黒く染まった心
あーあ、つまんない。この世界って、何のためにあるんだろう。学校も家も僕のためにあるわけじゃない。どこにいてもなんか落ち着かない。
でも、屋上だけは違う。屋上は、僕がー番落ち着ける場所。
でも、いつかはこんな平和な生活もいつかは終わっていく。
だって、僕の学校生活はもう平和ではなくなったから。もちろん、楽しいものでもなくなった。
僕は変わった。小学生の時の優しい気持ちなんて1ミリもない。理由?そんなの、とっくにわかってるよ。
それはね、学校の先生だよ。あははっ。それを考えるだけで笑いが込み上げてくるし、いらも増してくる。部活まであと9時間。それまでの時間は楽しく過ごさないとね?まぁ、無理だけど。
僕は、片耳イヤホンを着けて音楽を聴いた。やっぱり、ここで聴くと家よりも落ち着くんだ。不思議だよね。僕の嫌いな学校なのに。
それからl0分経ち、僕は教室へと戻った。
僕が学校に来たときは人はあまりいなかったのに、20分ぐらい経った今はたくさんの人がいる。僕は、早足で教室へと向かう。自分の席につくと小さいため息をついた。
「何ため息ついてんの。もう、2年生だよ?」
「まぁ、そうだけど…」
「部活がなけりゃ楽しい学校生活を送れるんだろうけどね。」
この子は、吉野りぃ。僕の一番の友達。りぃには何でも話せるから共感できることとかをたくさん話してストレス発散してる。
そして、僕は木原楝。名前だけだと、男の子に間違えられたりする。まぁ、そんなことはどうでもいいんだけど。
あれ?なんでりぃがここにいるの?クラス一緒だっけ?まぁ、朝だから先生もいないし、何してもいっか。
「何しに来たの?」
「え?つまんないから楝のとこに来ただけだよ?そしたらさ、楝いないしまたかって思ったよ。」
僕は学校が、嫌だからって理由で朝の時間は屋上で音楽を聴いているのをバレー部の皆は知っている。まぁ、これを1年生の時からやってるから知ってて当然なんだけど。だから、たまに僕に用があるときは当たり前のように屋上に来て用件だけ言って帰っていくことがあった。そんな日常に僕はもう慣れてしまっていた。
「あー、もう嫌だ…りぃ…助けて…」
「いいよ?でも無理。私ももう限界越えそうだしね?」
やっぱり、僕だけじゃないよね。僕とりぃはもう病んでると言っても過言じゃないくらいになっているけど、他の部員はどうなんだろ?いつも笑っていて何を考えているのかわかんない。というのは嘘で、多分他の部員も病んでいると思う。人の悪口を言ったりやる気がなくなったりして、学校も嫌になってくる。まぁ、もう嫌になってるんだけど。だから、学校に来た瞬間帰りたいって思う。そんなのは、学校生徒全員が思ってるだろうね。現に今、斜め前の子が言ってたからね。
「1時間目ってなんだっけ?」
「え、知らない。りぃと同じクラスじゃないし。僕のクラスは体育だけど。」
「え、怠くない?朝から体育とか。」
そりゃね。でも、部活にくらべればどうってことない。
だって、バスケとかダンスとか色々できるし。空いてる時間はりぃと話せるし。
…あ、りぃのクラスも1時間目体育じゃん。
「ってかさ、りぃたちも1時間目、体育じゃん。」
「あ、そうだっけ?…そうだった!合同だもんね!忘れてたー。」
いや、忘れすぎでしょ。僕もだけど。委員会の課題の提出日も忘れて芽亜里たちと遊んでるし、宿題も忘れるし、やる気ないのかね。
「あ、そうだ。」
「なに?なんか思い出したの?」
「ううん、なんでもない。あとで、優から言われると思うから。」
大事なことなのかな?僕はそう思ったけど、そんな雰囲気じゃない。だって、凄く笑ってる。ツボにはまったみたいに。
それほど嬉しいことなら早く教えて欲しいな。特に先生たちの話題は気になるけど、一般生徒のことなんて興味もないし。
僕に関係のある話なら…だけどね?
