俺が兄妹で温泉に来た件について
今回は遊が遊華たちと温泉旅行をする話です
海か山かで悩んだ結果こうなりました。それはお話の中で
では、どうぞ
俺、藤堂遊は現在、温泉地に来ていた。海か山かと気になる人もいるだろうが、偶然にも海が近く、山も近い温泉地に来ているため、海に行くか?山に行くか?で揉める事はなかった。そもそも、俺は遊びで来ているわけではない。仕事で来ているのだ。まぁ、その仕事の内容っていうのは俺は聞いていないわけなんだが……
「なぁ、そろそろ今回の仕事の内容を聞かせてもらえないか?」
今までの事を仕事というカテゴリーで考えると、ラジオの公開生放送くらいしか思い浮かばないんだが
「あれ?遊ちゃん聞いてないの?」
「ああ、遊華から昨日の段階で温泉に行くとは聞いていたが、仕事の内容は全く聞いていない」
「今回は撮影でここに来ているんだよ?」
美月、俺はそれについて今、お前から聞いて初めて知ったよ。ん?撮影?それって俺必要か?いらないよね?何で俺を連れて来たの?
「撮影だったら俺、いらなくね?」
「遊、今回は私たちの写真撮影で来ているんだから遊も必要だよ」
香月さん、俺は撮影だからこそ俺は余計に必要ないような気がするんですが……
「いや、どこに使われるのか知らんけど、写真撮影なら香月、美月、遊華がいれば十分だと思うんだが?3人とも可愛いし」
「「「…………」」」
どうしたんだろう?3人とも顔が真っ赤だ。熱射病になるにはまだ早いし、熱でもあるのか?どちらにせよ体調管理はしっかりしないとな
「どうしたんだ?旅館に着く前に風邪か?体調管理はしっかりしないとダメだぞ」
顔を真っ赤にして俯いてる遊華たちを放置し、旅館に向かう。正直、俺はこの重たい荷物から早く解放されたい。
「「「鈍感!!」」」
体調の事で注意したらなぜか怒られました。何で?俺、怒られる事したっけ?
「ご、ごめん」
とりあえず謝っておこう。そうすりゃ丸く収まるだろ。確証はないけど
いろいろあったが、なんとか旅館に着いた。ここまで来るのに苦労はした記憶はないが、荷物が多いせいで身体的に疲れた。精神的に疲れるよりマシだが……
「部屋に着いたら休もう。そうしよう」
まだ旅館に入ってすらいないが、部屋に着いたら休む。俺の目標が決まりつつある瞬間だった。
「ようこそ当旅館へ」
出迎えてくれたのは見た目から察するに20代から30代の女性だった。旅館の見た目が和風だし、雰囲気は古風だからてっきりもっと上の人が出迎えてもらえると思ったが、意外に若いな。ん?あるんだろうなぁとは思ってたが、やっぱりゲームコーナーはあるんだな。あ、お土産コーナーは当たり前だが、あるよな
「4人で予約した藤堂です」
香月がチェックインの手続きをしていた。何だかんだ言って長女なんだな。こういうところはしっかりしているんだな。荷物は邪魔だが俺はゲームコーナーに夢中になりつつあったし、何より出迎えてくれた女将さんに香月や美月、遊華にはない女性としての魅力を感じつつあった。ひょっとして俺って年上の女性に弱いんじゃ……
「お兄ちゃん!女将さんに見とれてないで行くよ!」
「お、おう……」
別に女将さんに見とれてたわけじゃないが、どうも遊華には俺が女将さんに見とれているように見えたらしい。女将さんは女将さんでまんざらでもなさそうな顔してるし
「遊ちゃん、女将さんに見とれてた件の話は部屋で聞くからね?逃げたら……殺すわよ?」
「は、はい、わ、わかりました」
美月さん、一瞬だけど素が出てませんでした?気のせいですか?っていうか、美月も俺が女将さんに見とれてたと思ってるんですね
「遊……香月より女将さんの方がいいの?香月いらない子?」
こっちはこっちで素が出てるし、幼児退行してるし……しかも、俺が女将さんに見とれてた前提かよ……誰も俺がゲームコーナーやお土産コーナーを見てるとは思わないのな。いや、見とれてたには見とれてたけどな!
「いや、香月は必要だから。女将さんは女将さん、香月は香月だから」
「うん……」
部屋着いたら速攻で風呂にでも行くか主に女性陣が怖い。遊華と美月が特に……
「藤堂様のお部屋はこちらになります~」
通されたのは和室だった。まぁ、こういった旅館で洋室を探す方ができなくはないが、やっぱり和室だろう。古風な旅館だと。そういえば1つ気になる事が……
「あの~、女将さん?」
「はい、何ですか?」
「俺の部屋は……」
「藤堂様の予約は一部屋だけでございますが?」
「え?」
え?何で?そもそも、この旅館に予約入れたの誰だよ?遊華か?美月か?それとも香月か?あれ?何でかな?3人とも怪しく思えてくるんだけど
「藤堂様の予約は4人で一部屋となっておりますが……」
女将さんが予約表を確認しているが、やはりどう確認しても俺たちは4人一部屋なんだろう。部屋はいい。俺が押入れか別の場所で寝ればいいだけの話だからな。だが、予約を入れた人だけは確かめておく必要がある
「部屋の事はいいんですが、予約を入れた人の名前ってわかりますか?」
「予約の方は代理の方でしたが、それでもよろしければ」
旅館の予約って代理の人でもできたっけ?まぁ、いいや。その代理の人を教えてもらおう。その人が女4人って勘違いした可能性もあるしな。
「はい、それでいいです」
「代理の方のお名前は藤堂羽月様と申されてました」
あんのババアぁぁぁぁぁ!!事務所の予算がないなら俺を呼ばんでもいいだろうに!!予算があってわざとやってたら……親父諸共どうしてくれようか……
「わかりました。ありがとうございます」
羽月さんの仕業だと発覚したところで部屋がなぜ男女で別れていないかの理由はわかった。だが、もう1つの問題からは逃れられそうにない
「何もないようでしたら私はこれで」
女将さんはゆっくりと襖を閉め、部屋には俺たちしかいない状態になった。
「この部屋窓から海が見えるのか」
窓から海が見え、耳を澄ませば波の音も聞こえる。こうして波の音を聞いていると日頃の家事や仕事を忘れられそう。俺からしてみればそれくらい癒されるし、心地よい
「お兄ちゃん、さっき女将さんに見とれてたこと忘れてないよ」
ただ、遊華たちからの厳しい追及がなければの話だ。追及が待ってなければ素直にこの景色と波の音を楽しめた
「遊ちゃん、逃げられると思わない事だね。女将さんに見とれてたことについてしっかりと聞かせてもらうから」
美月も覚えてやがった……頼みの香月は……ダメだ、泣きそうになっている。この場に俺の味方はいない
「いや、俺は女将さんに見とれてたわけじゃないぞ?」
「へぇ~、お兄ちゃんそんな言い訳するんだ」
「遊ちゃん、素直に見とれてたって言えば楽になるのに」
「遊……」
言い訳も何も実際に女将さんはそんなに見ていなかったからな。どちらかと言えばお土産コーナーとゲームコーナーを見ていたから言い訳じゃない
「言い訳も何も俺はお土産コーナーとゲームコーナーを見ていたからな。女将さんに見とれてはいない。そりゃ若い女将さんだなとは思ったけど」
「ふーん、本当かな?お兄ちゃん」
「遊ちゃん、嘘吐いてない?」
「遊、本当に嘘吐いてない?」
遊華と美月は追及してくるとは予想してたが、香月まで追及してくるとは予想外だった。
「本当に嘘は吐いてない。仮に見とれていたとして15歳の俺を相手にすると思うか?いや、自分たちなら相手にするか?」
「私はお兄ちゃんじゃなきゃ相手にしない」
「私も遊ちゃんだから15歳でも相手にするけど、遊ちゃん以外の人なら相手にしないよ?」
「私も……」
俺にとっては嬉しいやら何やらの結果でこの場を何とか切り抜けた。やり方はまぁ……あれだ。たまたまお土産コーナーとゲームコーナーがあったので、女将さんに見とれていた事実をうまく隠しつつ誤魔化すという結婚したらそのうちバレそうな方法だ
「俺は風呂に行くから、じゃあな」
重い荷物を持って疲れたのと蒸し返されたら俺の精神衛生上よろしくないので早々に部屋から出て行く。この部屋にも風呂はあるし、それなりにデカい。4人で入るくらいならちょうどいいくらいだ。しかし、俺は大浴場でのんびり湯に浸かりたいんだ
「遊、待って、私もお風呂行くから」
「わかった、俺は部屋の外で待ってるから」
「うん」
トテトテという効果音が足音から聞こえそうなくらいご機嫌な香月。ここへ来て1番の癒しは香月かもしれない。というか、この旅行に来て1番の癒しは香月だな。異論は認めん!
「香月となら混浴に行ってもいいかな」
どうせ部屋の外だし、誰も聞いてないだろう。まして、遊華たちより俺は知名度は低いから誰に聞かれても大した騒ぎにはならないだろ
「ゆ、ゆゆゆゆゆゆ遊!?な、なななななななな何を!?」
香月がこれでもかってくらい動揺しているが、ひょっとして……聞かれたか?
「どうした?そんなに動揺して」
「ゆ、遊、さ、さっき、私と混浴に行きたいって……」
バッチリ聞かれてた。誰も聞いてないと思って呟いた独り言が聞かれてました……しかも、本人に
「ああ、言ったな。だが、香月となら混浴に行ってもいいかなとは言ったが、行きたいとは言っていないぞ?」
「…………馬鹿っ!!」
香月は怒ってドスドスと効果音が付きそうな勢いで部屋から出て行ってしまった
「か、香月、待てって」
「知らないもん!!」
完璧にヘソを曲げられてしまった。不用意な発言はするべきじゃないな……はぁ、そう言えば部屋の風呂って確か常に湯が出てるから24時間入れるとか部屋の説明書きに書いてあったな。
「はぁ、部屋の風呂でいいなら一緒に入る」
「……約束」
「ああ、約束だ。ただし、遊華と美月が寝てからこっそりな」
「うん……」
最近の俺は女性に囲まれて生活しているせいか、女性と風呂に入る事に躊躇いがなくなりつつあるような気がする。さすがに生まれたままの姿では無理だが、水着着用でならの状態に限るがな。
「さて、着いたな」
「うん」
「じゃあ、後で合流って事で」
俺と香月は大浴場の前で別れ、俺は男湯、香月は女湯へと入って行った。ようやく風呂にたどり着いた……ここって露天風呂どうなってるんだろう?温泉街の街を巡るのもいいが、俺にとっての1番の楽しみはやっぱ露天風呂!
「旅館に来たら大浴場にある温泉を全部巡るのは当然だよな」
シャンプー、石鹸、手ぬぐいをカゴに入れていざ出陣!遊華も香月も美月もいない!この1人の時間を大切にしよう。風呂はゆっくり入りたいしな。だが、10年前は遊華と旅行とかあまりなかったからなんだか新鮮だな
今回は遊が遊華たちと温泉旅行をする話でした。
書いてる最中にあれ?海も山も近い温泉宿って実際にあるし、それなりに多いじゃんって思いました。
海を題材に書くなら旅館より、海辺の民宿の方がよかったかな・・・山ならペンションの方がよかったかな・・・
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました