死神ブック
それから、1年が経ち3年生になった。
あのグループは、いくら待っても絡んで来ないからとてもつまんなかった。
部活は、ちゃんと出来てる。陽先生は優しいんだけど、ダメなときは正しいこともちゃんと教えてくれるから、とても分かりやすい。誤解だったね。あの人達とは比べ物にならないくらい、いい先生だったから。ちょっとありがたいかも。
「楝!聞いて聞いて!悲報だよ、悲報!!」
「何?そんなに慌てて言うこと?」
「そうだよ!だって、今日岩田と佐倉戻って来るって…!」
「嘘だろ?おい…」
1年入院してるから死んだと思ったのに。しかも、2人揃って退院かよ…
りぃから聞いた話によると、激しい運動は出来ないらしいから、陽先生は残って教えてくれるみたい。あの人達だけじゃないから、まだいいんだけど。っていうか、何で戻ってくるんだよ…
授業が終わって部活の時間になった。僕は、委員会の仕事があったから20分くらい遅れて行った。
体育館に入ると、岩田と佐倉が椅子に座ってメンバー達と元気に喋っていた。信じたくないけど、信じるしかないよね。会いたくないけど、仕方なくそこに行った。
「久しぶりだな、楝!」
「岩田先生、お久しぶりです。体調は大丈夫なんですか?」
「あぁ、何ともない。動くことは出来ないけどな。まぁ、佐倉先生とサポートはしていくから、安心しな!」
「あ、そうですか。」
何が安心しなだよ。僕らの気持ち、全然分かってないな。落ち込む要素は見せなかったけど、心のなかはどん底に落ちている。死んでくれないなら僕が死にたい。
「楝、マジ最悪だね?何で戻ってくるんだろねー?」
「芽亜里もそう思うよね。ってか、本当に何で死なないの?」
「本当それな?この世界から消えりゃよかったのに。」
芽亜里の言う通りだよ。誰か消してくれないかな。
陽先生のおかげで、いつも通り順調に進んだ。あっという間に部活が終わった。前はこんなことなかったのにね?不思議だなー。部活も終わったから、皆体育館から出た。
「じゃーねー。」
「バイバイ!」
メンバーと別れて、りぃと2人で歩いて帰った。
「ねぇ、何で生きてんの?死んだんじゃなかったの?」
「まぁ、死んだも同然だったのに運がよかったんじゃない?」
「じゃあ、今年一番運勢悪ければよかったのに!!」
運勢結果みたいなのが、テレビでやってたけどそれであの2人の順位は、上の方だった。あれが、全く逆だったらよかったんだけど。思った通りにはいかないもんだね。
その時、フッと思いついた。
「りぃ、思ったんだけどいっそ、自分達の手で殺せばよくない?後始末大変だけど。」
「あっ、いいかも!でも、私達2人じゃ出来ないよ。力不足だし。他の人誘っても絶対断られるし。」
「だよね…」
やっぱ、僕らには無理だ。やる勇気は全然あるけど、後始末が出来ない。遅くまで行動も出来ないし。何か、いい方法ないかなー?
そう思ったとき、突然光に飲み込まれた。これ、知ってる気がする…
目を開けると、そこは僕らの学校の屋上だった。いつの間にこんなとこに来たんだ?こんなの人間に出来るわけないよね…
後ろを振り向くと、そこには黒いフードを被った背の高い人がいた。フードを深く被っていて、顔はよく見えない。
「ねぇ…あれ、誰?」
「知らない。ってか、何でここにいるの?」
「わかんない、誰の仕業よ。」
「私です。」
フードを被った人が答えた。結構遠くにいたはずなのにもう、僕達の近くにいた。逃げたくても足が動かない…金縛りにあってるみたい…
「あなたたち、殺したい人がいるみたいですね。」
「そうですけど、何か?」
「その願い、私が叶えて差し上げましょう。」
その人は。いきなり意味のわからないことを言っていた。そんなの出来るわけないのに。
「どういうこと?っていうか、あなた、誰?」
「これは、失礼。私は死神。この世に、死をもたらす者です。」
自己紹介すると同時にフードを脱いだ。それは、死神とは思えないほどかなりの美形男子だった。
僕を見た瞬間、少し優しく笑った気がした。気のせいだろうけど。
「望みを叶えるって、どういうこと?」
「あぁ、それはあなたたちに、死神になってもらんですよ。」
「死神になる?どうやって?」
「このブレスレットをつけるのです。これは、死神と呼ばれるものは全員つけています。ですが、条件があります。」
条件?やっぱ、何かあるんだ。そりゃ、ただではくれないよね。望みも叶えてくれるわけだし。
「条件は、一生死神として生きなければならないということです。死んだ後もですよ。」
それが、条件か…いいのか、悪いのか。どっちなんだろう。死神だとしても、この世界にいられるのにはかわりないもんね。
僕は、りぃと顔を見合わせてどうするかアイコンタクトをした。
「わかりました。じゃあ、そのブレスレットを受けとります。僕たちを死神にしてください。」
「その言葉、待っていましたよ。喜んでお渡ししましょう。楝さん、りぃさん。」
「どうして私達の名前、知ってるんですか?」
「契約したときに自動的に分かるようになっているんですよ。そして私はレイドと申します。」
レイドさんか。優しいのか優しくないのかわかんないや。性格はいい方であってほしいけど。
「じゃあ、ブレスレットお渡ししますね。りぃさんは、ピンクのものを。楝さんには…これです。」
りぃのは、手元から出てきた普通のものだった。だけど、僕のは特別そうな箱に入っていた水色のを渡された。
なんか、りぃのと全然違くない?こんな大切そうなもの、もらっていいのかな?でも、渡してきたんだからいいんだよね。
「楝さんのは、上からの命でこれをお渡ししました。では早速着けてみてください。」
そう言われて僕たちは着けた。その瞬間、呼吸が荒くなり苦しくなった。りぃも同じようになっていた。そして、終わったみたいでリラックスしてた。
でも、僕はその後頭のなかにモヤがかかった映像や写真などが次々と流れてきた。数えきれないほど流れて、終わった頃には疲れはてていた。りぃが心配して傍に来てくれた。
「その様子だと、楝さんの頭のなかには映像などが流れてきたみたいですね。」
何で知ってんの?まさか、これレイドさんの仕業かな?
「その映像全て思い出すと何かあるかもしれないので、頑張って思い出してくださいね。」
思い出せって、そのことについて思い当たることなんてないんだから、無理にきまってるじゃん…
「あ、そうだ。これ、渡しておきますね。」
「何ですか、これ。」
「これは、死神ブックです。あなたたちは、ペアなので二人でお使いください。あと、これも渡しておきます。」
また、渡されたのは袋だった。中を見ると何かが入っていた。
「これは?」
「私達専用の黒コートとトートバッグです。誰かに交渉に行くときにバレないように必ずこれを着てください。そして、使い終わったら必ずこのトートバッグに入れてください。」
必ずが多いな…まぁ、これで殺せるならいいや。
「死神ブックの使い方は、なかに入っている説明書を読んでください。」
説明、雑だな。こういうところはめんどくさいんだね。
僕たちは、試しにコートを着てみた。すると、それは腰よりも長くて少し大きくて萌え袖になるくらいだった。デザインは、左腕のところに本の絵が書いてあるくらいでとてもシンプルなものだった。結構気に入ったかも。
「レイドさん、これから宜しくお願いします。」
「お願いします!」
「えぇ、こちらこそ宜しくお願いしますね。では、私はこれで。」
それだけ言うと僕たちをここまで連れてきたときのように、ワープで帰って行った。
りぃの方を見ると、目をキラキラさせていた。
「どうしたの?」
「いや、凄いなーって思っただけ!使えるものなら私もやりたいなーってね。」
「そうだね。いつかできるようになるんじゃない?」
「そうかもねー。信じて待ってみるよ!」
相変わらず明るいな~。僕もこういう風になれたらよかったんだけどね。そう言って二人で笑っていた。
レイドさんに帰り道からここまでワープさせられてしまったから、また一から歩いて行かなければならなかった。
めんどくさいな…
そう思いながらもドアノブに手を掛け、扉を開ける。するとそこには帰ったはずのレイドさんがいた。
「帰ったんじゃなかったんですか?」
「先程、無理矢理連れてきてしまったのでお詫びに家までお送りします。」
「いいんですか??」
「もちろんです。そうだ、今度の土曜日空いてますか?」
「空いてますけど。」
いつもやることなくて暇だから即答した。りぃもどうせ暇だし。家にいるよりかは全然いいよね。
「そうですか。じゃあ、これ使えるように練習しましょう。朝の10時頃ここでお待ちしていますね。じゃあ、行きましょうか。」
レイドさんは、黒い扉を呼び出すとドアを開けて通らせてくれた。通り抜けた先は間違いなく僕の家だった。
レイドさんにお礼を言って、別れた。
家に入ると、親が心配してたかのように傍に寄って来た。過保護すぎるんだよ。僕ももう小学生じゃないから大丈夫なのにね。
あー、早く殺したい。そのためにはワープを習得しなきゃなんだよね。
だから早く覚えよ…殺す為に。