りぃは、笑いが止まらないまま教室へと帰っていった。そんなに面白い話なら教えてくれてもいいじゃないか。まぁ、部活の時間まではあと8時間くらい。この時間を頑張ればいいだけ。
僕はそう思うけどら他の人はどうだろうね?僕にはわからないけど。
今日の時間割りは楽しくて好きだからすぐに部活の時間が来ると思うけど、来ないで欲しい。まぁ、今日は面白いことがありそうなんだけどね。
僕は笑みを浮かべながら移動教室へと向かった。
1時間目から体育。午後にあるよりはマシだけど、めんどくさいな…
しかも、そのあとは音楽。移動教室続きとか最悪…
授業は順調に進み、部活の時間になった。僕はりぃが言おうとしてたことがとても気になって体育館に駆け足で向かった。そこにはもう皆が集まっていて楽しく話していた。
「お願いします。」
そう言うと皆が一斉に僕の方を見て手招きをしていた。
優とりぃと芽亜里と明里は、早く来て欲しいのかもの凄い回数で手招きをしている。いや、そんなに早く行けないから。荷物も持ってるし。
やっとの思いで歩き、カバンを置くと皆が僕を見てソワソワしていた。
「どうした?何かあったの?」
「それがね、岩田と佐倉、白血病で入院したんだって!二人一緒ってこんなことある?」
優がそう言った瞬間僕は笑いが込み上げてきた。
最初は我慢しようと思ってたけど、無理だった岩田と佐倉が白血病という病気を急に発症し、二人して同じ病院に入院したのが面白かった。
何より、僕達の前からいなくなってくれたのが嬉しかった。まぁ、期間限定みたいなものなんだろうけど。でも、死ぬ確率が1%でもあるならそれに入って欲しい。そうすれば、もう二度と会わなくてすむし。いや、欲しいじゃなくてそうなれのほうが正しいかな?
だって、いないほうが楽しいんだもん。それを知ってしまった以上、いないという選択肢以外ないでしょ。
「楝、どうしたの?やっぱり、面白かった?」
「そりゃもちろん。落ち込んだり悲しんだり心配したりするわけないじゃん。こういうことを望んでいたんだから。」
「でもさ、入院だから死ぬかどうかはまだ分からないんでしょ?白血病って言ったってさ。」
「そりゃね。まぁ。死んで欲しいけど。」
大体の2年生が「それなー!」って言った。それほどいなくなってほしんだろう。皆、いつも言ってた「岩田と佐倉マジムカつく!」「死ねばいいのに。」とかね。
あと、僕とりぃと芽亜里にはもう一人いなくなって欲しい人がいる。
それは、水瀧茉菜っていうバレー部員。保健室登校なのに部活に来てコートに入っている。なぜ、コートに入れるかって?そんなの決まってるじゃん。岩田のお気に入りだからだよ。
クラスが嫌いだとか人が嫌いだとか言っておきながらクラスの人と普通に喋ってる。しかも、部活の時のテンションがめちゃくちゃ高い。そういうのに僕達はイラつきとかムカつきを覚えた。
コートに入っていてもやりづらくて仕方がない。
茉菜は、今ここにはいない。今日は、部活も学校も休みみたいだ。クラスは一緒だけど、教室には来ないから全然わかんない。っていうか、知りたくもないしね。知ったところで何の得にもならないから、茉菜のことなんてどうでもいい。
「あ、このこと茉菜が知ったらどうなるんだろうね?」
「さぁ?でも、ビックリして心配するんじゃない?」
「そして、私達に[大丈夫かな!?入院したならお見舞いに行かなきゃだよね!?]って、しつこく言われそうじゃない?」
「あ、確かに~!楝もそう思わない?」
「僕?もちろん、そう思うよ。」
やっぱり嬉しいよ。嫌いな奴が一気に二人も消えたんだから。これ以上の嬉しいことはない…と言いたいところだけど、まだ言えないな。茉菜が消えるまでは。茉菜を消すにはどうしたらいいんだろうか。
どこか人に見つからない場所に呼び出し、殴って気絶した状態にさせる。もしくは…僕の手で殺す。
僕の頭には、それしか思い浮かばなかった。やっぱり、僕の心は黒く染まってしまった。前まではこんなことなかったのに…