第四章【浮力と有力】
「ああ、相模原。知っているかもしれないが片桐が来ていてね。柳田先生や関島先生もホッとしていたよ」
「あ、すみません、こちらから申し上げなくて。連絡が付いたので先生方が心配されていることを伝えておきました。来ているなら良かったです」
一週間の始まりである月曜日。その昼休み、食堂へと向かう俺は城井に呼び止められた。
今日はパンの気分だったので、四時限目終了を告げるチャイムが鳴り、英語教師が教室を出たすぐ後に俺もそこを脱出して食堂へ急いだわけで。そんな俺を呼び止めた城井に正直なところウンザリしたのだが、そういう話なら別だ。
「相模原は片桐と友人だったよな」
「はい」
「それなら……」
城井は何事か考えるように言葉を途切れさせたが、すぐに思い切ったように続きを告げた。
「個人のことを他に言うのは良くないと思うんだが、場合が場合なんでな」
そう、前置きをしてから。
「実はな、片桐の単位数なんだが。この間に一学年主任の先生と話したところ、二教科ほどギリギリなものがある。まあ、あと約二ヵ月のことだから大丈夫かとは思うが」
しかし城井は、そこで黙り込む。
「これ以上、授業を休まれるとフォロー出来ないんだ。良かったら相模原からも言っておいてくれないか」
「分かりました、伝えます」
対教師用の言葉と顔で接しながら、俺は内心ひどく驚いていた。
その後、俺は当初の目的である食堂へと足を進めてはいたものの、先程のような勢いはすっかり失せて、パンがどうとかなどという思考は全く以て遮断されてしまった。だが、そんなことはどうでも良かった。先程の城井の言葉が鮮やかに目の前に蘇る。単位? 単位の心配をするのは大学生の仕事だと思っていた。しかも二教科?
よっぽど授業を欠席しない限り、単位が危なくなることは無いはずだ。六日間、学校を休んだから? いや、そんなことは無いだろう。そうしたらインフルエンザとかに罹ったらどうすれば良いのだ。城井の言葉では、単位が危うくなるほど授業に出なかったということだが……。
――その時、脳味噌を緩く覆うように滲み出て来た言葉があった。昨日、橘さんは言っていなかったか。単位を落としたらマズいだろう、と。
俺は、俺の頭の回転の悪さを悔いた。確かに昨日、気になったことの一つであったことに間違いは無かった。言い訳めいてしまうが、色々とあり過ぎて限り無く透過してしまっていたらしい。もしや、橘さんの話とはこのことではないだろうか。以前に片桐の家庭教師をしていたようだし、勉強面などへの関心は強そうな気がする。となれば、俺は橘さんに会って話を聞いてみたい。
そこまで考えた時、俺はようやく食堂へと辿り着いた。食堂は既に生徒で溢れ返っており、皆、テーブル席で定食やパンや弁当などを思い思いに食べている。それを横目に食堂の左奥にある小さなパン売り場に向かうと、そこにいる生徒は数人だった。ガラスケースの向こう側には、いかにも売れ残りました的なパンが数個、ぽつんと置かれているだけだった。期待していたハムチーズは無くなってしまっていた為、少ない選択肢の中から黒糖ベーグルとチョコチップメロンパンを選ぶ。惣菜パンは、ただの一つも残されていなかった。
それらを持ってテーブルの方へ戻ると、
「お、サガミ」
と、響野がしたり顔で俺を呼び、軽く片手を挙げて見せているのが目に入ってしまった。
俺は響野の向かいに無言で座る。するとテーブル上に置かれたツナサンドとコロッケパンが目に付いた。どうやら響野は人気のパンをゲット出来たらしい。
「あれ、お前って甘いの好きだっけ」
俺が無造作に置いた黒糖ベーグルとチョコチップメロンパンを見て、意外そうに響野が言う。
「嫌いではないけど。今回は不可抗力だ」
「ああ、売り切れてたんだ。それは残念でした」
絶対にそう思っていないだろうなという口調で響野は言った後、
「さっき、片桐さん見掛けた」
と、ツナサンドの封をペリペリと開けながら付け足した。
「食堂に一人で来てさ、一人で野菜サンド食べてた。ケイタイやりながら」
「またか」
思わず口から生まれた言葉。片桐は校内や学校の帰り道でケイタイを出すことを躊躇しないのだろうか。
「ちょっと喋ってみたかったんだけどさー。何か難しい顔してたからやめといた。あ、食うスピードがスゲエ早かった。そして凄くうまそうだった」
それを見ていたら自分が食べるの忘れててさ、と呑気そうに付け加えてツナサンドの一口目を響野は齧った。
「なあ、お前らって付き合ってないの?」
ツナサンドをスピーディーに食べつつ、響野が至極不思議そうに聞いて来た。
「誰が」
「サガミと片桐さん」
その質問には以前にも答えた気がするのだが。そう思いながら否定を口にすると、これまた至極意外そうに尋ねて来る。
「何で?」
何でって言われてもな。どう答えれば良いのか分からない。
既に昼休みが半分を過ぎていたので、俺も少し急ぎ気味に黒糖ベーグルを頬張る。もっとやたらと甘いのかと身構えていたが、思ったよりは控え目な甘さでホッとする。
「良く、帰り一緒に帰ってるし。片桐さんは教室前で待ってるし。携帯のアドレスだって互いに知っているし」
これで付き合っていない方が不思議だろ? と、いかにも俺は正しいお話をしています、といった感じで響野は言う。しかし俺は、そうか? と思うだけで特別そこに正当性は感じなかった。
一緒に帰る為に片方が教室前で待って、一緒に帰って、互いにメールアドレスを知っている。これがイコール、付き合っていることになるのなら、付き合うということが凄く簡単なことになってしまう気がする。
「何、言ってんだよ。簡単だよ。お互いが好きなら良いんだ」
二つのツナサンドを平らげ、コロッケパンに手を伸ばしながら響野が力強く主張する。
「大人になると面倒なんだからさ。今しか無いんだって」
訳知り顔で語るのは構わないが、お前は今、付き合っているのか? と、純粋な疑問を俺がぶつけてみると、
「付き合っていません」
という簡潔な返答が響野から打ち返されて来た。
「自分がちょっと良い感じになっているからって残酷な質問を放たなくても良いじゃないか」
本当に冷凍庫みたいな奴だな、と付け足されて。
「じゃあ聞くけど、お前は付き合う気無いのか? 片桐さんと」
ふと、俺は言葉に詰まった。別に恋愛に全く興味が無いわけでは無い。が、凄く興味があるわけでも無く。ただ片桐をそういう風に見たことは無く、そういう風と言うのは、つまり恋愛……。
「何、考え込んでるんだよ」
その言葉でハッとした。既にコロッケパンを食べ終えた響野は、それ食べないなら貰って良いか、と俺の買ったパンを指で差す。冗談じゃない。
だんだん人がまばらになってきた食堂で、俺はチョコチップメロンパンの封をガサリと開けた。甘い香りが、ふわりと漂う。それを食べている間、思考は先程の続きを無意識的に追い掛け始める。
片桐と付き合う。俺が? イマイチ、ピンと来ないのは何故だろう。というか、付き合うって何だ? 俺の思考回路は、そのレベルだ。
「それこそ簡単、単純明快だって。仮に片桐さんが俺と付き合うって言ったらどう?」
「……気の毒に思う」
「どっちが!?」
「片桐」
それはあんまりだ、言い過ぎだと響野が目の前でうるさく言うものだから、冗談だ、と俺は一言を付け加えておいた。一応。
「全く、サガミの発言は胃に悪いよ」
響野はそう言いつつ、揚げ物の挟まったロールパンを瞬く間に胃袋へと収めて行く。その勢いを削ぐこと無く完食した後、急に改まった口調で、真面目な話さ、と響野は切り出す。
「俺じゃなくても。誰かが片桐さんと付き合うっていう話を聞いたら、どう思う?」
「どう……と言われても」
「あ、その前に根本的問題があった。片桐さんって彼氏いるの? いないの?」
「さあ」
俺の返答に、大仰に溜め息を吐き出す響野。
「さあ、って。何なの、その興味の無さは。分かってんのか、彼氏がいる女の子とは付き合えないんだぞ、基本的に」
「そうだな」
「彼氏アリでもアタックするのはアリだけどな、最初に確認すべき事柄だろ、彼氏がいるかいないかは。あれだけ親しくしていて、そこを知らないとは」
ダメすぎる。そう呟き、
「あ、昼休み終わる。自販機行くけど?」
と、響野は立ち上がった。
「俺も何か買う」
チョコチップメロンパンは非常に甘いパンだった。喉の辺りに何かが張り付いているかのような感覚が残っている。緑茶などで、それを胃の奥へと流したい気分だ。響野の呟きと一緒にな。俺はそう思った。
「片桐さんと、そういう話しないの?」
響野は烏龍茶片手に尋ねて来る。まだ、そこに話を持って行くのか。正直、かなり辟易しながら俺は答えた。
「しない。なあ、この話題から離れないか」
「何で?」
「疲れるからだよ」
「そうか? 俺は面白い」
お前は面白くても俺は疲れるんだよ、と言おうとしたが、その前に緑茶を喉奥へと滑り込ませる。甘味の残響が残った喉では、なかなかに話しづらかった。
「じゃあ、片桐さんの他に好きな人が?」
俺が告げる前に、また響野が話し始めてしまった。失敗だ。
「いない」
「なら、何で片桐さんと付き合わないんだよ?」
「何で、お前は俺と片桐を付き合わせようとするんだよ」
「いや、そんなつもりはこれっぽっちも無いけどさ。俺からすると付き合っていないって方が不思議なんだよね」
サガミと片桐さん。そう言って響野は烏龍茶をゴクゴクと飲む。
「だってあんなに一緒に帰ったりしててさー。不思議すぎるんだよな、付き合っていません、ってのが。周り見てみろよ、一緒に帰ってる奴らなんかいないぜ? 男女で」
「まあ……それは俺も、うっすら思っていた」
「うっすら! え、それ、いつ気付いた?」
「最近」
「遅い! 普通、初日に気が付くだろ……!」
こっちが驚く勢いで響野が驚き、
