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親父の職業が発覚した件について

今回は遊斗の職業がわかる話です

遊斗が家に理由の話は今回で終わりになります

さて、遊斗はどんな職業なんでしょう

では、どうぞ

 父親の職業が気になる。そんな事を気にする年代は普通の人ならとっくの昔に過ぎ去ったと思う。俺の場合は幼い頃から親父は家にいない事が多かったし、それに慣れてきていないのが当たり前みたいな感覚になっていた。今更になって気にするのも変な話だ。で、初めて来た親父の仕事部屋は……


「父さん……」

「ん?何?遊、どうしたの?」

「部屋汚いな」


 予想以上に汚かった。そりゃもう何日くらい掃除してないんだ?


「……遊、久々に会った父親に最初に言う事それ?」

「黙れ、俺の訪問時期を羽月さんと賭けてたそうじゃないか」


 親父には何も言わせない。それに、部屋が汚いのは事実だろうが


「遊、何でも好きな物を言いなさい。今日は奢ってあげよう」


 コイツ、話を変えやがった……だが、奢ってくれるって言われた以上は全力でご馳走になろう


「そうか、奢ってくれるのか。じゃあ、特上の寿司でも奢ってもらおうか」

「……もう少し安いものにしない?」


 何でも奢るって言っておいていざ注文すると変えない?とか……まぁ、何でも奢ってもらえるとは思ってなかったが、俺も悪ふざけが過ぎたか


「特上の寿司は冗談として、父さんは仕事は何してるんだよ?」

「一応、作家をやらせてもらってるよ」

「へぇ、父さんって作家だったのか」


 俺は初めて親父の職業を知った。職業自体に驚きはしないが、どんな作品があるのかは気になるな


「ちなみに父さんの作品ってどんなのなんだ?」

「そ、それは……秘密だよ」


 親父よ、俺はどんな作品かを聞いたんだが、なぜ目を反らす?


「なぜ目を反らす?後ろめたい事でもあるのか?」

「い、いや……別に」


 別に興味はないが、隠されると余計に気になるな


「そうか……じゃあ、見せられるよな?」

「…………」


 親父は完全に沈黙してしまった。そうか、見せられないか。


「まぁ、父さんが例え兄妹での恋愛小説を書いていようが、その内容がヤンデレ化した妹に兄が殺される結末だったり、展開だったりしても俺は何も言わないぞ」


 親父は滝のように汗を流している。全部、当てずっぽうで言ったのに親父の身体は正直なんだな親父……


「あら、遊君。よく遊斗が書いてる小説の内容わかったわね」


 部屋に入ってきた羽月さんは人数分のコーヒーの入ったマグカップと人数分の砂糖とミルクをお盆に乗せてやってきた


「羽月さん、俺は当てずっぽうで言ったんですが……本当に?」

「ええ、本当よ。遊君って遊斗の小説を読んだ事ないの?」

「はい……父さんが作家っていう事も初めて知ったくらいですから」

「そう、じゃあ、これ読んでみて」

「あ、馬鹿!」


 親父は本を受け取った俺を止めようとしたが、既に本は俺の手の中だ。


「…………」

「ど、どうかな?遊?面白かった?」

「ゆ、遊君?感想を言ってあげて?ね?」


 親父の書いた小説を流し読みだが、内容が内容だけに言葉が出なかった。とりあえず、一言で言うなら……


「父さん……いや、親父」

「は、はい」

「俺と遊華をどんな目で見てんだ?」


 感想というよりは親父の俺と遊華に対する見方が偏っている事はわかった


「い、いや、どんなって……」

「何で俺に似た主人公と遊華に似たヒロインがイチャイチャしたり、新婚夫婦よろしくな感じになってるんだよ!しかも、実の兄妹に何させてんだ!?」

「ほ、ほら、創作は自由だし……」

「いや、確かに創作は自由だが、何で俺にこれを見せた?あれか?嫌がらせか?あ?」


 俺は親父の胸倉を掴み、カツアゲするヤンキーよろしくな状態だった。あくまで小説の中のヤンキー的な表現であり、実際のヤンキーは違うと俺は信じている


「ゆ、遊君、お、落ち着いて?ね?」


 羽月さんが俺を宥めようとしているが、これだけは言っておかなければならない


「今まで俺たちの生活は親父のこの小説のおかけで成り立っていたからあまり言いたくはないが、これだけは言っておくぞ」

「な、何だい?遊」

「俺は実妹に手を出す趣味はない」


 創作は自由だ。だが、主人公のモデルが俺ならばヒロインの妹は実妹じゃなくて、せめて義妹にしてほしかった


「そうか……じゃあ、遊は遊華が義妹なら手を出すのかい?」


 何なんだ?そのありえないもしもの話は。俺に何を求めているんだ?


「さぁな。その時にならなきゃわからないし、俺は少なくとも誰かと付き合うとか考えた事はない」

「遊君……」

「遊……」


 何だ?何で2人とも俺を心配そうな目で見るんだ?


「2人ともどうしたんだ?そんな心配そうな目で俺を見て」

「遊って異性に興味ないの?」

「遊君、香月と美月、遊華ちゃんには異性としての魅力を感じてないの?」

「おい、何で香月や美月や遊華が出てきたか聞こうか?」


 この2人は自分の息子が娘たちを恋愛対象として見てたらまずいという事がわからんのか?まぁ、2人は義姉だし、血は繋がってないから問題ないが……


「だって、遊君の近くの異性って香月たちしかいないでしょ?」


 いやいや、探せば他にもいるはずだ……今はそれは置いておこう


「で、親父は何で俺が異性に興味ないって思うんだ?」

「だって、異性と付き合う気ない……つまり、同性ならOK!」


 羽月さんはいいとして、コイツは1回頭カチ割ってやろうか?


「自分の父親が義母もしくは母に異性関係で酷い目に遭わされてるの見たら考えると思うが?」

「それに関しては僕にも原因はあると思うけど、羽月が遊に騙されて僕が酷い目に遭ってる事もある事を忘れてない?」

「そこに関しては否定はしない」


 親父が酷い目に遭っている原因は俺にもあるというのは自分でも自覚している


「まぁ、僕は遊が誰と付き合ってもいいよ」


 親父は俺の恋愛に対しては何も言わないのな。


「あ、そう。じゃあ、適当に彼女作るわ」


 まぁ、俺に彼女ができたらの話だがな。


「遊君……1ついい?」

「何ですか?羽月さん」

「今の会話なんだけど、香月たちに筒抜け」


 もう羽月さんを羽月さんって呼ぶ事も母と呼ぶ努力するのもやめようかな。っていうか、これ俺が酷い目に遭うパターンじゃね?


『遊……帰ったら覚悟してね?』

『遊ちゃん、今夜は寝かさないよ』

『お兄ちゃん、外で彼女作ったら許さない……私しか見れないようにしてあげる』


 俺の目の前のおばさんは電話の通話状態画面を見せつけてきた。そして、俺の死刑が確定した瞬間でもあった


「遊、ちょっといいかい?」

「何だ?親父?俺は今、身内に処刑されるという絶望に打ちひしがれているんだが?」

「遊が今使っている地下の部屋なんだけどね」

「何だ?部屋の話なら後に──────」

「庭にその部屋の隠し扉があるんだ」

「は?」


 意外だ。あの部屋に隠し扉なんてあったのか……よくそんな金あったな


 親父は俺にこっそり耳打ちで教えてくれた。親父、その扉使ってたんだな……それはそうと気になる事があったんだった


「なぁ、親父」

「どうしたの?遊?」

「作家の仕事するなら家でもできただろうに何でマンションなんか借りてるんだ?」


 10年前からそうだったのかもしれないが、この際だから聞いてみよう


「家で仕事しているよりもこうしてマンションとか別の場所で仕事してる方がかっこよくない?」


 何だ?その子供みたいな理論は?まぁ、そっちの方が作家としてはいいんだろうけど


「いや、ぶっちゃけどうでもいい」

「酷くない!?」


 いや、酷くはないだろ。価値観なんか人それぞれだし


「酷いも何も別に興味ないし」

「ぐすん……遊が冷たい」


 オッサンがぐすんとか言うな。気色悪い


「ところで遊君」


 今度は羽月さんが声を掛けてきた


「何ですか?羽月さん?」

「この部屋の掃除してってくれない?」


 俺は家政婦じゃないぞ。しかも、大人2人もいて掃除の1つもしてないのかい


「お断りします」


 俺はNOと言える日本人なんだ。悪いな羽月さん


「何で!?」

「自分の父親と義理とはいえ母親の夫婦の事情の後のゴミとか見つけたら嫌なんで」


 さすがに親父には24歳の娘が羽月さんには26歳と27歳の娘がいる夫婦だから自重してくれているとは思うが……


「そんなのないよ!?」

「とにかく、掃除は自分でやってください」


 そもそも出先に来てまで家事なんてしたくないし。はぁ、どっかに俺が安心して付き合える女の人いないかなぁ……


「まぁ、掃除は冗談だけどね。遊斗は自分の部屋を勝手に掃除されるの嫌みたいだし」


 冗談なら最初から言うな。本気でもやらないけどな


「何もないなら俺はそろそろ帰ります」

「そう、じゃあ、私がお見送りするわね。遊斗は執筆し始めたらしばらくはパソコンから離れないし」


 俺は羽月さんに見送られ、親父の部屋を出た。


「親父が作家か……いつも家にいない理由はこれではっきりしたな」


 親父と羽月さんがいつも家にいない理由ははっきりした。忘れていたが、俺は家に帰るともれなく香月たちから何されるかわからない。親父から教えてもらった隠し扉を使うか


 なんて考えてた事もあった。俺は今、家に入れないでいる。なぜなら……


「「「遅い……」」」


 遊華、香月、美月の3人が家の前で待ち構えていた


「待ち構えているのは……まぁ、いい。問題なのは3人とも目がすわってる事だ。家に帰りたくないな」


 しばらくはどっかで時間を潰そう。それか、今日は敬か浩太の家に泊めてもらおう。


「さて、ほとぼりが冷めるまでは家に近寄らないようにしよう」


 俺は来た道を引き返し、そのまま駅前に向かう


「触らぬ神に祟りなしだ。今のアイツ等に構うと俺の精神に大変よろしくない」

「へぇ~、私たちは遊の精神によくないんだ?」

「…………」


 俺の背後から香月の声が聞こえた。まぁ、家とは逆方向を向いてるから背後なのは当たり前だが


「お兄ちゃん、家に帰ろう?」


 遊華の手が俺の肩に置かれる。家に帰るのに俺の肩を力一杯掴む必要はないと思うんだが


「遊ちゃん、今日は私たちと寝るか、私たちと愛し合うかのどちらかなんだけど、どっちがいい?」


 美月の声がいつもより冷たく聞こえる。俺が1人で平和な夜を過ごすという選択肢はないのか?


「俺が平和な夜を過ごすって選択は?」

「「「ないよ」」」


 たった今、俺がいろんな意味で究極の2択を突き付けられた。



今回は遊斗の職業が発覚する話でした

遊斗にも少年のような心があったんですねぇ~

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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