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暴走した遊華を元に戻す件について

今回は暴走遊華を元に戻す話です

誰これ?って思う方いらっしゃると思いますが、その訳は後半で

では、どうぞ

 何かに憑りつかれたようなとはよく言ったものである。俺は遊華の変貌でこの言葉のありがたみを知ったし、昔の人はよく言ったと感心した。自意識過剰かもしれないが、遊華が俺に好意を持っている事は知っていたし、何となくだが、それが恋愛感情だっていう事もわかっていた。それを蔑ろにしたのは俺だが、今回はいつも以上に変だ。どうなっているんだ?


「遊華、どうしたんだ?」

「何が?」

「いつもはここまでしないだろ?」


 現在俺は遊華に馬乗りにされている状態であり、俺の上にいる遊華の目には光が宿っていない。今日の遊華の暴走はいつも以上に酷い。キスについてはもう諦めた。言っても無駄だって事もあるが、1番は俺の行動によって遊華を不安にさせていた。俺はそんな思いをさせた遊華を何とかして慰めたい。そう思うからだ


「いつもはここまでしない。だけど、いつも思ってたよ?お兄ちゃんとキスがしたいってずっとずーっと思ってた。だけど、お兄ちゃんが困る事はしないよ?それは後でのお楽しみだもん。楽しみは最後までとっておかなきゃね。本当はいろいろしたいけど、今は10年間甘えられなかった分を取り戻さなきゃ……」


 遊華は俺に再びキスをしようとする。家なら別にいいが、ここは家じゃない。何とかして止めなきゃヤバい!香月と美月もそうだが、旅館の人に見られたらヤバい!


「あ、甘えるのはいいが、人に見られたらヤバいんじゃないのか?」

「別に見られてもいいじゃん。逆に見てほしいくらいだよ?そしたら解るでしょ?お兄ちゃんは私のものだっていう事がさ」

「いやいや、俺は人に見られるのは勘弁だぞ」


 人に見られるのは嫌だ。これは俺の紛れもない本心だが、これで遊華にもどうにか思いとどまってほしい。


「……るさい」

「え?」

「うるさい!!」


 遊華に怒鳴られた。遊華が俺を怒鳴ったりする事はある。だが、それはあくまでもじゃれ合いの範囲であり、本気ではなかった


「ゆ、遊華……?」


 今の遊華の表情はゲームかアニメのヤンデレのそれだ。言動も相まって更に恐怖が増すし、何をするかわからないから対処しようがない


「お兄ちゃんは私だけ見ていればいいんだよ!!他の女なんか見るな!!私の何がそんなに不満なんだ!?私は……私にはお兄ちゃんしかいないんだよ!!それがわからないのか!?10年前勝手にいなくなったクセに私を拒むな!!どれだけ寂しかったと思っている!?」


 遊華の口調は普段からは考えられないものだが、言いたい事は自分を見てほしい、悪いところがあったら直す、周囲に人はたくさんいるが本当の意味では孤独なんだ、10年前からずっと寂しかったから甘えさせろ。とこんな感じだが、これは全て俺の推測でしかない


「遊華、おいで」


 ハグ以外に思い付かないのか?そう言われたら返す言葉もないが、俺が現状で思い付く最適な手段がこれしかない。


「そんな手に引っかかるか!!お兄ちゃんは困った時はハグしたら誤魔化されると思ってるだろうし、私も最初はそれでいいと思ってた!だけどッ!今は違う!そんな手には引っかからない!いや、それ以上してくれないと嫌!!」


 最適な手段だと思っていたハグではもう満足できない遊華はそれ以上を求めてきた。これじゃ子供だ……どちらが子供かは比べないし、比べられないが、言ってる事、やってる事は子供レベルだ。


「遊華……」


 自分の考え方がいつ、誰にでも通用するとは思っていなかったし、変わらないものもあるが、俺の考え方も変えなきゃいけない。そう思っていた。現にタイムトラベルを全く信じてなかった俺が10年後にいる時点で全否定できなくなってるしな。だが……


「お兄ちゃん今困ってるでしょ?24にもなって子供みたいに駄々を捏ねるな。そう思ってるでしょ?」


 駄々を捏ねるなとも24にもなって子供みたいとも思っていない。ただ、俺は今の遊華を見てどうしていいかわからなくなっているのは確かだ


「そんな事は思っていない。どうしていいかわからなくなってはいるけどな。だから……遊華の好きにしろ」

「え?」

「俺にできる範囲且つ命に関わるまたは繋がらない範囲で遊華の好きにしていい。このままだと一生終わらない気がする」


 どちらかが折れなきゃ終わらない。そんな事は明らかだ。なら、俺が折れればいい。簡単な事だし、遊華にとっては10年間も離れていたんだ、その寂しさを埋めたいと思うのは当たり前の事だ


「お兄ちゃん……本当にいいの?」


 遊華の目が元に戻ってきている。これはいけるか?だが、これ以上我慢を強いると今以上に暴走しかねない。この際だから全部叶えさせよう


「ああ、元はと言えば俺が遊華に我慢させてきたのが原因だ。俺にそんな自覚はないし、遊華もそれは感じてはいなかっただろうが、本能ではそういった願望はあったんだと思う。だから、俺はそれを今それを全部とはいかないが、叶えてやりたいと思ってる」


 もちろん、俺にできて命に関わる事以外でだがな


「そ、そう……じ、じゃあ、キス!お兄ちゃんとキスがしたい!」

「そんな事か……いいぞ」

「やった!」


 遊華は俺の唇に自身の唇を重ねてきた。貪るようなキスだが、さっきとは違い、一方的ではなく、ちゃんと相手の事も考えている感じがする。実の妹とキスって言うのはどこか後ろめたい気持ちになるが、遊華とのキスは不思議とそれを感じさせなかった


「ふぅ、これで満足したか?」


 キスが終わっても俺は遊華に馬乗りにされたままだが、遊華も元に戻っており、暴走する気配もない。これでひと段落ついた


「うん……」


 望み通りキスをしたというのにどこか浮かない表情の遊華。まだ何かあるか?


