大納言のハロウィン
大納言、後の世にてせらるるハロウィンといふものを知り給ひて、好き好きしものかと思してハロウィンの宴設けさしけり。瓜にて灯籠を作らして、神無月の三十一日になれば人のあまた屋敷に集ひていと賑やははしかりけり。この日鬼どもの出る日なれど「ジャックオランタン」が力にて鬼来まじかりけり。
稚児ども「トリックオアトリート」といふもの聞き喜びて、とりどりなる装ひにて来たりて
「菓子くれざれば生憎《あやにく》だたむ」
と言へば、大納言
「あな、らうたげなる装いかな」
とおほしてて菓子たまへりけり。
他の御方もとりどりの「仮装」というものせり。然れど、幾らかののしること限りなき者ありて、いとあさましき様子なり。この者ども後に検非違使の沙汰するところとなりけり。