1人で海に来たはずが遊華と行動を共にする件について
今回の話はあえて言うならどうしてこうなった。という話です
遊の周囲の人間ってノリがいいと言うか・・・なんと言うか・・・
では、どうぞ
魔が差したとか、つい勢いでとか、そんな事誰でもあると思う。何が言いたいかと言うとだな、俺は遠出がしたくなり海に来たわけなんだが、偶然にもその海で遊華に会ってしまった。そしてなぜか俺は遊華を抱きしめてしまった。今日の俺はどうかしてると思う……自分が自分じゃないみたいだ
「何で俺はあんな事を……」
俺は遊華を抱きしめた後、激しい自己嫌悪に陥った。
「お兄ちゃんどしたの?そんなに悶えて」
「放っておいてくれ。俺は今、勢いで行動した自分の愚かさに心底嫌気がさしているところだ」
「ふ~ん、お兄ちゃんは私を抱きしめる事が愚かな事だって言うんだ?」
そういう話じゃないぞ遊華、俺は何でこんな事をしてしまったのか?って後悔しているんだよ
「遊華の俺が寝ている間にした事よりはマシだろうが……」
「────!?」
遊華は突然固まりだしてしまった。しかも笑顔で
「ヤベッ、口が滑った」
俺は慌てて自分の口を塞いだが、しかし……
「ねぇ?お兄ちゃん?」
「は、はい」
「お兄ちゃんは私の行動の何を知っているのかな?」
「な、何も知らないぞ」
「お兄ちゃん正直に言おうね?」
時すでに遅し!遊華は追及するき満々なようだ
「正直に何を言うんだ?」
「お兄ちゃんが知っている私の行動を全てだよ」
「遊華、愛してる」
「うん、私も愛してる。だから、正直に言おうね?」
誤魔化しきれなかった。誤魔化しきれるとも思わなかったがな
「俺の部屋には隠しカメラが付いてるからな。俺が知っていても不思議はないだろ」
「なっ!?」
遊華は心底驚いているようだが、俺はお前の行動にビックリなんだが?
「い……」
「い?」
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
遊華は悲鳴を上げながら走り去って行った。
「遊華……カメラを仕掛けたのも口を滑らしてしまったのも俺だが、同情する」
走り去った遊華を追う事もせずに俺はその場に寝転がった。
「…………」
数分後、遊華は無言で戻ってきた。俺なら恥ずかしくて戻って来れないが
「おう、戻って来たのか。遊華」
「……何で追いかけてきてくれなかったの?」
遊華が涙目で俺を睨みつけながら訪ねてきた
「お前は自分の恥を晒した相手を追いかけてどんな言葉をかけるんだ?」
俺が遊華の立場なら追いかけてこられた方が逆に困ると思うが
「……考えてなかった」
遊華よ、考えてからものを言おうな。
「はぁ、俺が今日見たことはさっきの含めて全部忘れてやる。だから元気出せよ」
遊華の行動はカメラの映像も今日見た悲鳴を上げて走り去った事も全部忘れる。これで多分解決するだろう
「ダメ!」
遊華がいきなり叫んだが、何がダメなんだ?
「何が?」
「今日見た事もお兄ちゃんが寝ている間に私がした事も忘れないで」
「何で?恥ずかしい事なんだろ?忘れた方が遊華の為になるんじゃ……」
「確かに恥ずかしいけど、お兄ちゃんが見た映像は全部私の本心だから。忘れないで」
遊華は切なげな表情を浮かべながら俺を見つめてくる
「はぁ、わかったよ。今日見た事は紛れもない遊華の本心で、遊華は本気だって事でいいんだな?」
「うん」
思い起こせば俺は全部投げ出して海に来たはずなのに何で遊華が本気かどうかを確かめてんの?
