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第1章「姉妹」(5)

「瀾ちゃん……どうだった?」

「もちろん合格……あ、ごめん、気が効かなくて」

 瀾ちゃんは、あたしの表情を見た途端、あたしが落第した事を悟ったようだ。

「滑り止めはどこ?」

「うちの近くの女子高」

「そっか……女子高か……。ちょっと憧れるな……」

「あたしは嫌だよ。女の子ばっかりの環境は、何か肌に合わない」

「女性しか居ない家庭で育ったのに?」

「いや、それこそが女の子しか居ない環境が肌に合わない原因の1つなの‼」

 ともあれ、姉と妹で、くっきりと明暗が分れたのは確かだ。

「あれ? 高木、来てたの?」

 その時、一人の男子が、瀾ちゃんに声をかけた。瀾ちゃんの事を知ってるらしい。

 背は平均よりやや低め。ビミョ〜に老け顔。痩せ気味だけど、ガリガリってほどじゃない。一番印象に残るのは、妙にボサボサの髪だ。

「あ……なんだ、お前か……」

「受かってた?」

「まあね」

 仲の良い友達に話すような口調の、その男子と、うなじの辺りをポリポリ掻きながら、淡々と答える瀾ちゃん。ちなみに、瀾ちゃんは冷めた表情で、完全に明後日の方向を見てる。

「俺も受かってた」

「誰が、お前に、合格したかなんて聞いた?」

 その男子も、ビミョ〜に気が弱そうな感じがする顔立ちや雰囲気のせいで、『俺』と云う一人称が似合ってない気がする。

「瀾ちゃん…誰?」

「そう言えば、そっちの女の子は?」

 あたしと、その男子は、ほぼ、同時に瀾ちゃんに聞いた。

「私の双子の妹だ」

 その男子を嫌ってる訳ではないみたいだけど、すご〜く、かったるい感じで説明する瀾ちゃん。あのさぁ、せめて、説明する時は、相手の方を見ようね。

「こいつは、私の中学の同級生。小学生の頃からの腐れ縁だけどな」

 続いて、瀾ちゃんは、あたしの方を向いて、そう説明した。心なしか、口調が、ビミョ〜に変ってる気がする。

「え? 妹なんて居たの?」

 そりゃ、見た事も聞いた事も無い『同級生の双子の妹』が現われたら、驚くよね。

「居たよ。ややこしい事情が有るけどな」

「言われてみれば、どことなく顔は似てるし、声はそっくりだな……けど、背丈は…いや、何でもない」

「はいはい、チビなのは自覚してると、何度言えば……」

 瀾ちゃんの口調は、ウザそうなのに、妙に会話が噛み合ってる。待てよ、ひょっとして……うん、一応、聞いてみるか。

「この人、ひょっとして、瀾ちゃんのボーイフレンド?」

「……え?」

 一瞬だけ、瀾ちゃんの顔にキョトンとした表情が浮かぶ。

「……いや、だから……」

「あぁ、その発想は無かった。こいつが私のボーイフレンド? そんな冗談を言われたのは初めてだ」

 瀾ちゃんの、その一言を聞いて、瀾ちゃんの同級生だと云う男子の表情が変った。

 より正確に言うなら、表情が曇った。

 いや、彼の表情については、更に正確な表現も有るだろうけど、まぁ、何と言うか……言葉にしない方が良いような気がする。

 ともかく、瀾ちゃんが大真面目な顔と口調で、あんな事を言ったせいで、傷が広がったと思うよ、うん。

 桜姉さんの事を『無神経』とか言ってたけど、無神経さに関しては、瀾ちゃんも大概じゃないかな。

「あのさぁ、瀾ちゃん、もう少しこう、手加減というか、何というか……」

「何の手加減だ?」

 受験の合格発表見に来て、合格だったのに、あんなにしょんぼりした感じで去ってく人も珍しいかも。……もっとも、瀾ちゃんのせいだけど。あ、聞き忘れてる事が有った。

「そう言えば、あの人、何て名前?」

「どうでもいいだろ」

 その時、携帯電話(Nフォン)の着信音が鳴った。

「ん?」

 メッセージアプリ(Maeve)を立ち上げると、桜姉さんからメッセージが入ってた。

「桜姉さんが、あたし達に、お昼おごってくれるって」

 もっとも、おごると言われても、生活費の管理なんかは、あたしがやってるんだけどさ……。

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