俺の癖が発覚して家族が壊れた件について
今回は遊の癖と家族が壊れる話です。
壊れるって言っても人間関係がじゃなくて、キャラ的な意味でです
では、どうぞ
人の癖って自分じゃ気が付かないものである。爪を噛む癖とかがいい例だと俺は思う。そして、その癖っていうのは誰かを手本にしたとかそういう類のものじゃなく、いつの間にかついてるもの。俺はそう認識してるし、そう思う。俺がこの世界に来てからの癖は考え込んでしまう事だ。誰かに指摘されたのではなく、自分で癖って決めつけているだけかもしれないが……
「気になるなら聞いてみるか」
休憩スペースで美月を待っている間、特にやる事もなく、自分の癖について考えていた。結論は出なかったがな。
「何を聞いてみるの?」
風呂上がりの美月が俺の後ろから声を掛けてきた。よかった。痛々しい独り言じゃなくて……
「おお、美月。上ったか」
「うん、お風呂気持ちよかったよ~。で?何を聞いてみるの?」
「俺の癖って何だと思う?」
「遊ちゃんの癖?」
「そ、俺の癖」
「遊ちゃんの癖かぁ~」
美月が考え込むが、正直なところ美月にわかるとも思わない。美月が俺を全く見ていないって言うんじゃなくて、美月とはこの世界に来てからの付き合いだ。時間的な意味で美月にわかるわけがないって言う意味だ。だが、10年前に会話らしい会話をしていなかった遊華にもわかるわけがない。あれ?俺の癖ってわかりそうなの親父だけか?
「わからないなら別に無理して答えなくていいぞ?こんな事を聞いた俺が悪いわけだし、答えられなくても俺は全く気にしないから」
答えられなくて美月が傷つく事は防ぎたいので、答えられなくても気にしないようには言っておこう。そもそも、いきなり癖って何だ?なんて聞く方が悪いわけだし
「あ、わからないわけじゃなくて、遊ちゃんの癖って私が見た限りだと1つしか思い浮かばなくて……」
わからないんじゃなくて、1つしか浮かばなかったのね……まぁ、1つでも見つければ儲けモンか
「その1つの癖って何だ?」
遊華と香月もそうだが、美月も普段は俺にあれを直せ、これを直せと言わない分、いざ癖について聞くのは怖いものがある
「考え込みすぎるところ」
俺が自覚しているところを美月に指摘されてしまった。つまり、俺の考え込むところって癖なんだ……
「やっぱりそこなんだ……」
「うん、今日の移動中とか、撮影の休憩時間とかで考え事してたでしょ?」
「バレてたのか……」
意外だな。美月にバレてるなんて思いもよらなかった。この様子だと遊華と香月にもバレてそうだな……あくまでも予想だが
「まぁね。私は遊ちゃんのお姉ちゃんなんだから。多分、遊華ちゃんと香月ちゃんも気づいてると思うよ?」
「だろうな……美月が知っているくらいだ。2人とも気づいてるだろうな」
「遊ちゃん、隣りいい?」
「あ、ああ。立ったままじゃさすがに疲れるよな。ごめん、気が利かなくて」
「別にいいよ~」
美月はニコニコして俺の隣りに座った。向かい側でもいい気がするが、どうして隣りなんだ?まぁ、別に飲食するわけじゃないからいいんだが
「考え込む癖、どうにかしないとな」
「そこで直すって言わないんだね。遊ちゃんは」
「悪癖なら直すって言うが、考えるのは人間生きていく中では大切だぞ?何も考えないって事は他人におんぶに抱っこって事だろ?俺は自分の事くらいは自分で決めたい」
俺はこの世界に来てからはある程度の事は自分で考え、自分で決めてきた。その選択に間違えがあるかもしれない。現にそれで遊華に心配を掛けた事もあるしな
「自分で考え選択するのは大事な事だけど、遊ちゃんは何でも自分で決めるよね?」
「失礼な。俺だって誰かに相談くらいするぞ?」
飯のメニューとか限定だが。それも飯のメニューを相談する事も相談のうちだろ?
「それって今日のご飯何にする?って事でしょ?」
「ああ、それも立派な相談だろ?」
「またそんな屁理屈を」
屁理屈か……美月の言いたい事はわかる。美月は俺が重要な事を決める時に何の相談もないって言いたいんだろうな
「何とでも言え」
屁理屈だって言うのは自覚している。だが、周囲に心配を掛けたくないのも事実だ。厄介なものだな……この悪癖は
「じゃあ、1つだけ言わせてもらうね」
「ああ」
「心配掛けたくないのはわかるけど、少しは頼ってほしいな」
美月は笑っているように見えるが、泣いているようにも見える。俺としては命に関わる事案はそうはないと思う。周囲に心配を掛ける事はないだろう
「わかった。何かあったら遠慮なく頼らせてもらうわ」
「うん!」
今度の美月の笑顔は心から笑っている笑顔だった。美月はどんな顔してても笑顔が似合うなぁ……
「さて、話し込んで遊華たちを待たせるのも悪いし、そろそろ戻るか」
「そうだね、ご飯の時間もあるし、戻ろうっか」
遅いと遊華たちに何を言われるかわかったもんじゃない。早めに戻るに越したことはない。だが、俺には1つやる事がある。それは────
「戻る前にいちご牛乳買ってっていいか?」
風呂上がりの飲み物を買う事だ。ちなみに、今回は美月と一緒なので、いちご牛乳にしよう。
「いいよ~、私もいちご牛乳飲みたかったし」
「じゃあ、行くか」
2人の意見が一致したところでいざ!自販機へ!いちご牛乳を求めて!
「あってよかった……」
「だね~」
「目的の物も買ったし、戻るか」
「うん!」
俺と美月は風呂道具一式といちご牛乳を持って部屋へ戻る。3人の計画だとこれで全員が俺と2人きりになった事になるが、この後はどうする気なんだろうか?
「美月、1ついいか?」
「うん、なあに?」
「これで全員が俺と2人きりになるというイベントが終わったわけだが、この後はどうするつもりなんだ?」
「う~ん、どうするんだろ?私たちは遊ちゃんと2人きりになるところまでしか計画してないから、わからないや」
「そうか」
「うん。それより、遊ちゃん」
「何だ?」
美月は俺にまだ何か言いたい事でもあるんだろうか?それとも、何か要求でもされるんだろうか?
「ムラムラしたら私たちがいつでも相談にのるからね?」
とりあえず、言いたい事はいろいろある。だが、今は一言だけ言わせてくれ。今、美月に伝えられるたった一言を
「廊下の真ん中で何言ってんだ?」
ある程度の事は想定しながら生活している俺だが、身内に廊下の真ん中で下ネタを言われるなんて予想外だった
「遊ちゃん、欲求ないの?」
アホかぁぁぁぁぁぁ!欲求くらいあるわ!そういう事を言ってるんじゃねーよ!何で廊下の真ん中で下ネタを言ってんだ?って事を言ってんだよ!この旅行始まったから遊華と香月もそうだが、美月も下ネタ多いな!あれか?中学生男子か!?それとも、おっさんか!?
「そういう事を言ってるんじゃなくて、廊下の真ん中で何を言ってんだ?って話をしてんだけど?」
「ええ~!?別に普通じゃないの?」
おい、逆セクハラで訴えられるぞ?世の美月ファンが離れていくぞ?いいのか?それで
「普通じゃない。それに、こんな事バレたら美月のファンが離れていくぞ?」
「大丈夫だよ~、ラジオでも結構下ネタ言ってるし」
初耳だよ。俺を拉致った時や俺とラジオ一緒にやってる時は下ネタなんて一言も言わなかったじゃねーか
「意外だな。俺とラジオやってる時は言わなかったのに」
「当たり前だよ。遊ちゃんにはしたない女だって思われたくないし」
今現在進行形で思っているから安心しろ。義理とはいえ弟に下ネタぶっこんでくる姉なんてはしたない以外の表現を俺は知らない。
「美月、安心しろ」
「うん?」
「現在進行形で俺は美月をはしたない女。または、変態の一種だと思っている」
「酷い……」
美月は顔を覆ってシクシクと泣き真似をしてしまった。廊下の真ん中で下ネタぶっこんでくる方がよっぽど酷いわ!
「酷くない。普通だ。そんな事より、早くしないと置いてくぞ?」
「待ってよ~」
ズンズンと進む俺の後を追ってくる美月は半泣きだった。下ネタを言った挙句、現在進行形ではしたない女だと思われてるんだ。半泣きしたい気持ちはわかる。だが、自業自得だ。
「はいはい」
「遊ちゃん!適当すぎ!」
怒られてしまった。だが、下ネタを平然と廊下でいう奴よりマシだ。幸いなのは俺以外は誰も聞いてなかったという1点だけだ。
「適当で結構。俺はさっきの突然の下ネタで疲れているんだ」
「美月ジョークだよ!それくらい察してよ~」
「え?嫌ですけど?」
生憎、下ネタをジョークとして察する程の能力は俺にはない。それをしてしまったらダメになる気がするからな
「遊ちゃん、私の事嫌いでしょ?」
「いやいや、俺は美月も遊華も香月も愛してるぞ」
愛してはいる。ただ、家族としてな!愛している事に変わりはないから問題ないはずだ。
「遊ちゃん、女の子に勘違いさせないようにって事といつか刺されないようにって事と私たちは本気だよって事を伝えておくね」
美月の呆れた視線は遊華や香月とは違い、心に重く圧し掛かった。遊華と香月はしょっちゅうだが、美月は今回が初めてだからな。俺が把握している限りだと
「勘違いさせるような女が近くにいないって事と俺を刺しそうな女は身内にいるって事とどの程度美月たちが本気なのかはある程度は把握してるって事を伝えておくよ」
「前の2つはあえてスルーするけど、3つ目はわかったって返事しておくね」
できれば全部拾ってほしかったけど、3つ目だけわかってもらえただけでもよしとしよう。
「さて、部屋に着いたが、遊華と香月はどうしてるんだろうな?」
「さあ~、寝てるかもしれないし、テレビ見てるかもしれないよ~」
そうだといいんだが、果てしなく嫌な予感がするのはどうして?気のせい?まぁ、いいや。入ればわかる事だしな
「今日の撮影はハードとは言えないが、水遊びの後だから寝てたりしてな」
水遊びやプールの後って内容はそんなハードではないのに不思議と疲れるからな。なんて甘い考えの元、部屋のドアを開けたその先には───────
「「…………」」
一心不乱に俺の服に顔を押し付けている遊華と香月がいた。もう1度だけ言う。一心不乱に俺の服に顔を押し付けている遊華と香月がいた。
「美月、ここに風呂道具を置いて俺とゲームコーナーへ行かないか?」
「遊ちゃん、現実を見て」
目の前の現実を受け入れられなくて現実逃避をしてしまったが、ぶっちゃけ、認めたくない。姉と妹が自分の服に一心不乱且つ全力で顔を押し付けている姿を目撃したなんて俺は認めたくない。夢なら覚めてほしいし、現実なら俺の勘違いであってほしい。
今回は遊の癖と家族が壊れる話でした
癖って自分じゃわからないものだなぁ……これじゃないか?というものはあっても
癖と認識されているかどうか……
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました