表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/116

呼び出された俺が家出した大人を拾う件について

今回は遊が家出した大人を拾う話です。

家出した大人って何だ?と思う方いらっしゃると思います!

では、どうぞ

 浩太から呼び出されて駅前の喫茶店で優雅にコーヒーを飲んでいる俺。それを自慢したいってわけじゃないが、呼び出した張本人が俺と同じように目の前で優雅にコーヒーを飲んでいる。コイツ、人を呼びつけておいてお茶するだけとか言わないよな?


「浩太、そろそろ俺を呼び出した理由を教えてほしいんだが?」

「ん?ああ、今日呼び出したのは遊、お前がこの世界に来てどれぐらい経つかなと思ってな」

「あー、大体1か月くらいだな」

「そうか、もうそんなに経つのか」


 浩太はコーヒーを一口啜った。俺がこの世界に来た日数が知りたいなら電話でもよかっただろうに……


「話はそれだけか?」

「いや、それもあるんだが、俺が渡した資料は役に立ったかなと思ってな」

「ああ、すごく役に立った。少なくとも俺がこの世界に来た理由はわかったしな」

「それは何よりだ」


 俺と浩太は互いにコーヒーを一口啜る。これじゃ本当にただお茶しているだけだ。


「ところで、俺たちってさっきからコーヒー飲んでるだけじゃね?」


 何度も言うが、浩太から呼び出され、いざ来てみたら喫茶店でコーヒーを飲んでいるだけ。これなら喫茶店に来る必要はないと思うんだが?主に金銭的な意味で


「まぁ、家ではできない話もあるんだ。主に遊がこの世界に飛ばされた事についての話とか」


 その話なら喫茶店ではもっとできないと思うんだが……気のせいだろうか?


「俺がこの世界に飛ばされたら何か都合の悪い事でもあるのか?」

「都合の悪い事はないが、お前、遊華ちゃんもそうだが、ちゃんと香月さんや美月さんの中から誰を選ぶか考えているのか?」

「ああ、そりゃ考えているさ。っていうか、俺がこの世界に来たのはそれが原因だと思うし」

「ほう?何か身に覚えがあるのか?」


 浩太、お前絶対にわかってて聞いてるよな?だが、ここではっきりさせておく意味でも話しておくか


「俺が10年前の世界から10年後であるこの世界に来て遊華に最初にあったんだが、その時の遊華は10年前とは違い、無愛想ではなく、素直に俺に接してきた。今じゃ俺に依存してるんじゃないか?と時々思う」

「で?」

「それでってわけじゃないが、俺がこの世界に来た原因と理由は遊華にあると思っている」

「ほう、そこまで解っていてどうして踏み込まない?」


 俺と遊華が他人なら迷わず踏み込むんだろうが、生憎俺と遊華は兄妹だ。いくら遊華が俺の事を好きと言っても兄妹である以上はそこから先に進めない。言い訳がましいが、決定打に欠けるし、香月や美月、あまり交流はないが、秋野さんと冬野さんの事も気がかりだ


「俺はまだ遊華の事を何も知らない。10年前に俺と遊華がほとんど会話していなかったり、遊華とすれ違う事が多かった。つまり、俺はちゃんと遊華と向き合う必要がある。この世界じゃ遊華だけじゃなく俺の周囲にいる異性とちゃんと向き合わなければならない。俺はそう思っている」


 向き合うにしても何かきっかけが必要だな。例えば、全員と2人きりになる機会とかがあればある程度はいろいろとわかると思うんだが……


「遊の考えはわかった。その上で言うがな」

「何だ?」

「お前の周囲にどれだけの異性がいるか知らんが、遊華ちゃんが1番の鬼門だぞ。いろんな意味で」


 浩太、意味深な事を言うな。ただでさえ俺は遊華の扱いでの親父や敬の含みのある言い方も突き止めなきゃいけないんだから。浩太が教えてくれるならそれはそれでいいが


「だよなぁ……せめて、俺が遊華を妹扱いした時の親父や敬の含みのある言い方に隠された何かがわかればいいんだが」


 浩太の言う通り、向き合う上での1番の鬼門は遊華かもしれない。関係さえはっきりすればなぁ……


「ふむ……こればっかりは俺が言ってもいいんだが、遊が自分で見つけなきゃ意味がないような……この問題だけは難しいな……」

「なんだ?浩太も知っているのか?」

「ああ、だがなぁ……答えを言うわけにはいかないが、ヒントくらいはやるよ」

「ヒント?」


 ヒントをやるって事は浩太も知っているようだ。っていうか、答えは教えてくれないのな。ヒントをくれるだけありがたいが


「ああ、俺から遊にやれるヒントは“遊と遊華ちゃんは普通の兄妹以上に特別な関係だ”って事くらいだな。後は親父さんに聞くなりして自分で考えるなりして自分で見つけな」


 浩太はまたコーヒーを啜った。俺と遊華が普通の兄妹以上に特別な関係か……俺が考えられる限りじゃ俺と遊華は実は兄妹じゃなくて従兄妹でした。とか?まさかな。


「わかった。俺のできる限りで考えてみるが、親父や敬は何ですぐに教えてくれないんだ?」

「そりゃ、親父さんは知らんが、敬は面白がって教えないんだろう」


 親父も俺を弄って面白がるところがあるが、敬も親父と同類だとは思わなかった。アイツ等はそういう連中だって何となくわかっていた。この際、あの連中の事は置いておこう。考えるだけ時間の無駄だ


「ところで浩太に聞きたい事があったんだ」

「何だ?遊華ちゃんの事か?」

「いや、遊華の事は保留にする」

「じゃあ、何だ?」

「明美さんの旧姓は?」


 俺はスゲーしょうもない事を聞いてる気がする。だが、前に聞きそびれたし、気になるしいいか


「明美さんの旧姓は佐藤だけど?」


 は?今の名字が佐藤で旧姓も佐藤ってコイツまさか……


「え?何?お前は同じ佐藤と結婚したって事か?」

「ああ、そうだけど?」


 こんな偶然ってあるんだな。俺は今、改めて偶然の恐ろしさというのを知った。


「偶然っていうか、運命ってわからんものだな」

「まぁな。俺も同姓と結婚するとは思わなかったよ」

「そりゃそうだ」


 まぁ、俺は本人が幸せなら別に同姓と結婚しようが、同性と付き合おうがいいんだがな


「質問はそれで終わりか?」

「いや、もう1つ聞きたい事があるんだ」

「何だ?」

「お前、俺を急に呼び出したが、明美さんと喧嘩でもしたのか?」


 この質問をした瞬間、浩太の動きが止まった。浩太の周囲の空気にピシッという音が聞こえたのは何でだろう?


「ゆ、ゆ、遊がな、な、何をい、い、言っているのかわ、わ、わからないな」


 浩太、動揺しすぎだと思うぞ。どれ、コイツが家を出てきた理由を当ててみよう。高校生カップルなら彼氏がエロ本持ってたとか、携帯やパソコンからエロ動画が見つかったとかだが、相手は同級生とはいえ大人だ。仕事もしている。考えられるのは休日デートに連れて行ってくれないとか、夫婦の営みがうまくいってないとかいろいろあるが……


「そんなに動揺してどうした?まさか、明美さんにキャバクラに行ったのがバレたとか?」

「…………」


 何で黙るんだ?まるで俺が言った事が本当に当たってるみたいじゃないか


「マジで?」

「……仕事の付き合いでな。言って名刺をもらったんだが、それをうっかり明美さんに見つかってしまってな」

「前もって伝えてなかったのかよ……」

「遅くなるとは伝えたんだが、まさか、キャバクラに連れてかれるとは思わなかった」


 浩太に非がないか?と聞かれれば無論、浩太に非があるが、それでも名刺くらい対策しとけよ……


「浩太、家に来るか?」

「ああ、よろしく頼む」


 お茶しに来たつもりが浩太を拾った件について。拾った理由が情けなさすぎる……いろんな意味で


「その前に電話していいか?」

「ああ」


 俺は浩太に一声掛けてから電話を手に取り、家族に電話を掛けようと思うんだが……誰に電話したもんかな……1番の悩みは誰に事情を話せば波風が立たないかを考えるのが悩みだ。香月は明美さんと知り合いだからダメだとして……遊華も違うか……美月だな。


 電話帳から美月の番号を出し電話を掛ける。美月ならば波風は立たないし、大騒ぎになる心配もない。何より他の2人に比べたら浩太へのダメージが少なくて済むのも美月だと思うし……


『もしもし、遊ちゃん?どうしたの?』

「あー、それが今日1人家に泊めたいんだけどいいかなと思って電話したんだけど……」

『あはは……私は構わないけど、すでに家に1人泊まりに来ている人いるんだけど……』

「それって、明美さん?」

『いや、私の友達なんだけど……』

「どうした?」

『その子、ご両親と喧嘩して家出した来たんだけど……』


 俺は美月に電話を掛けた事……いや、家族に電話した事を心の底から後悔した。というか、家に帰りたくないなぁ……家に帰る前から俺が家出したくなった


「わかった。今から友達と帰るからとりあえずそのお友達と待ってて」

『わかったよ~』


 俺は美月のと通話を終了させて浩太を見た。目の前の浩太は頭に?マークを浮かべているが、もう知るか。まぁ、家出る前に部屋に鍵を掛けてきたし勝手に入られることはないだろう


「浩太、一先ず家に帰るぞ」

「あ、ああ、それはいいが、何かあったのか?」

「いろんな意味で厄介な事になった」


 俺と浩太はそれぞれ自分の注文したコーヒーの代金を払い喫茶店を出た。俺と美月がそれぞれ家出した人間を家に招待するとは、とんだ厄日だな


「まぁ、成せばなるだ!気にするな、遊」


 お前は気にしろ。家には家出した大人がお前を含めて2人抱える事になるんだから……


「はぁ、俺は今回は家出人間に対しては不干渉を貫くかな」


 もう俺は厄介事には首を突っ込まない。というか、早く10年前に帰りたい。今日だけは元の世界が恋しくなった。解決しないといけない事を解決しないと帰れない事はわかっているが、言うだけ、思うだけなら許されるだろう。というか、許してほしい


「昼飯は各自で済ませているとして、問題は晩飯だな」


 目の前をズンズンと歩く浩太を見て頭が痛くなった。晩飯作るのボイコットしようかな……マジで……


 浩太はともかく、美月の友達は俺は会った事ないし、好みがわからない分いろいろとやりずらい。


「ま、何とかなるか」


 どうにでもなれ。今だけは家出した大人2人と家で待ち構える3姉妹の事は忘れてしまいたい。今日の浩太との話で俺自身にも厄介事が増えた気がする

今回は呼び出された遊が家出した大人を拾う話でした

この後、遊はどうなってしまうのか?それは明日にはわかると思います

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