「あー……サガミは、いわゆる鈍感ってやつかもなあ。付き合いの長い俺でも分からなかったが」
と、また非常に失礼な発言を飛ばしてくれた。
「鈍感、っていうのはあまりプラスポイントにはならないよなあ。いや、相手によっては成り得るのか……」
「おい、勝手に訳の分からない分析をするな」
「うん、まあ、頑張れ。俺は応援してるから」
「その同情っぽい言い方もやめろ」
――昼休み半ばから、教室に戻り音楽室に移動するまで、俺と響野の会話は続いた。そして昼休み終了を告げるチャイムが鳴り、音楽室に入る直前、まるで励ますかのように響野が俺の背中を軽く叩いた。何処まで失礼な奴なんだ、コイツは。俺はそう思いながらも、響野の話は何となく脳内に記憶されてしまったらしい。五時限目の音楽は、その話と授業の間を行ったり来たりしている脳味噌で俺は受けることになった。
「あ、相模原君」
約束通り、教室の扉を開けたいつものところに立っていた片桐。今回は携帯電話の姿が見えず、ホッとした。加えて、登校していることにホッとした。
「帰るよね?」
「ああ」
他のクラスもホームルームが終わっているらしく、廊下には大勢の生徒が喧騒と共に溢れ出していた。その隙間を縫って廊下を歩きながら、俺は何となく辺りを軽く見回してみる。確かに、男女で連れ立って帰ろうとしている奴らはいない。
「どうかした?」
「ああ、いや。何でも無い」
響野が余計なことを言うから余計なことを考えてしまった。
「じゃあ、下で待ってるね」
そう言い、片桐は一段飛ばしに階段を跳ねるように降りて行く。
俺は革靴を履いたところで靴箱を背にし、素早く携帯を取り出した。半分だけ開き、そのまま短いメールを書く。
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To:橘芳久
Sub:夕食など
Text:先日にお邪魔した相模原です。その節はありがとうございました。お誘い頂いた件、今週で空いている時間がありましたらご連絡下さい。
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送信しました、の文字を確認して俺はすぐに携帯を畳み、鞄に滑り込ませるようにして戻す。
あれだけ片桐に注意しておいて自分はどうなんだ、という問い掛けが生まれてしまったが、片桐のように堂々と実行しないだけ良いだろう。という勝手な言い訳を盾にして、俺は自身でその問いを跳ね返した。
「やっほー」
今までに何度も見て来た三百ワットの笑顔で片桐が手を挙げて見せる。そこには暗さなど微塵も感じられない。
「今日は帰りに数学の小さなテストがあったんだ。終わった人から帰って良いって」
「どうだった?」
「全然、分からなかった」
「えっ」
ちょっとした衝撃を受けた俺を見て、慌てた様子でブンブンと片手を振った片桐。
「あ、大丈夫。出来たことは出来たんだ。ただ、あれって問題集から出題されるから、どれが出るか分かってるんだよね、事前に。それを暗記して書いただけ。だから内容は全然理解出来ていないけど出来たってこと」
ね、大丈夫。言って笑う片桐の表情には一点の曇りも無い。そこは少しばかりでも翳りがほしかったところでは無いだろうか?
「それは出来たって言わないんじゃないのか?」
「厳密に言うとそうなるかも」
俺の素朴な疑問に、さっと回答をして来た片桐。先程までとは違い、今度はその明朗さに不安を覚える。
「片桐って、数学苦手?」
「苦手だし嫌い」
「得意科目は?」
「現代社会」
「……だけ?」
「だけ」
大丈夫か? という率直な言葉が俺の脳裏に閃く。
「あ、暗記は得意なんだ。だから、ただ覚えるみたいなのは簡単。英単語テストとか、今日みたいな数学テストは楽勝です。現代社会も覚えれば良いことばっかりだし」
それだと、応用が利かないだろうな、と俺は思う。そういえば今まであまり気にしたことが無かったが、片桐の成績はどんな感じなのだろう。
ふと、単位、という言葉が目の前にチラつき、片桐の姿と重なる。単位を落としたら当たり前だが進級出来ない。成績以前の話だ。
「ん、何か気になることでも?」
軽く首を傾げて片桐が尋ねて来たが、単位大丈夫なのか? とストレートには聞きづらい。
「いや、片桐の成績ってどうなのかなと思って」
「成績かー。良い方には入らないと思う、多分。ギリギリ崖っぷち的かも」
ギリギリ崖っぷち。そのフレーズが俺の脳味噌にサクリと刺さった。
「ギリギリって……喩えば?」
「喩えば物理。担任の先生が生物はやめろって言うから物理にしたんだけど、全然分からない。電子についてとかの辺りはまだ良かったんだけど、化学反応式が元素がとかになったらサッパリ。一年最初の中間試験は四十五点だった」
ピキリ。瞬間、俺は自分の体が凍ったかと錯覚した。本気で。四十五点……?
