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遊華を抱いて寝る件について

今回はタイトルこそあれですが、遊が遊華を抱き枕にして寝る話!

説教から入るって、どんだけ~

では、どうぞ

 納得いかない事って人生の中でたくさんあると思う。時にはそれが原因で人間関係が崩壊したり、仕事を辞めたりと人によっては取り返しのつかない事に発展するかもしれない。俺も現在の状況に納得いかないし、できない。だって……


「お兄ちゃん!聞いてるの!?」

「ああ、聞いてる聞いてる」


 正座で足が痺れたのと長旅の疲れによって遊華の話はほとんど聞いてないに等しい状態だった。


「遊ちゃん、聞いてるなら遊華ちゃんがさっきなんて言ったかわかるよね?」


 美月も遊華と同じ仁王立ちして俺に問い詰めてきている状態だが、遊華の話をほとんど聞いてない状態に等しい俺が遊華の話の内容を正しく理解しているわけがない。言いたい事は大体わかるが


「部屋の風呂に入るなら遊華たちも誘えって話だろ?」

「遊、わかってるなら何でやらないの?」


 香月よ、俺が悪いような感じになっているが、俺と入るといろいろと問題しかない事を理解してくれ。俺は男でお前たちは女なんだ。幼い頃ならまだしも15歳の俺と一緒に風呂に入る事自体に問題があるからな?


「一緒に寝るからいいかなと思った。後悔はしていない」

「お兄ちゃん!それとこれとは話が別!」

「そうだよ!遊ちゃん!」

「遊、全然わかってない」


 理不尽だ!何で俺が怒られなきゃいかんのだ!この状況を逆転できない手がないわけではないが。むしろ完全暴走状態じゃないからやりやすい。


「3人とも、おいで?」

「「「ッ!?」」」


 親父が10年前に母さんにやってた困った時にはとりあえず相手の女性を自分の方に来るように誘導し、そして……


「寂しかったよな……ゴメン」


 抱き寄せて耳元で囁く。親父曰く、これをやれば大抵の女性は許してくれるという女性をナメ腐ったやり方だ。だが、俺がこのやり方を妹や義姉にやる事になるとは思いもよらなかった。


「「「今日一緒に寝てくれたら許す……」」」


 条件付きで許された。本当、遊華たちの好意を利用しているようで罪悪感しかないが、大事にならないでよかった。


「じゃあ、俺もう立っていい?足がもう限界なんだけど?」


 足が痺れて感覚がだんだんと薄れていく前に何とかしたい。今、俺の頭の中にあるのはそれだけだった。


「遊ちゃん、もう立っていいよ。お説教も終わりだし」


 美月が俺に手を差し伸べてくれた。ちなみに遊華と香月は今もトリップ中であり、いち早くトリップから帰ってきたのが美月だったらしい。


「旅館の人が布団敷きに来るらしいから俺はちょっと外に行ってるわ」

「待って~、私も行く~」


 と、いう事で俺と美月は受付に海に行く旨を伝え、旅館の外へと出てきた。美月が付いて来た事は予想外だったが、元々1人で来る予定が1人増えたところで不都合はない。


「お昼の海もいいけど、夜の海もいいものだね~」

「そうだな。昼間に見るのとは別の景色に見えるな」


 美月と2人で波打ち際を散歩する。他人から見れば俺と美月はカップルか夫婦に見えると思うが、俺たちの関係は義姉と義弟であり、カップルや夫婦ではない。


「遊ちゃん、今日はゴメンね?」

「何だ?いきなり謝って」


 唐突な美月からの謝罪。謝罪されたところで俺には何のことかわからない。何に対しての謝罪だ?何のことかわからないが、俺には心当たりがありすぎる。暴走か?それとも正座させた事か?


「今日の私……いや、私たちは普通じゃなかった。女将さんの事やお説教の事」


 自覚あったのか……自覚があるなら少しは自重してほしい。じゃないと俺は女性と仕事の話やそれ以外の事務系の話すらできない


「自覚してたんだな」

「う、うん……」

「美月だけじゃないが、俺が女性と話す度に暴走するのは正直、止めてほしいんだがなぁ……」

「……ごめんなさい」


 俺は美月を慰めるでも、都合のいい言葉を掛けて取り繕う事もしなかった。そんな事をしても意味はないとどこかでわかっていたからな。


「毎回毎回だと俺の精神が持たないし、女性と事務的な会話や仕事の話すらままならない」

「うん……」


 既に泣きそうな美月を見てここで止めようかと思ったが、俺はまだ美月に大切な事を伝えていない


「好かれて嬉しくないわけじゃないし、こんな可愛い義姉や妹に嫉妬されて俺は幸せな方だと思うが、少しは信用してくれないと俺の心は美月から離れていくと思う。まぁ、美月だけじゃないがな」

「うん、これからは気を付けるね……だから、離れていかないで……お願い」


 美月はそれだけ言うと顔を手で覆い泣き出してしまった。泣かすつもりはなかったんだが、まさか、泣きだすとは……はぁ……


「離れていかないから泣くなよ」

「うん……」


 こんなところを人に見られたらあらぬ誤解を生むかもしれない。できるだけ泣いてる美月を人に見られない方法は1つ、美月の顔を人から見えなくする。2つ、現在美月は手で顔を覆っているので、顔を覆う事をしなくて済むようにする。この2つから導き出される答えは……


「泣き止むまでこうしてる」

「うん……」


 芸がない、バカの一つ覚えだとしても俺には泣いている美月を抱きしめる事しかできない。自分の名誉とかそんなんじゃなく、自分がしたいからそうする。


「こんな事なら浴衣で来るんじゃなかったな。いや、ある意味浴衣で助かったのか?」


 洋服だと涙の跡が目立つ。その代わりポケットが付いてるので、ハンカチを持ってくる事ができる。浴衣だとポケットはあるにはあるが、数が多いわけじゃないので財布と携帯を入れたら満杯になってしまうが、下にTシャツを着ているわけじゃないので涙の跡はあまり目立たない。どっちがよかったかわかったものじゃないな。本当に


「ごめんね?私、泣いちゃって」

「別にいい。暴走する事に対して罪悪感を抱いてくれて何よりだ」


 数分後、泣き止んだ美月と2人で旅館までの道を歩いていた。運がよかったのは美月が泣いているところを人に見られなかったところくらいで、美月の目は真っ赤なのでおそらく誤魔化しは効かないだろうな……


「どうしたの?遊ちゃん」

「いや、美月の目が赤い理由を何て言ったものかな?と思ってな」

「あ、そう言えばそうだね。何て言おうか?」


 2人して言い訳を考えるが、結局いい案が出ないまま部屋に戻る事となった。


「「ただいまぁ~」」


 部屋が真っ暗だ。遊華たちは寝ているのだろうか?できれば寝ていてほしいが……


「「おかえり、2人とも」」


 真っ暗な部屋の明かりが突然点灯し、仁王立ちこそしていないが、明らかに怒ってますよというオーラを出している遊華と香月が待ち構えていた。


「「た、ただいま」」


 狼狽えはするが、怖くはない。既に布団は敷いてあるし、後は寝るだけだ。寝る寸前になって問い詰められるのはゴメンだ。まずは、遊華と香月の内どっちに問い詰められて面倒かを冷静に見極める。


 どっちに問い詰められたら面倒か────


「お、お兄ちゃん?」


 遊華か?それとも────


「ゆ、遊……そんなに見つめられたら恥ずかしいよ……」


 香月か────?


 問い詰められて面倒なのな遊華だな。これは間違いない。今日の寝る配置は決まったな


「遊華、今日は俺の上で寝るか?」

「え?いいの?」

「「なっ……!?」」


 遊華は喜び、香月と美月は驚愕する。っていうか、美月は昼寝してる時に俺の上で寝ただろうが


「今日の夜は遊華、明日の夜は香月、最終日は美月。これでいいだろ?」

「「「…………」」」


 3人ともまだ少し不満があるようだ。俺が勝手に言い出した事なので俺にできる範囲での不安は聞いておこう。いや、不安を解消しておこうの間違いだな


「家でもしてやるぞ?」

「「「え?いいの!?」」」


 やはりこれか……俺が女性に耐性を付ける為だ。遊華たちの願いくらいいくらでも叶えてやるさ。俺ができる範囲且つ刺激が少ないもの限定だがな


「遊華たちが決定に従うならな」

「「「従います!!」」」


 3人ともそんなに俺の上で寝たいのか?人の上で寝るなんて寝苦しいだけだと思うが……


「じゃあ寝るか」

「「「うん!!」」」


 明日は多分早いだろうから、さっさと寝る。今は午前12時20分だから十分な睡眠が取れるはずだ


「じゃあ、香月と美月は俺の隣りで遊華は俺の上な」


 自分でも思うが、大胆になったな。さっき許しを請う側に美月がいた事なんて気にならないくらいに俺は疲れているんだな。あ、明日の仕事の内容を聞いてない……海と山が近いって事は水着姿でも撮影するのかな?俺がいる意味がますますわからなくなってきた


「遊華……」

「ん?何?お兄ちゃん」

「今更何だが、胸が当たってるぞ」

「本当、今更だね。まぁ、当ててるんだけど」


 目の前の遊華を見て10年前ではありえない光景だと思う。いや、10年前の遊華も同じ事をしたかったのかな?聞くなら今なんだが、俺の左右にいる美月と香月が起きている可能性があるので、一応確認だけするか


「すぅ、すぅ」


 右を陣取っている香月は寝ているから問題ないな。では、左の美月を確認してみよう


「むにゃ、むにゃ」


 左を陣取っている美月も寝ている。俺の上にいる遊華は寝つけないようだが……


「なぁ、遊華」

「何?お兄ちゃん」

「10年前も俺とこうして寝たかったか?」

「うん」


 遊華さん、即答ですか……美月と香月が抱き着いているわけじゃないし、俺がこの世界に来てこうしているって事は10年前の遊華は寂しい思いをしていたに違いない。そもそも、俺が遊びに行かず、遊華との時間をもう少し作っていたらよかった。それだけの話だ


「遊華が落ちないようにこうしておくか」


 両手が空いているし、遊華が俺の上から落ちないためと自分に言い訳をして俺は遊華を抱きしめる


「じゃあ、私も落ちないようにこうしておくね」


 遊華は俺を抱き返してきた。俺と遊華は互いに抱きしめあって眠りに着いた。困った時にはハグ。俺はこの世界に来てどうしていいかわからない時や、遊華たちが泣いてる時にはいつもハグしているような気がする。まぁ、キス魔よりはマシなはずだ。多分


「お兄ちゃん、温かいね」

「そりゃ生きてるんだ。体温なきゃまずくないか?」

「そういう事を言ってるんじゃないの」

「心がとか言わないよな?」

「わかってるじゃない」


 自分で言っておいてなんだが、スゲー恥ずかしい事を言ったぞ俺。大丈夫か?まぁ、大丈夫だろ。俺と遊華は互いを感じながら眠りについた。感じながらとか卑猥な気がする……

今回は遊華を抱き枕にして寝る話でした

タイトルこそあれでしたが、手は出してませんよ

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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