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俺が山での撮影に臨む件について

今回は山での撮影です

まさか、あんなところまで撮られていようとは思いもよらない

では、どうぞ

 ふぅ、昨日は大変だった。香月と2人で風呂に入ってたら遊華と美月が乱入してきたんだもんなぁ……いいか悪いかで言えば、悪くはないとだけ言っておこう。さて、今日は山での撮影だ。張り切っていってみようか。

 俺、藤堂遊は昨日の海の撮影である程度は慣れてしまったが、あくまでも撮影に関してだけだ。それ以外は全然ダメだ。考えても仕方ない……後は野となれ山となれ


「さて、今日は山での撮影だが……水着にはならんよな?」

「さすがにそれはないと思うよ?お兄ちゃん」

「だよなぁ~、山で水着はないよなぁ~、川で遊ぶわけじゃないんだから」


 さすがに山で水着になるなんて可能性はゼロに近い。川で遊ぶなら別として。だが、山での撮影となると衣装は何だ?バッチリ山装備での撮影か?それはそれで味気ないし、撮影した写真をどんな雑誌に載せるのかは知らんが、遊華たちを登山関係の雑誌に使うとは思えない


「遊、今回の撮影でのテーマはあくまでも家族で遊んでる姿だからね?」

「ああ、それは聞いた。だからこそ気になるんだよ。どんな写真を撮影するか」


 海なら水遊びのシーンやみんなで砂遊びの写真を撮ればいいが、山でも同じ写真を撮るのか?さすがに水遊びは海と被ると思うんだが……


「とにかく、行ってみない事にはどうしようもないよ。遊ちゃん」

「そうだな、行ってみなきゃな」


 美月の言う通りだ。撮影の現場に行ってみないとわからない部分は多いし、行ってみないとな。今回、俺は見学か雑用かもしれないし


 現場に着いた俺たちは昨日と同じように最初に着替えるところから始まった。え?今回は見学か雑用じゃないのか?って?そんなわけないのは知ってたよ!期待したっていいじゃないか!俺もバッチリ撮影される側だったよ!


「今回は水着じゃないのはいいんだが、Tシャツ短パンって……これで坊主頭だったら田舎の少年だな俺は」


 坊主頭と田舎の少年をバカにするわけじゃないが、俺の年齢的にはこの条件が揃えば田舎の少年の完成だ。だが、俺メインじゃないし?あくまでメインは遊華たちだから俺が坊主頭でも関係ないさ


「あ、撮影する前にアレだけ聞いておくか」


 俺は撮影の前にどうしても聞いておきたい事がある。それは────


「すみません、お聞きしたい事があるんですけど。今宜しいでしょうか?」

「はい、何ですか?遊さん」

「ここって焚き火して大丈夫ですか?」


 焚き火が可能かどうかである。するかどうかは不明だが、確認しておいて損はない


「大丈夫ですよ。撮影の許可を取る時に確認しましたが、焚き火しても大丈夫って管理人さんが言ってましたから」

「わかりました。ありがとうございます」


 昨日、俺が質問した男性スタッフの方が昨日に引き続き丁寧に教えてくれた。毎度の事だが、ありがとうございます。スタッフの方にお礼を言って再び1人黄昏る


「ここの川ってどんな魚いるんだろう?」


 別に魚釣りが目的じゃないが、川の水が透き通っているのを見てどんな魚がいるのか純粋に気になる。休憩時間に魚釣りしてみるか。釣竿があればの話だがな


「遊ちゃん、お待たせ」


 後ろから美月に声を掛けられた。昨日もそうだけど、後ろから声を掛けられてばかりだな。まぁ、俺の着替えが早いって事もあり、着替え終わったら景色を見るか、身だしなみをセットしてもらうかのどちらかしかない。身だしなみをセットしてもらった後はこうして黄昏てるしかないんだけどな


「いや、全然待ってない」


 デートの待ち合わせのようなやり取りだが、決してデートの待ち合わせではない。そもそも、山をデートの待ち合わせ場所に指定する奴はいないだろう。


「そっか。それより遊ちゃん、どうかな?」


 美月の言うどうかな?って言うのは着ている衣装の事だろう。黄色のTシャツにハーフパンツか……Tシャツの色にはツッコまず、恰好自体で評価するとだな……


「よく似合ってるよ。美月」


 ありきたりな言葉だが、変に気取った言葉よりもありきたりな言葉で褒める方が俺には合っている


「ありがとう、遊ちゃん」


 こんなありきたりな言葉で喜んでくれる美月は優しいなぁ……もう少し俺も褒め言葉のレパートリーを増やすか


「こんなありきたりな言葉で喜んでもらえて俺も嬉しいよ」

「遊ちゃんはありきたりな言葉でいいんだよ。他の男なんて歯の浮くような臭い台詞しか言わないし、中には壁ドンしてきたのもいるけど、女子がみんなそれで喜ぶと思っているバカばかりだし……」


 前言撤回、褒めるレパートリーを増やしたら美月の闇に触れそうだから止めておこう。今も一瞬見えてるし


「み、美月?」


 ブツブツと呟き始めた美月に声を掛ける。このままじゃ美月が暗黒面に堕ちてしまいそうだ。


「ん?どうしたの?遊ちゃん」

「い、いや、何でもない」


 暗黒面に堕ちるのは防いだが、美月の見ちゃいけない一面を見たような気がする


「お兄ちゃん、お待たせ」

「遊、待った?」


 美月の触れちゃいけない部分に触れてしまい、マズイなと思っていたところで遊華と香月が来てくれた。遊華、香月、ナイスタイミング!


「いや、そんなに待ってないぞ」


 遊華と香月の衣装の色合いは昨日の水着がTシャツになっただけのものだ。似合ってないわけじゃないが、まぁ、そこは撮影する側のセンスなのでツッコまないでおこう。そもそもが写真の使い道を俺は知らない。遊華たちは知っているだろうが


「そう。それより、どう?似合ってるかな?お兄ちゃん」


 2人を見て思った事を一言で言うと、ある意味では水着よりTシャツに短めのハーフパンツの方がエロい。主に太ももとか


「2人ともスゲー似合ってる」


 顔が熱い。気温のせいじゃなく、俺の体温が上がっているせいで。美月もそうだが、俺は遊華と香月を見て欲情してるのか?いやいや、ないない、相手は妹と義姉だぞ?いくらなんでもそれはない


「ありがとう!お兄ちゃん!」

「ありがとう、遊」


 これまたありきたりな言葉だが、2人ともよく似合っているのは事実だしな。これ以上の事を言うと美月の二の舞になってしまう。歯の浮いたセリフは止めておこう。


「撮影開始しまーす!集合してください」


 撮影開始の合図があったので俺たちは集合場所に向かう。今回は山での撮影という事でどんな事をするのか楽しみだ。


「さて、今日はどんな事をするのやら」


 昨日とは違い、集合して移動する事はせず、今日はその場で撮影するらしい。まぁ、山だし、機材とか持って移動するにはキツイよなぁ……あとはあまり上の方に行くと虫刺されもそうだが、熊とかに遭遇する可能性とかもあるし。


「今日のテーマは家族でキャンプです。まずはテント前で作業する姿から撮影したいと思います」


 カメラマンからの指示でテント前ではしゃぐ姿を撮影し、その後は料理している姿、虫取りをしている姿などのキャンプに来たらやるであろう姿を次々と撮影していった。そんなこんなで現在休憩中なんだが、俺は釣竿を借りて、適当にミミズを捕まえ、そして────


「何が釣れるか知らんが、まぁ、何かは釣れるだろ」


 釣り真っ最中である。この川にどんな魚がいるかはわからないし、そもそもが、魚が釣れるかとうかも怪しいところだが、ものは試しと言うしな。釣れたら釣れたで儲けモンだし、釣れなかったら釣れなかったで別にどうということはない


「お、引いてる引いてる!コイツは当たりか!?」


 釣れるわけがないし、別に釣れなくてもいいかと思っていたが、予想外の当たりに自分でもビックリしている。何か周りが騒がしいが、今は気にしている場合じゃない


「クソッ!逃がしてなるものか!」


 俺は左右に竿お振り、魚を逃がさないようにする。ここで逃がしたら誰が見ているわけでもないが、カッコ悪い。左右に竿を振り続け、そして────


「おらぁぁぁ!!」


 釣りあげた。サイズ的には結構デカいが、何を釣ったんだ?一先ず確認が先だな。


「どれ、何を釣った?」


 確認すると釣れた魚はヤマメだった。この魚は食えるが、今は休憩中だし、調理するって言っても道具がない。


「ヤマメ釣っても調理する道具もないし、せっかく釣ったが、逃がすか」


 調理できたらするんだが、道具がないんじゃ仕方ない。自然に返そうとしたその時────


「お兄ちゃん!すごいよ!」

「うん!遊ちゃんすごい!」

「遊!私感動しちゃった!」


 遊華たちの声がした。見ていたら声くらい掛けてくれてもよかったのに……


「いや~、遊さん!さっきの凄い迫力でしたね~」


 どうやら見ていたのは遊華たちだけじゃなく、スタッフも全員が見ていたらしい。つまり……


「撮影に参加した俺以外の全員で見ていたのか」


 釣りに夢中で全然気づかなかったが、全員で俺の魚釣りをしている姿を見ていた事になる。


「はい!遊さんの姿はバッチリとカメラに収めましたよ!」


 しかも、カメラに撮られていたとは……釣りに夢中で気づかなかった……


「それどうするんですか?」


 釣りに夢中で気が付かなかった俺にも非はあるが、一応、写真の使い道だけは聞いておこう


「できれば使わせてほしいんですけど……ダメですか?」


 まぁ、別に使われても都合が悪い事なんてないから断わりはしないし、断わる理由自体ないからいい。本当に聞いただけだ。自分の知らないところで使われてトラブルになったら嫌だし


「構いませんよ。俺の釣り姿でよければ使ってください」

「あ、ありがとうございます!」


 カメラマンの方は感激してる。気のせいか泣いてるようにも見て取れるが、気のせいか?あ、使われる前に1つ頼みがあるんだった。


「すみません、俺の写真使うのはいいんですが、1つだけいいですか?」

「は、はい、何ですか?」


 スタッフ一同は不安そうに俺を見つめている。何?俺がやっぱやめたとか言うと思うか?1度許可したものを後出しジャンケンよろしく止めはしない。


「どなたか塩と串を持ってませんか?」


 遊華たちを含めてその場にいた全員が固まった。断られると思っていたのがまさかの塩と串の要求だもんな。自分で言っといてなんだが、予想外すぎる注文だ。この日の撮影は俺が塩と串を要求するというなんとも言えない形で幕を閉じた。

今回は山での撮影でした

意外なところを撮影されてるとは・・・どこで、いつ撮影されてるかわからないものですね

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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