゃん、可愛いから抱かせてちょうだい」
そう言うとマリアの返事も待たずに、アマル王妃は、いきなりマリアを抱きしめた。
わずか五秒ほどの出来事だった。その後、アマル王妃はマリアから離れた。
しかし、マリアは抱かれた瞬間、電流が全身を流れた気がした。この温もり。この香り。この声。マリアの遠い昔の記憶と同じだった。瞬時に、自分の母親がアマル王妃であることを悟った。
さらにマリアは、先ほどモナ王女が告げた占いの説明を思い出した。
『マリアちゃんは今、愛する人と一緒にいます。マリアちゃんを愛する人も一緒にいます』
(あの説明は玲子姉さんのことではなく、お父様、お母様、お姉様のことを意味していた。お父様、お母様、お姉様は、私を愛していると告げていた。あの言葉は、お姉様が私に最も伝えたかったメッセージだった)
マリアは確信した。
(だが、お姉様もお母様も、私のことを家族とは言葉に表していない…。なぜだろう?)
マリアは、その疑問の答えを必死に考えた。だが、何度考えてもわからない。記憶がまだ完全に戻っていないため、答えが導き出せないでいた。
そして、なんとなく一つの答えにたどり着いた。
(私の存在が明らかになると、みんなが不幸になる…)
マリアがたどり着いた答えは、まさにムハマドがサイルに告げた『王国の危機につながる…』と同じだった。
王宮から帰るとき、マリアは終始無言だった。
ホテルに着くやいなや、
「玲子姉さん。私、疲れたから、先に寝るね。おやすみなさい」
ベッドに入り、布団を頭まですっぽりかぶった。
マリアは、布団の中で涙を流していた。止めようがなく、涙があふれてくる。玲子に気づかれぬよう声を押し殺し、泣き続けた。
十四歳の少女が十八歳の玲子に気を遣い、声を出さずに泣く行為が、どのようなことを意味するのか。
少女は本来ならば玲子に抱きつき、声を上げて泣きたかった。自分が思い出した事実を全て話し、自分の気持ちを分かってもらいたかった。
だが、それができなかった。
両親と姉に出会えたのに、王室ではマリアの存在をみんなに公表できない。おそらく、みんなに知らせることができない複雑な事情があるのだろう。
マリアは、その事情を知らない。そして、両親と姉に会った事実すら、マリアは誰にも言えずにいた。
それは、十四歳の少女にとって、あまりにも不幸なことだった。
マリアの気持ちに感情移入できましたでしょうか?
次回は、物静かな玲子が近藤を救うために、命を懸けて、ある方法で戦います。