しかも更に畳み掛けるように、
「勉強しなかったのがいけなかったかと思って、次の期末では勉強したんだけど。四十九点だった」
と、これまた衝撃的数字を片桐は言い放つ。
「あんなに勉強しても四点分にしかならないと思ったらウンザリしてやめちゃった」
アハハ、と、真夏の太陽と爽やかな風を思わせる笑い声を向けられたが、とても俺は笑えなかった。
いつものように公共のバス停を通り過ぎ、しばらくは真っ直ぐに伸び行く道を歩く。その間、俺達は主に学校の勉強についての話をしていた。
詳しく聞いていく内に分かって来たのは、おそらく片桐は文系だということ。得意科目は現代社会だけと言ってはいたものの、試験の点数とか普段の授業についてとかを尋ねてみたところ、現代文や古文、英語全般も割と良好だ。ライティングの担当教師が例の柳田なので成績は良くないのではと想像してしまっていたが、予想に反してそんなことは無かった。
それについて尋ねてみると、
「だって何か悔しいから」
という簡潔な返事が返って来た。
――二年生に進級する時、理系か文系かを選択することが出来る。仮に大学進学を考えているなら、それを視野に入れてクラス選択をすべきである。と、一年の時に俺は城井に言われた。しかし、当時まだ大学に進むかどうか決めていなかった俺は、何となくの好みで理系を選択した。もし大学へ行くにしても理系科目で受験をするだろうと思ったし、好きでは無い方をわざわざ選ぶ必要も無いだろうと思ったからである。
「片桐は決めてるのか?」
「良く分からないんだよね。理系も文系も、どっちも苦手な気がするし」
「さっき話を聞いた感じだと文系が合っているような気がするけど」
「そうー? 確かに国語系は嫌いじゃないけど」
前方に見えた小石をコーンと軽やかに蹴飛ばし、
「じゃあ文系にしようかな」
と、片桐は言った。
「勉強はねー、嫌いってわけじゃないんだけれどね。何か、飽きる」
また別の小石をコンと蹴飛ばし、
「飽きない?」
と同意を求めて来た片桐。
「長時間やってると飽きるけど」
「私は二十分くらいで飽きるよ」
「早いな」
「私も、ちょっとそう思う。でも勉強メンドい」
ダメだよねー、と明るく笑う片桐の様子は、俺の懸念を煽るには充分すぎるほどだった。
――やはり、単位数のことが非常に気になってしまう。片桐から話を聞いたら余計に不安が膨らんで行くのを、俺はひしひしと感じてしまった。
しかし、どうにも直球的な尋ね方は選び難かったので遠回しに質問をしてみたのだが、それがどうやらお気に召さなかったらしく、少しふてくされたような感じで返答が為された。そしてそれは、覚えのある引っ掛かりというか違和感というか……そういうものを与えて来たのだった。
「芳久みたいなこと言うんだね」
文系しろ理系にしろ、これからどうしたいかって考えてる? というのが俺の質問だ。それに対する片桐の回答は、あんまり考えて無いけど、というもので。そして、ポンと付け加えられた言葉がポンと俺に小さな棘のようなものを投げて来た。これは一体、何だろうか。
「だってまだ高一だし、そんなに真剣に考えなくても良くない?」
「いや、もうすぐに二年になるわけだし、クラス分けもあるしさ。考えるのに早いってことは無いと思うんだけど……」
と、俺が言葉を濁したのは、片桐の頬がプッと膨らんだことに目を奪われたからである。すぐに頬は元通りになったが。俺はハムスターの頬袋を連想してしまった。ヒマワリの種が何個入るだろうか。
「じゃあ相模原君は、ちゃんと考えてるの?」
本気で怒ってはいないのだろうが、やはりふてくされた様子でぶつけるように言葉を発して来る片桐のその顔は、むー、というオノマトペが似合いそうで少し笑ってしまった。
「何で笑うのー」
「いや、つい」
つい、って。と、更に片桐の不機嫌度が高まってしまったらしいので、俺は少し慌てて言葉を追加した。
「いや、でもさ。どうせ考えることになるんだし、今からある程度、決めておいた方が楽だと思うけどな」
「そうかなー」
ちょっと機嫌の悪さが緩和されたような声で言い、考え込むように片桐は前方を見つめていた。その先には、いつもと変わらぬ姿を見せる駅がいつもの通りに存在していた。
一月下旬、まだ寒さの広がる空気の中で。上空を覆う灰色が薄暗く、それがまるで俺達学生の将来に広がっているように思えた。なんて詩人めいたことを思っても、何も始まりはしないのだが。
バイバーイ! と、元気に右手を振って電車に乗って行った片桐。それに軽く手を振り返し、すぐ後に来た反対側の電車に俺は乗り込む。すると、鞄の中で携帯電話が震えた。
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From:橘芳久
Sub:夕食
Text:急だけど、今日これからはどうかな?
今、高校の近くに来てるんだけど。
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さっそく返信が来たことと、近くに来ているということに俺は些か驚いた。驚きつつも了解の返事を送ると、間を空けずに再び携帯が震えた。
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From:橘芳久
Sub:Re:大丈夫です
Text:駅前で待ってます。
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パチンと携帯を閉じ、俺は次の駅で降りて反対車線の電車に乗り換えた。何故だろう、俺は何処か緊張していた。
――電車はすぐに元いた駅へと俺を運び、そして去って行った。先程よりも緊張の糸が強く張られた心情で階段を下り、上る。コンビニの入り口の右、壁に寄り掛かるようにして橘さんが立っていた。
「あ、こんにちは」
俺に気が付いたらしく、至って気さくに声を掛けて来た橘さん。緊張など、ましてや警戒などする必要は何処にも無いのだと教えてくれているような気すらした。しかし俺自身、良く分からないのだ。この張り詰めたものの正体が何なのかが。
「急で悪いね」
「いえ」
「本当は近所のレストランとか考えてたんだけど、こっちまで来たからさ。相模原君、いるかなーと思って」
そこの喫茶店で良いかな? と、駅の隣のドラッグストア、その更に隣にある喫茶店を示した橘さんに返事をすると、じゃあ行こうか、と先に立って橘さんは歩き出した。
喫茶店までのその短い距離の中、
「相模原君は綾が好き?」
と、心臓が驚愕する問いを、まるで何でも無いことのように橘さんは自然に言って来た。
「え」
それに対して俺は、たった一音しか俺は発することが出来なかった。
「懐かしいなー。シナモンロールとメロンパンで迷うんだよなあ」
店の奥、静かな窓際の席に着いてメニューを広げ、開口一番、橘さんは言った。
「ああ、良く学校帰りに来てたんだ」
不思議そうな俺の視線に気が付いたのか、尋ねられる前に橘さんはメニューから顔を上げて告げる。
「相模原君や綾と同じ高校だったんだ、俺」
「あ、そうなんですか」
「そうそう。時々、ここでパン食べたりコーヒー飲んだりしたんだ。本当に懐かしいなー」
と、感慨深そうに言った後、橘さんはメニューをこちらへ向けて手渡してくれた。
――それぞれに注文をすると、注文を繰り返してウェイトレスが足早に去って行く。そうなると、静かで落ち着ける喫茶店独特の雰囲気が顕著になり、窓の外に見える外界とは遮断されたような気分に陥る。聴き覚えのあるクラシックが流れていた。
俺は何となく水を飲み、そっとグラスを戻すと、それを合図にしたかのように橘さんが口を開いた。
「さっきの質問だけど。どう?」
「どう……というのは」
「回答は何かなーと思ってさ」
にこにこ。という文字を背負っているかのように、橘さんは悪意の感じられない笑顔でそこにいた。
「ええと……」
ええと、に繋がる言葉が俺は思い浮かばなかった。本当に言葉が浮かばない。思考する為に動かすポインタのようなものが存在するとしたら、今まさにそれは脳内で同じ箇所をぐるぐると小さくなぞっているに過ぎなかった。
「いや、そんな難しい話じゃないんだけどさ。綾が家に誰かを呼んで良いか聞くのって初めてだったから。仲が良くなかったら呼んだりしないだろうし、もしかして付き合ってるのかなーと思ったんだよね。でも違うって言うからさ、じゃあ相模原君は綾をどう思っているのかなと」
そういう経緯での質問です、と橘さんは付け足して。
「俺は橘さんが片桐の彼氏かと思ったんですけど」
「違う違う」
ふと口をついて出た俺の疑問は即座に否定された。が、
「前に付き合っていたけどね」
と、サラリと足された発言があった。
店内の穏やかな雰囲気の中、いつも通りの心持ちを少し取り戻し掛けていた俺は、再びそれが緊張の糸にくるまれてしまうのを感じていた。
カラン、と飴色のグラスに入った氷が溶ける音が響く。
「そう……なんですか」
その音に導かれるようにして俺が言った言葉は、それだけだった。他に何と言うべきか分からなかったとも言える。
「そうそう」
まるで俺とは正反対の様子、ポンポンと軽く弾む感じで、さっきのように橘さんが答える。
「気は合うんだけどねー」
その後に何か続くのかと思っていたが、それ以上に言葉を橘さんが紡ぐことは無く。
橘さんが一口、水を飲む。俺も飲む。すると先程のウェイトレスが、お待たせ致しました、と二人分のコーヒーとパンを置いて行った。
サクサクと、橘さんはシナモンロールにナイフとフォークを入れて行く。俺は自分の目の前のミートパイに一度視線を落とした後、その様子を何となく見ていた。そして、片桐を思い出した。ああ、片桐もナイフとフォークを綺麗に使っていたな、と。
「ん?」
俺の視線に気付いたのか、橘さんが顔を上げた。
「あ、いえ何でも」
俺はミートパイに意識を戻し、それを一口大に切って口に運ぶ。出来立てだったのか、ほわりとした熱さと共に、ジュワリとした挽き肉とトマトと玉葱の味が口一杯に広がった。
俺達はしばらくの間、互いに黙々と自分のパンを食べていた。俺は三口目を食べたところで温かいエスプレッソを飲んだ。深く穏やかな香りがした。ただ、片桐から貰ったコーヒー豆で淹れた、エスプレッソの方がうまい気がした。何となくだけれど。
「どうして綾と付き合っているかとか好きかとか尋ねたかっていうと、もしもそうだったら安心出来るなと思ってさ」
唐突に何の前振りも無く橘さんがそう言ったので、一瞬、コーヒーの香りもパイのおいしさも吹っ飛んでしまったかのような錯覚に陥った。
「えーと……それは、どういう」
「綾とはどれくらい親しいの?」
質問を質問で返され、少しばかり戸惑いつつも、
「一緒に帰ったり、メールしたり出掛けたりです」
と、俺は答えた。
「それなら気付いていると思うけど、綾は凄く一生懸命に生きていると思わない?」
「思います」
即答した。本当にその通りだと思った。片桐といえば懸命、というくらいに、俺の中では既にイメージが形を取りつつあったのだ。
――結論から言おう、俺と橘さんの会話は非常に滑らかに進み、弾んだ。話題は、もっぱら片桐のこと。少し前までの緊張や警戒心は何処へやら、俺は非常にその時間を楽しんだ。
橘さんは少し前まで片桐と付き合っていた。期間は一年に満たない。先日に俺が訪れた家は橘さんの家で、時々、片桐が遊びに来たり泊まったりする。片桐が泊まるのは学校を休んだ時が多い。片桐は高校一年の一学期半ばぐらいから遅刻、欠席、早退が多くなり、ゆえに単位数が危ういところまで来てしまったということ。
そう、これらを俺は橘さんから楽しい会話の後に聞かされたので困惑はした。困惑。それは、どれについてだろう。遅刻欠席早退の多さ? 単位数? それとも――。
「綾が付き合っているのが相模原君なら安心だったんだけどな」
橘さんのその言葉に嘘は無いように感じた。
知り合ったばかり、話した時間は四十分くらいだろうか。それでも、滲み出ている誠実さのようなものを俺は橘さんから感じ取っていた。
「明るく笑っている時が多いし、楽しそうに話している時が多い。そのほとんどは本心からのものだと思うんだけど、多分、時々無理をしている。突き詰めれば誰しもそういうものかもしれないけれど」
一度、言葉を切り、橘さんは手元のコーヒーカップを静かに持ち上げる。少し考え込むような間を空けてから、それを傾けて一口飲む。
それからも再び間が空く。客のまばらな喫茶店で、微かに店内をゆるりと流れるクラシックが聴覚を支配していた。
――時間にしてみれば、一分も無かったのかもしれない。だが、その極僅かな秒数の中、俺の思考回路は休むこと無く動き続けていた。まるで空間に網を張るかのようにして、そこから何かを得ようとしていた。それが何なのか、ハッキリとは分からない。分からない、そのことが俺は少し怖かった。
ソーサーに置いたカップを橘さんが再び持ち上げ、再び傾ける。そして、カチャリとカップを置く。その後に生まれた言葉はひどく静かで、けれど確かに感情の込められたものだった。
「綾を見ていてくれる人がいたら、安心出来るんだけどな」
静かで落ち着いたものだからこそ、そこに内包された熱のようなものが余計に強く浮き彫りにされた気がした。その熱に名前があるとしたら、それは。
「……橘さんでは、いけないんですか」
考えるより早く飛び出した言葉。
いや、どんなに短く瞬きのようなものであろうと、思考する時間があったからこそ言葉は生まれる。だが、それはほとんど反射的にと言っても良いくらい、俺から離れて橘さんの元へと辿り着いていた。
一瞬、橘さんが目を見開いたようだった。すぐに元の通りになった為に、もしかしたら見間違いかもしれないと思ったが、おそらくは見間違いでは無い。
「すみません、立ち入ったことを言って」
「いや、良いんだ。そうだね、俺がそれになれたら一番良かったんだけどね」