「それより休憩はもういいのか?」
「あ、そろそろ始まる時間だ」
「そうか、頑張れよ」
俺は遊華が仕事に行くのを見送るつもりだった。だが……
「何言ってんの?お兄ちゃんも行くんだよ?」
「はい?俺は今日プライベートで来てんだけど?」
「問答無用!」
こうして俺は遊華に引きずられる形で半ば強引に収録現場に連れて行かれた
「連れて行かれても俺はやる事がないんだがなぁ……」
「お兄ちゃんは私の仕事を見ているだけでいいの!」
遊華さん、あなたは参観日ではしゃぐ子供ですか?保護者は俺ですか?
あまりにも俺のやる事がないのでこの後の話をするが、俺はなぜかスタッフさん一同に歓迎されたが、さすがに悪いと思って俺1人で帰ろうとしたが、その場にいた全員に止められてしまった。遊華の収録は無事に終わり、現在────
「えへへ~、お兄ちゃんと一緒お兄ちゃんと一緒」
遊華が上機嫌で俺にべったりくっ付いている。公共の乗り物だったら大変な事になってたな
「遊華、マネージャーさんもいるし、あまりべったりなのもどうかと思うんだが……」
遊華に兄として一応は人前である事を注意しておくが……
「私の事は気になさらずに続けてください。むしろ、もっとやれ」
バックミラー越しに目を光らせるマネージャーさんだが、最後はほぼ願望じゃねーか!しかも、社会人の女性が人前でそんな事言っていいのか!?
「だってさ、お兄ちゃん」
遊華はマネージャーという味方を得たせいか、上機嫌になっている
「もういい、勝手にしろ……」
もう諦めた。同僚の間では遊華が俺の事大好きって言うのは知られているみたいだし。
「うん、好きにするね!おにいちゃ~ん」
これってファンに見せて大丈夫なんだろうか?と言うくらいにデレデレで甘えてくる遊華
「マネージャーさん、これっていいんでしょうか?」
一応確認しておこう。諸々アウトになる前に
「いいんじゃないでしょうか。遊華ちゃんのお兄様好きはファンの間では有名な話ですし」
いいんだ……というか、有名なんだ……遊華のこれって
「イベントなんかだとお兄ちゃんを出せって言われる事も多々あるし」
遊華が俺の腕に密着しながら補足してくれた補足してくれた
「イベントに一般人出しちゃ拙いだろ」
「別にいいんじゃない?ファンだけじゃなくてスタッフもお兄ちゃんを出せって言う人いるし」
この世界に来て俺を取り巻く環境及び遊華を始めとする人間がおかしいのはもう慣れた。
「あー、気が向いたら遊華の出るイベントに出るわ」
こんなやりとりも悪くない。俺も相当だな……
「お兄ちゃん……」
遊華が俺に熱い視線を向けてきた。そして……
「お兄ちゃん、愛してる……ん~」
俺への愛を囁きながら唇を突きだしてきた。
「俺も遊華を愛しているが、キスはしないよ?」
「いや、そこはしろよ」
マネージャーさんが何を求めていて何を言いたいのかわからない
「キスしてくれないなら、遊華をナデナデして?」
遊華は完璧に幼児退行しているな……これじゃ香月とほぼ変わらんじゃないか
「へいへい」
俺は家の前に着くまで遊華の頭を撫で続けた。おかげで手が痛いんだけど
「さぁ、着きましたよ」
マネージャーさんから声が掛かり、俺と遊華は礼を言ってから車を降りる
「お疲れ様でした」
遊華が仕事モードで挨拶をし、俺も軽く一礼してから家に入った
「ただいま~」
遊華がいつもと変わらない様子で帰宅するのに対し、俺は……
「た、ただいま」
連絡も取れない状態だったので、心配をかけてしまったんじゃないか?という不安と久々の遊華の甘えっぷりに疲れたの半分と言う状態での帰宅になった。
「あ、2人ともおかえり~」
出迎えてくれた美月は普段と何ら変わらない状態だった
「遊ちゃんは今日1日は遊華ちゃんと一緒だったんだよね」
なぜか俺は今日1日遊華と一緒にいたことになっている
「うん、お兄ちゃんは今日は私と1日中一緒にいたよ」
ひょっとして遊華は俺が唐突に海に行きたくなって海に行った事を隠してくれてるんじゃ……
「そっか……じゃあ、明日は私と1日中一緒にいようね!」
どうしてそうなるんだ?
「ダメ!お兄ちゃんは明日も私と1日中一緒にいるの!」
遊華、反論してくれるのは嬉しいが、そうじゃないだろうが
「何で!?遊華ちゃんは今日1日遊ちゃんと一緒にいたからいいでしょ!?」
美月も美月で何言ってんだ?
「遊ちゃんは私といるの!」
「違う!お兄ちゃんは私といるの!」
俺をよそに2人の言い争いはヒートアップしていっているが、香月はどうした?
「なぁ、2人とも」
「「何!?」」
律儀にも言い争いを止めて俺に反応してくれている辺りはこの2人は俺の存在を忘れていないんだな
「香月はどうした?」
「香月ちゃんは撮影で地方に行ってるよ!」
「そうか、帰りはいつになりそうだって?」
「お義姉ちゃんの帰りは明後日だよ!」
香月は地方での撮影で帰りは明後日か。羽月さんは今日は親父のところに泊まるだろうし……
「2人とも明日オフなら3人でいれるんだろうけど」
「「それだ!」」
俺が何気なく呟いた一言に反応する2人の様子はまるでビンゴ大会に来ている子供の様だった
「今日は疲れたから部屋に戻るな」
俺は自室に戻るが、なぜか遊華と美月もついてきた。
「「…………」」
なぜ無言で着いてくる?別に入れない理由はないから入室拒否はしないが
「2人とも何で無言?」
「「べ、別に……」」
何か歯切れが悪いな?今日は疲れたから深く突っ込む気力もない
「そ、そうだ、お兄ちゃんコーヒー飲む?」
「あ、ああ……」
「美月お義姉ちゃんは?」
「私も飲む~」
「そ、そう、じゃあ淹れてくるね」
遊華はキッチンに入って行った
「私は遊華ちゃんを手伝ってくるよ~」
美月は遊華を手伝う為にキッチンに入って行くが、何か言い争っているような、そうでもないようなそんな声が聞こえてくる
「あの2人は一体何をそんなにコーヒー1杯淹れるのにテンションを上げているんだ?」
俺が待つ事数分が経った。何か忘れているような気がするが、後は寝るだけだ。思い出す事でもないだろう
「お待たせ、お兄ちゃん」
「ごめんね~ちょっと手間取っちゃって」
遊華と美月がコーヒーを持って戻ってきた
「はい、遊ちゃん」
「おお、ありがとう」
俺は美月からコーヒーを受け取り一口啜る
「お兄ちゃん」
「遊ちゃん」
「何だ?」
「「今コーヒー飲んだよね?」」
「あ、ああ。それがどうかしたか?」
「「別に」」
遊華と美月がニヤニヤしているが、本当に何なんだ?
「何か眠くなってきたな」
コーヒーを飲んだ後で急激に眠気が襲ってきた。
「お兄ちゃん」
「遊ちゃん」
「「おやすみなさい」」
遊華と美月がニヤニヤしていた理由はこれか……前回俺が自分に使った睡眠薬を遊華たちに盛られてしまった。という事か。まぁ、何をしようと隠しカメラは全部作動しているから問題はないが
「お、お前ら……」
俺の意識はここで堕ちる事となった。まさか、また睡眠薬を飲む羽目になるとは……
今回は遊が1人になりに来たはずが・・・なんでこうなった?と言う話でした
最後の方は遊が自分に使った睡眠薬を遊華と美月に利用される羽目になるとは・・・
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました