俺が捕獲された件について
今回は遊が捕獲された話です。
遊華たちがいつかガチの監禁をしでかすんじゃないか?と心配になる今日この頃
では、どうぞ
人の顔って不思議だと思わないか?あ、ここで言う人の顔って言うのは顔のパーツが整っているとかそんな話じゃない。ここで言う顔って言うのは他人に見せる仕事の顔とプライベートの顔って言う意味だ。例えば、仕事上でキリッとした顔してても好きな人や家族の前ではデレデレしただらしない顔になったりといろいろある。俺の身内にも合っていれば3人程いるしな。それでだ、今の状況は……
「おにいちゃ~ん」
「ゆ~う」
「ゆうちゃ~ん」
はい、3人とも俺にデレデレしてます。あ、今回はいきなりとか、こうなる前に何かあったとか、そんなじゃない。遊華と香月はさっき戻ってきたばかりだし、美月は美月でさっきまで俺と一緒にいたから俺の知らぬ間に計画していたとかはない。
「どうした?遊華も香月も美月も今日はやけに甘えん坊だな」
旅行に来てまだ2日目なんですけど?仕事は明日で終わりだけどさ!酒でも飲んでるのか?いや、遊華と香月は知らんが、美月はさっきまで俺と一緒にいたからありえないだろうけど……
「今日はお兄ちゃんに甘えたい気分なの!」
「そう、今日は遊に甘えたい気分なの」
「遊ちゃん!諦めて私たちを甘えさせなさい!」
割といつも甘えているような気がするが、指摘したら怒られそうだし止めとくか。うん、そうしよう。
「甘えさせるのはいいが、とりあえず離れてくれない?」
「「「え?」」」
え?じゃなくてね?俺が今どんな状態か理解してる?思いっきり拘束されてるってわかってますかね!?お嬢さん方!
「腰に遊華、右腕に香月、左腕に美月。この状態だと俺は動けないんだが?」
俺は捕獲された宇宙人じゃねーんだよ!逃げねーから離してくんねーかなぁ……はぁ……
「お兄ちゃん離したら逃げるでしょ?」
「そうだね、遊は離すとすぐ逃げちゃうからね」
「だから、しっかりと捕まえておかなきゃね」
俺はペットですか?あれですか?犬や猫レベルですか?それがお望みならそうしますが?好かれるのは嬉しいんですけど、さすがにこれはどうかと思うんですけど?
「逃げないから離してくれると嬉しいんですけど……」
「「「嫌ですけど?」」」
知ってた!わかってた!こうなったら止められないって遊知ってた!知ってたけど!身体の自由が効かないのは困るから離してくれると嬉しいんだが……
「わかった。そのままでいい。その代わり、俺が粗相しても知らんぞ」
いくら好きでもさすがに粗相によって汚れてまで俺にくっ付いていようなんて思わないだろ
「「「いいよ?それくらいなら」」」
嫌がれよ!いくら好きでも汚されんのは嫌がれよ!コイツ等どんな思考回路してんだよ!いや、粗相はしないけど!しないけどさ!たとえ話でも嫌がるのが普通じゃないの!?
「はぁ……」
もう抵抗する気も起きん。好きにしてくれ……どうにでもなれだ。どんだけ寝るんだ?って思われても構わない。しかし、今の俺には寝るという選択以外ない。よし!寝よう!そうしよう!サヨナラ現実!寝れないけどな!
「あの、皆さん?」
「「「何?」」」
「何でスリスリしてんの?」
何か擦られてると思ったら3人して俺の身体に頬を擦り付けていた。身体の自由を優先しすぎて忘れてたわ。
「「「マーキング!」」」
「さいですか……」
マーキングって犬や猫じゃあるまし……そもそも、この場合のマーキングって多分、匂いを俺に付けとくって意味合いが込められていると思うんだが、匂いが混ざってマーキングの意味を成さないんじゃないか?なんて言える雰囲気でもなかった。だって……
「「「えへへぇ~」」」
こんなに幸せそうなんだもん。言えるわけないよなぁ……俺弱いんだよなぁ……こういうなんて言うか、小動物がじゃれてくる姿と言うか、子供が無邪気に甘えてくるような感じでこられると
「しばらくしたら飽きるだろう……」
扱いが子供っぽくなっているが、そこは仕方ない。現状では子供みたいだし……そのうち飽きるだろ?
「それにしても、君たちハグ好きだね?」
俺のするハグと遊華たちのするハグでは意味合いが違うと思うし、困った時にいつもハグしている俺が言えた立場じゃないが……俺はハグする時は相手を安心させる意味もあるが、自分はここにいるっていう意味も込めている。あれだ。癌とかで入院している人の手を握るのと同じ意味だ
「だって、こうするとお兄ちゃんをより近くに感じられるでしょ?」
「それに、遊ちゃんも肌で私たちを感じられて嬉しいでしょ?」
「で、女性特有の感触を遊は3人分感じられるし、私たちは遊を感じられるしでいい事づくめだよ」
確かに、年上女性に囲まれて、その上、スキンシップも取れるなんて15歳男子なら憧れるかもしれんが、何回もされると飽きるんだが……?
「年上女性って言ってもなぁ……全員身内だしなぁ……」
「「「文句あるの?」」」
3人とも怖いんですけど……?文句あるなんて一言も言ってないんですけど……
「文句あるなんて一言も言ってないんだが?」
文句はないけど、最近は特別嬉しいわけでもない。精々俺の家族はスキンシップが激しいなぁ~くらいにしか思ってない。とだけ言っておこうか
「遊ちゃん!さっきの言い方だと文句があるようにも聞こえるよ?」
「そうだよ。遊。私たちじゃ不満と捉えられても仕方ないよ?」
「お兄ちゃん、言い方には気を付けようよ」
何で俺が怒られなきゃいけないんだ?事実だろうが!俺が過去の世界から飛ばされた人間だから過剰なスキンシップでも対応するが、これがずっと同じ空間で過ごした人間とか、やさぐれた人間とかだったら嫌がるぞ?何だかんだ言って受け入れてる俺に感謝しろ!とは言いづらい
「ごめんなさい、俺が悪かったです」
「「「わかればよろしい」」」
謝りはしたが、なんか理不尽だと思うのは気のせいだろうか?そして、何でこの3人はこんなに満足そうなんだろう?
「俺は風呂に行きたいんだが、遊華たちは?」
このまま抱き着かれていてもいいが、風呂にも入りたい。だからと言って強引に引き剥がそうとすると抵抗されるのは火を見るよりも明らかだ。
「私と遊華ちゃんはここへ残って部屋を片付けておくよ」
「うん、さすがに服を脱ぎっぱなしはまずいしね。香月お義姉ちゃんと服や荷物の整理をやっておくから、お兄ちゃんは美月お義姉ちゃんとお風呂に行ってきていいよ」
やはりか、昨日は香月、今日の朝は遊華、今は美月と俺は3人と2人っきりで風呂に行く事は避けられないのか。嫌じゃないが、俺がギャルゲーの主人公で遊華たちはそのギャルゲーのヒロインと言ったところか
「そうか、じゃあ、美月と2人で行ってくる」
「「行ってらっしゃい」」
俺と美月は準備をしてから部屋を出た。これで2人っきりで風呂に行くという事は一応全員としたわけだが……うん、何だ?このギャルゲー的な展開は?
「遊ちゃん、どうかした?」
隣りの美月が不思議そうに俺を見てくる。今の美月綺麗というよりは可愛い部類だ。遊華たちがいなかった時の美月は綺麗系だったけどな
「いや、家にいたら俺と2人っきりになるって言ったら絶対喧嘩になるのに、今回は喧嘩しないんだなぁと思ってな」
「うん、旅行前に誰が何日目のいつに遊ちゃんと一緒にお風呂に行くか決めてたからね」
どうやらこの旅行で誰がいつ俺と2人っきりで行動するかは最初から決められていたらしい。俺が知らないのは当然と言ったら当然だ。前日に知らされたんだからな。だが、遊華たちは俺が知らされるずっと前から知っていた。つまり、俺といつ2人っきりになるかの計画を立てるなんて簡単な事だ
「どうやって決めたかは聞かないが、よく決まったな」
「うん、くじ引きで決めたから喧嘩とかはしなかったよ~」
くじ引きで決めたんかい!それなら喧嘩にはならんわな。ズルでもしない限りは。だが、喧嘩したって話を聞かないところを見ると、ズルはせずに公平なくじ引きで決めたみたいだな。
「っていうか、くじ引きしてまで俺と2人っきりになりたかったのか……」
「せっかくの旅行だし、遊ちゃんと2人っきりで何かしたいって思ったんだよ。私だけじゃなくて、遊華ちゃんも香月ちゃんもね」
「そこまでして俺と2人っきりになりたいって思われて俺としては幸せだが、今のところ美月は夜の海を見に行ったりもしたが、遊華と香月は一緒に風呂に行っただけで特別何かした覚えはないぞ?」
美月とは夜の海に行ったが、遊華と香月は2人で風呂まで行ったくらいで特別何かをした覚えはない。
「一緒にお風呂まで行く事に意味があるんだよ~」
「そんなものか?」
「そんなものだよ」
女性ってよくわからないな。俺が鈍感なだけかもしれないが、2人でいる事に何の意味があるんだ?
「2人っきりってだけでいいのか?」
「女の子は好きな人と2人っきりになるだけでも幸せなんだよ?特別何かをしてほしいわけじゃないんだよ?」
「そ、そうか」
俺には理解できないが、女性である美月が言うならそうなんだろうな。でも、こんなに思われてるんだ。調子に乗るわけじゃないが、ここのゲームコーナーにプリクラ機があったはずだから、みんなでプリクラでも撮るか。
「そうだよ~」
そうこうしているうちに大浴場に着いた。俺と美月は一旦ここで別れ、当たり前だが、俺は男湯へ、美月は女湯へと入った。
「家だと自室で考え事するが、旅行中は男湯か部屋の風呂が俺の考え事する場所だな」
風呂に入る準備を進めながら2日目だが、自分の考え事をする場所を確保できつつある状況に自分で自分を笑ってしまう。
「何かあるとすぐに風呂だもんな……だが、考え事の中には遊華たちに聞かせられない事も含まれるからある意味では風呂に入って考え事するってのは正解なんじゃないか?」
風呂って考え事する場所には最適だと思うが、考え事する毎に風呂に入ってたら俺はいつかふやけてしまうのではないか?主に皮膚が……
「そもそも、せっかくの旅行なのに考え事ばかりして素直に楽しめないってどうよ?」
旅行を楽しむ為に難しい事を考えるのは家に帰ってからにしよう。今はこの旅行を楽しめばいいんじゃないか?この世界に来てからの俺の悪い癖になりつつある、いろんなことを考え込む癖は旅行の間は封印だな。
今回は遊が捕獲された話です。
旅行の事を遊だけ知らされてない時点で何かある。知ってた!
感想くださった方ありがとうございます。この場を借りてお礼申し上げます
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました