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夜と酒が人を変える件について

今回は夜から始まる話です

夜と酒は人を大胆にする?そんな話です

では、どうぞ

 いろいろあった女子会から2日後、俺は今、目の前の状況が理解できなかった。いや、理解する努力はしたよ?努力はしたんだが……人間、努力してもどうにもならない事ってあるよね?努力して何とかなる事もあるが……それを学んだ俺、藤堂遊は今……


「美月、何だ?この状況は?」

「さ、さぁ?」

「ゆ~う~」

「おにいちゃ~ん」


 酔っぱらった遊華と香月の介抱をしていた。コイツ等は何で酔っぱらってんの?


「だぁぁぁ!酒臭い!2人とも離れろぉぉぉぉ!」


 深夜にも関わらず俺は家中に響き渡るくらいの叫び声を上げた。


「ゆう……」

「おにいちゃん……」


 少し言い過ぎたか?だが、酒臭いままくっ付かれても嫌だし……ここは心を鬼しなきゃな


「遊ちゃん、いくらなんでも今のはちょっと言い過ぎだと思うよ……?」

「俺もそう思うが、何かあってからじゃ遅いだろ?」

「それはそうだけど……」


 美月に咎められた。美月の言う事も理解はできるが、俺は間違った事は言っていないつもりだ。家だからどんなに酔っぱらってもいいわけじゃないが、とりあえずはいい。だが、問題は外で酔っぱらった時に他人に迷惑をかけるのが大問題だ


「俺に迷惑をかけるのはできれば止めてほしいが、まぁ、いい。身内だからな。だが、外で飲んで他人に迷惑をかけるのが問題なんだ。解るな?」

「う、うん……」


 美月にも思うところがあるのか、それとも、身に覚えがあるのか狼狽えている


「おにいちゃんはゆうかがきらいなの?」

「あー、嫌いじゃない嫌いじゃない」


 酔っ払いの戯言にわざわざ本気で付き合う必要はない。言葉だけなら問題はない。人によっては言葉でも問題だが、俺が今、問題にするべきは言葉ではなく、行動だ


「ゆうはわたしのこともきらいなんだ……」


 香月もかよ……勘弁してくれよ……はぁ……


「嫌いじゃないから安心しろ」


 この2人酔ったらめんどくせぇな……


「遊ちゃん、とりあえずこの2人にお水飲ませよっか」

「だな。このままだとめんどくさい」


 美月と俺はとりあえず遊華と香月に水を飲ませる事を決意する。じゃないとめんどくさいし……


「何で遊華たちはこんな状態になったんだか」


 今更ながら俺は遊華たちがこんな状態になった原因について考える。が、遊華と香月は仕事があったため、心当たりがない。いや、正確には俺には解らないと言った方が正しい


「美月は何か思い当たる節はないか?」

「ん~、遊華ちゃんと香月ちゃんが今日、アフレコしているアニメが最終回の収録が終わって打ち上げしていた事しか私には思い当たらないなぁ」


 間違いなくそれじゃん!打ち上げだからってこんなになるまで飲むか?普通……


「間違いなくそれだな」


 遊華と香月がベロベロになった原因はわかった。だが、酔った原因がわかったが、今度はどうやって帰宅したか?がわからなくなった。


「美月、俺は遊華たちが帰って来てからしか知らんが、どうやって帰って来たんだ?」


 ベロベロになった遊華と香月がとてもじゃないが自力で家まで帰って来られるとは思わない。


「遊華ちゃんたちはタクシーを使って帰って来たよ」


 タクシーの運ちゃんお疲れ様です。この酔っ払い2人を相手によく無事で済んだな


「タクシーの中でも暴れてたんじゃないのか……」

「いや、タクシーの中と家に帰って来た時は大人しかったよ?」

「は?俺が呼ばれて来た時は既にこの状態だったぞ?」

「遊ちゃん、香月ちゃんも遊華ちゃんも、もちろん、私もだけど好きな人には甘えたいし甘えられたい。自分のありのままを見てほしいって思うんだよ?」

「それがあの酔った状態というわけか」


 こんな美人3人に好かれて嬉しくない男はいないだろう。しかし、ものには限度というものがあるだろうし、好かれたいなら酒臭い状態で迫ってくるのはどうかと思うぞ?


「遊ちゃんは私たちの事どう思ってるの?」

「どうって?」

「恋愛対象としてどう思っているの?って話だよ」


 わかってはいたが、この質問はきついものがある。10年前から来てなかったら俺も素直に選べたかもしれないし、こんなに悩む事もなかっただろう。だが、ここは10年前じゃなく10年後だ。


「優柔不断だと思うが、俺にはまだ決められない。無論、美月たちに魅力がないわけじゃないぞ」

「そっか……」


 美月、そんな悲しそうな顔をしないでくれよ……


「さぁ、遊華と香月に水を持って行こう」


 俺は話題を反らすようにして遊華たちに持って行く水を用意した。


「うん……そうだね」


 悪いな、美月。答えを出さなきゃいけないとは思っているが、今は酔っ払いを何とかする方が俺にとっては重要なんだ。


「だが、美月」

「ん?何かな?遊ちゃん」

「俺は美月たちの誰と付き合っても幸せだと思うぞ」

「え?」


 美月が目を丸くしているが、例えもう1回と言われてももう言わないぞ。


「ほら、遊華たちが待ってるから行くぞ」

「あ、うん」


 2人分の水を持って美月と共に遊華たちの待つリビングに戻った。


「ほら、2人とも水持ってきたぞ」

「うう~ん……おにいちゃ~ん……」

「ゆ~う~……」


 ダメだ潰れかけてる……遊華も香月も酒が弱いんだか強いんだかわからんな


「美月、さっきの話なんだが」

「うん……」

「この酔っ払い2人を見て誰と付き合うとか考えられると思うか?」

「うん、この状況じゃ無理だね」


 美月、理解が早くて何よりだ。今の俺にとって唯一の救いは美月が酔っぱらってない事だけだ


「結局、この2人はそのまま寝落ちしたか」

「あ、あはは……」


 美月は苦笑いしているだけだった。だが、またも気になる事が増えたな。いい機会だ、美月に聞いてみるか。その前に遊華と香月をそれぞれの部屋へ運ぼう


「さて、遊華と香月をそれぞれの部屋へ運ぼう」


 俺は遊華をおぶり部屋へ運ぼうとした────


「待って!遊ちゃん!」


 が、美月に止められてしまった。何なんだ?一体


「どうした?美月」

「遊華ちゃんと香月ちゃんを遊ちゃんの部屋へ運んでくれないかな?」

「何で?」

「訳は運んでから話すから……お願い」


 前々から思っていたが、俺にものを頼む時にいちいち泣きそうにならんでも断らないのに……


「そんな泣きそうにならんでも部屋に連れて行くくらい構わない」

「ありがと……」


 美月の提案により遊華と香月を俺の部屋へと運ぶ事にした


「さて、遊華と香月をここへ運んだ理由を話してもらおうか」


 遊華と香月を俺の部屋へ運び終え、リビングに戻るのもめんどうだという事になり、俺の部屋で美月と2人でコーヒーを飲みながら一息ついていた


「うん、まず何から話そうかな」

「話しやすいところからでいいぞ?」

「じゃあ、遊華ちゃんと香月ちゃんがあんなに酔ったのは久しぶりなんだ。特に遊華ちゃんはね」

「どういう意味だ?」


 香月も遊華も20歳はとうの昔に超えている。20歳を迎えた時に飲酒しない人もいるだろうが、遊華も香月も前に見た時もそうだが、今回が初めてではないように見える


「前は私も酔っぱらってたけど、遊ちゃんが帰って来る前までは遊華ちゃんはお酒を飲んではよく泣いてたんだよ」


 前に見た時と今回見た時の遊華とはずいぶん違うな。前に見た時も今回も遊華は常に笑っていた。それも、俺に抱き着いてくるほどにだ


「とてもじゃないが、想像できないな」

「そうだろうね。原因は遊ちゃんだし」

「俺が原因と言う事は……やっぱり、俺がいなくなった事に関係があるのか?」

「そうだよ、遊ちゃんがいなくなって相当寂しかったみたい」


 俺が10年後であるこの世界に来る前までは遊華は泣き上戸だったが、俺が10年後であるこの世界に来て遊華と再会してからは笑い上戸になったという訳か


「察するに遊華は酒に酔ったら俺に会いたいと毎回泣いてた。そういう解釈でいいのか?」

「うん、実際その通りだったよ。遊華ちゃんは酔う度に泣いてた。遊ちゃんに会いたいってね……後は、遊ちゃんに優しくしておけばよかったって泣いてたよ」


 俺にはわからないが、遊華が俺に冷たくしていたのは中学生女子にありがちな異性の家族に冷たくする時期だと思っていたから、遊華が俺に冷たくしていた事をそんなに思いつめていたとは思わなかった


「なるほどな。遊華がどうしてテンションが高かったのかは大体わかった。だが、それと遊華と香月をここへ運ぶ理由がわからない」


 遊華が後悔していた事はわかったが、それと俺の部屋へ運ぶのとどう関係があるっていうんだ?


「私もそうだけど、目が覚めた時に遊ちゃんがいないと不安になるんだよ。それは遊華ちゃんだけじゃないんだよ」

「酒臭いのは勘弁してくれよ……」


 美月は酒を1滴も飲んでいない事は俺がよく知っているし、故意に人を不安にさせる趣味は俺にはない。


「そこは気を付けるよ……だから、私たちと一緒に寝てくれないかな?」

「無理だな」

「そんな……」


 美月が絶望しきった表情をしている。だが、ベッドで全員が寝るのはさすがに無理だし、落ちたらシャレにならない


「当たり前だろ?ベッドで全員が寝れるわけないだろ」

「え?」

「何を意外そうな顔をしているんだ?」

「だって無理だなって言うから」


 あー、さっき説明がめんどくさくてそんな事を言ったなぁ……


「今日の俺は酒癖の悪い義姉と妹のせいで疲れているんだ。説明が雑になってしまったのは謝る」

「うん……」

「布団を持ってくるの手伝ってくれ」

「うん!」


 美月に香月に遊華、10年前の世界にいたら気づかなかったが、俺は身内の異性に甘いようだ


「運び終えたな。まぁ、四人分だしそんなに時間は掛からなかったからいいか」

「遊ちゃんにもう1つお願いがあるんだけど、いいかな?」

「何だ?」

「これから毎日一緒に寝たいんだけどいいかな?」


 この日、夜の闇のせいもあるのだろうか、美月が毎日一緒に寝たいと言ってきた。教訓、夜は人を大胆に変えるようです

今回は夜から始まる話でした。

夜と酒は人を大胆にしたり、人の弱い部分をさらけ出すようです

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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