「どうした?浮かない顔して。まだやりたい事があるのか?」

「いや、お兄ちゃんとキスできたのは嬉しかったけど、どうしてああなっちゃったか覚えてないんだよ」


 は?俺は一瞬、耳を疑った。自分の言動は覚えているのに原因を覚えてない?


「いやいや、俺がいなくなった寂しさが爆発してああなったんじゃないのか?」

「確かにお兄ちゃんがいなくなって寂しかったけど、お兄ちゃんに強引にキスなんてしないよ?」


 遊華さん、寝てる時のキスは強引じゃないんですか?


「寝てる時のキスは強引には入らないのか?」

「お兄ちゃんバカだな〜寝てる時のは不意打ちだよ」

「さいですか」


 どう違うかサッパリわからんが、今は遊華の異常な暴走の原因を突き止めよう。


「うん!それに、何だろう?今まで心にあったモヤモヤしたのが消えてる」


 心のモヤモヤが消えてよかったね!俺は怖かったけどな!


「とりあえず、俺の上から退いてくれ。じゃないと原因を調べようにも調べられん」

「あ、ごめん。今退くね」


 遊華は慌てて俺から離れた。にしても、遊華がおかしくなった原因か……俺の失踪以外にも原因があるのか?仮に失踪が原因だとしてもああなるのか?サッパリわからない


「とりあえずはこの旅館の事を調べてみるか……俺は何も知らされずに連れて来られたし……」


 遊華の暴走と関係なさそうだが、俺は何となく自分が泊まっているこの旅館の事を調べてみた


「何だよ?これ……?」

「ん?どうしたの?お兄ちゃん?」


 完全に元に戻った遊華は怒鳴りすぎて喉が渇いたのか片手にスポーツドリンクを持って現れた。


「いや、これ……」


 説明しても信じてもらえないと判断した俺は遊華に携帯の画面をそのまま見せた。


「え?なに……これ?」


 案の定、遊華も俺と同じく戸惑いを隠せないといった表情だった。信じられないのはわかる。だが、この旅館ができる前からあった古い言い伝えに問題があった


「この旅館から見える海で3人の女性が身を投げた。その女性たちは共通して1人の男性に好意を持っていたが、恋叶わず海に身を投げる事になったらしい。それ以降、毎年夏にその女性の霊が女性にとり憑く。対象は病的までの片思いしている女性だと」


 サイトには細かい事まで書いてあったが、俺は必要な部分だけをなるべく簡単に説明し、同時に自分のもサイトに書いてある事を理解しようとしたが……


「理解できないよ……お兄ちゃん……」


 理解できないのは俺も同じだ。ここが撮影場所として選ばれたのは単なる偶然だろうし、旅館の人も言い伝えはあるだろうが、今まで苦情がなかったわけじゃないが、騒ぐ程の事じゃないから公表しなかったといったところだろう。だが……


「俺にも理解はできないし、信じられない。が、このサイトに書いてある事が事実なら遊華の異常な暴走にも説明がつく」


 説明がつく。なんて言ったが、実際にそれで納得できるかはまた別の問題だ。この情報が嘘じゃない保証はどこにもない


「お兄ちゃん、このサイトには3人の女性って書いてあったけど、1人は私だとして、残り2人は誰に?」

「わからない……俺の身内じゃない事を祈りたいが、香月と美月だったらと思うと何をされるかわかったモンじゃない」


 遊華は俺とキスしたいっていうのが本能の中にあり、それが叶ったから元に戻ったが、香月と美月が遊華と同じようになったとして、同じ願望を持ち、同じ方法で元に戻るかはわからない。


「お兄ちゃん、1ついい?」

「何だ?」

「香月お義姉ちゃんと美月お義姉ちゃんが私と同じ状態になったとしても同じ事をしたら元に戻ると思うよ?」

「何でそんな事を言い切れる?」

「全部とは言わないけど、あの2人も根本的には私と同じだから」


 全部の部分は多分、俺といた時間や俺がいなくなってから取り残された間の時間の事だろう


「まだそうと決まったわけじゃないが、覚えておくよ。ありがとな、遊華」


 遊華の頭を優しく撫でる。遊華は安心した顔をするが、こうする事で俺が1番安心しているのかもしれない


「えへへ〜」


 香月と美月が遊華と同じになってない事を信じて俺は2人の帰りを待つ。しかし、お土産を見るだけなのにどうしてこんなに遅いんだ?









今回は暴走遊華を元に戻す話でした

半狂人と化した遊華はどうでしたか?

今回も最後まで読んで頂きありがとうございます


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