俺は謝意を述べてみるも、そこに宿る心は半分も無かった。興味本位で人の事情や感情を探ることは恥ずべき行為だと思っているが、その時ばかりは違った。俺は本音を聞き出したかった。親しくも無い、ましてや自分より年上の人に対して、そのようなことを試みるのは間違っている。俺はそう思う。
しかし、今ここで尋ねなかったら、いつ尋ねると言うのだろう。機会はあるかもしれない。だが、そんなことよりも俺の脳味噌が「今、尋ねるべき」と冷静に命令を下していた。
「更に立ち入ったことで恐縮なんですけれど。どうして片桐と別れたんですか?」
俺は何ということを質問しているのだろう。今すぐ、この穏やかで良質な空気を湛えている喫茶店から全力で抜け出したい気分だ。それでもこの両足が動かないのは、答えを求めているからに他ならない。
「ああ、気は合ったんだけどね。何て言えば良いのかな、うまく表現出来ないな……」
予想に反して、橘さんは気分を害した様子も無く、そう言った。そして言葉を探すかのように、少しだけ宙に視線を這わせた。
「本当に、うまく言えないけど。気が付いたっていうのかな、強いて言えば」
「気が付いた?」
「そう。別に付き合わなくても俺達は一緒にいられるよね、ってことに。勿論、無理して付き合っていたわけじゃない。互いが互いを必要で好きだったからこそ、付き合った。そういう形に自然になった。でも、俺と綾に限って言うならば、それは不自然だった」
「付き合うことが、ですか?」
橘さんは俺の問い掛けを肯定し、更に続けた。
「付き合っていなくても会える、電話もメールも出来る、一緒に勉強も出来る。付き合っていてもいなくても、接し方も気持ちも変わらない。だから付き合っていることに違和感を覚えた。そして別れたんだ」
分かるような分からないような話だった。
――その時、俺の脳裏に先程の言葉が浮かんだ。綾を見ていてくれる人がいたら安心出来るんだけどな、と。そして、橘さんの家で目の当たりにした、橘さんと片桐の様子。今の橘さんの言ったことが本当なら、あれらは何だと言うのだろう。
その疑問から生じる感情が顔に出ていたのだろうか、
「微妙に納得出来ない、って感じだね」
と、橘さんに指摘された。
「あ、いえ。そういうわけでは」
そう言いながらも、その言葉が表面だけのものであることを俺自身、手に取るように分かっていた。
「確かに綾のことは好きだし、心配になる。ちゃんと生活しているかなと不安になる。だから出来る限り力になりたいと思って、そうしてる。でも、それは恋人という関係にならなくても良いことなんだ」
「片桐は」
「え?」
「橘さんはそれで良くても、片桐はどうなんですか? その、片桐の気持ちは」
そういえば、橘さんと片桐、どちらから別れを切り出したのだろう。雫が水面に落ちて作り出す輪のように、俺の心の静かなところで何かが広がって行くのを感じた。そして、冷や汗が流れ落ちたような気がした。
勢い任せで口に乗せた俺の発言を受けて、橘さんは黙り込んでしまった。考えてみれば、俺には関係の無い話なのだ。片桐が誰と付き合おうと、別れようと。どんな理由や事情があって、目の前に座るこの人と恋人同士でいたにせよ、そして今は違うにせよ、俺が首を突っ込むべきことでは無いのだ。俺は片桐の保護者でも何でも無いのだから。
――それでも。それでも何故、俺は、どうでも良いことだと言い切ることが出来ないのだろう。単なる興味本位だろうか? 片桐がどんな人と恋愛をしていたのか、そこに何があったのか、ただ単に知りたいだけなのだろうか。
回り始めては止まり、止まっては再び回り始める。それを繰り返す俺の思考回路に、一本の矢のような言葉が唐突に放たれた。
「綾は、納得していないみたいだった」
それが俺の脳に痛みを伴って刺さった。そんな気がした。
「別れようと言ったのは俺からなんだ。それは、さっき話したことが原因なんだけど。他にも理由はあってね。やっぱりうまく言えないけれど」
目の前のコーヒーカップを軽く持ち上げて、橘さんは目線をその中に注ぎ込む。それは、話すことへの迷いの表れのようにも見えた。
「綾は多分、俺じゃなくても良かったんだ。自分を守ってくれる人なら、誰でも」
何処かにそっと落とすような響きを含んで、それは告げられた。
「誰でも、というのは言い過ぎかもしれない。そういう子じゃないのは分かっている。でも、俺でなくても良かったというのは間違っていない。きっと」
「……どうして、そう思うんですか」
「明確には言えない。付き合った人間、というか俺にしか分からないことだと思う」
何と言うべきか分からず、橘さんがそうしたように俺もコーヒーカップを傾け、静かに一口を飲んだ。
「綾は、いつも日常と戦っている。その苦しさを和らげてくれる存在がほしかったんだと思う。その気持ちを否定するわけじゃない。ただ、だからと言って恋人になる必要は無かったんだ」
――いつの間にか、外は夜の一歩手前に染まっていた。ボックス席の右側にある大きな窓の外の向こう側、ふとした瞬間に俺の両目がそれを捉えていた。店内を流れるクラシックは何回、曲が変わっただろう。今は、ポール・ドゥ・センヌヴィルの「渚のアデリーヌ」が流れていた。小学校の朝マラソン前の時間、この曲が流れていたことを思い出す。
僅かに、目前の現実から離れていた俺の意識を手元に引き寄せる。そして皿に残っていたままのミートパイを口に運ぶと、それはとっくに熱を失っていた。
「綾のことで、話したいことがあるって言ったよね」
先程よりも少しトーンの上がった声で橘さんは言った。エスプレッソを飲み干し、俺が頷くと、それを待っていたかのように口を開く。
「相模原君が綾を好きなのか聞きたかったっていうのもあったんだけど。もし負担じゃなかったら、綾のこと、少しでも良いから気に掛けていてくれたらなと思って」
「というのは」
「付き合っていても別れても、やっぱり心配に変わりは無くてね。単位のこともそうだけど、高校でちゃんとやっているかなと。この間、相模原君が家に来てくれた時に思ったんだ。綾は相模原君を信頼しているんだなって。だから、もし嫌じゃなかったら」
そこで言葉は切られた。橘さんのその言葉にも目にも、確かに片桐を案ずる色が浮かんでいて。それが、ますます俺の困惑に拍車を掛ける。
「嫌じゃないです。でも、そんな気持ちがあるのに片桐と付き合うことは不自然なんですか? ちゃんと、片桐に確かめたんですか?」
立ち入り過ぎだと思う。分かっている。それでも俺は、そう聞かずにはいられなかった。
「こればっかりはどうにもならないんだ。付き合っている二人の内の片方が、そう思ってしまった。勿論、話はしたよ。それでも俺の気持ちは変わらなかったし、綾の、何て言うのかな、感情というか形というか。そういうものも変わらなかった。だから」
だから。それに続く言葉は無かった。けれども聞かずとも分かった。だから二人は別れたのだ。
送ろうか、と聞かれたけれど俺はそれを丁重に辞退した。一人、考えながら電車に揺られて帰りたかった。
橘さんは特に気にした風も無く穏やかな笑顔で笑うと、
「今日はありがとう。それじゃあ」
そう言って、真っ暗闇になる前の夜空の色、濃紺の車に乗り込んだ。そして、すぐにそれは遠ざかり見えなくなって行く。ぼんやりと車を見送った後は、まるで夢から覚めて現実に立ち返ったかのような感覚、空気が、周囲ごと俺を包んでいた。
僅か二十分の電車の時間、俺はずっと考えていた。次第に濃くなっていく夜の闇と気配を眺めながら、頭の中に浮かんでは回り、回っては何処かへ消えて行く、そしてまた再び現れる橘さんの言葉と存在について考えていた。考えずにはいられなかった、と言うのが正しいのかもしれない。
俺の思考力や理解力が足りないのだろうか。橘さんの話は、分かるような全く分からないような、何とも不思議な様相で脳内を駆け巡っていた。
ふと、俺は恋愛というやつについての経験や知識が不足しているのだろうかと考える。だから分からないのではないだろうかと。今まで、何となく気になる女の子というのはいても、付き合ったことなど俺には無い。そういうことをして来ていたら、橘さんの考えとやらを理解することが出来ただろうか?
いつもの通りに定期券を、いつもの通りに改札機に通す。カシャリ、という無機質な音が冷えた空気の中に響く。飛び出て来たそれをパスケースに仕舞いながら踏切を渡り、俺は家路を辿る。人の姿は多く無く、革靴が生み出す足音がいやに大きく聞こえていた。
家に着く少し前、立ち止まって何となく空を見上げると、猫の目のように細い三日月が空中にひっそりと佇んでいるのが見えた。猫目石のシャットヤンシーを思い出す。
その時、鞄の中で携帯が震えた。
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From:片桐綾
Sub:お誕生日
Text:そーいえば、相模原君のお誕生日っていつですか?
知りたい♪
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何故だろう、今、無性に片桐に会いたい。




