俺が遊華を試してみる件について
今回は遊が遊華を試してみる話です。
試すって言っても心理テストとかそう言ったものではありません
では、どうぞ
浩太からもらった資料を読み、俺が未来に来た理由と意味が何となくわかった俺だが、1つだけどうしてもわからない事があった。それは、俺をこの世界に呼ぶほど俺に何等かの想いを抱く人物だ。資料の中には恨みでなんて事も書いてあったな。とりあえず、1番怪しそうな遊華を呼んでみる事にした
「適当に座っててくれ。飲み物もってくるから」
「うん、わかった。あ、私はコーヒーをお願い」
「了解」
俺は遊華と自分の分のコーヒーを淹れる為にキッチンに向かう。遊華ってコーヒーはブラック派だっけ?
「遊華、砂糖とミルクは?」
キッチンから遊華に砂糖とミルクの確認をする。こうしてみると俺は遊華の好みをほとんど知らないような気もする
「砂糖もミルクもいらないよ」
遊華は砂糖もミルクも入れて飲まないのか……俺も普段はコーヒーはブラックで飲むが、今回は特別だ
「ほらよ」
俺は遊華にコーヒーを渡し、遊華の向かい側に座る。さて、この後が問題だな……
「うんありがと」
遊華はコーヒーを息で冷ましながら飲んでいるが、この顔だけ見ると俺よりも年下じゃないかと思うのは気のせいか?
「俺は今日は砂糖を入れてみるか」
「珍しいね?いつもブラックで飲むお兄ちゃんが砂糖を入れるなんて」
「ああ、たまにはな」
口では砂糖を入れて飲むなんて言っているが、これは砂糖じゃない。睡眠薬だ。本来なら薬を盛るのは相手に対してなんだが、今回の俺は違う。自分で自分に睡眠薬を盛るのだ
「それにしても、こうしてお兄ちゃんと密室で2人きりって今までなかったじゃん?」
「いや、密室で2人きりの状況はあったが、完全に閉鎖された密室に2人っきりは初めてだな」
「普通の密室と何が違うの?」
俺はコーヒーを一口飲む。カフェインが欲しいとかそんなんじゃない
「いつでも第三者が入って来れる状況か否かだ。今までは誰がいつ入って来てもおかしくない密室での2人きりだったが、今は遊華と俺以外は仕事で家にいない。加えてこの部屋は家に誰かがいても中には入れないしな」
「そう言われるといろいろ違うんだね」
遊華は納得したような表情で頷いていた。偉そうに言ってみたが、俺も実際は普通の密室との違いは知らないし、密室に普通も何もあったもんじゃないと思う
「まぁ、遊華は元が素直じゃなかったからな。俺と2人きりでこうして話す機会もなかったもんな」
「うっさいな。お兄ちゃんはいちいち人が気にしてる事を言って楽しい?」
「正直、滅茶苦茶楽しい」
「ふん!」
「イデッ!」
遊華に脛を蹴られてしまった。お兄ちゃん、暴力に訴えるのはよくないと思うんだ
「まぁ、2人っきりになる機会なんてそうそうないか。香月や美月もいるし」
「うん、そうだね」
俺と遊華は互いにコーヒーに口を付けた。そろそろ睡眠薬が効いてくる頃か?
「ふわぁぁぁ」
「どうしたの?お兄ちゃん?」
欠伸をした俺を心配してだろうか、遊華が顔を覗かせてきた
「疲れたのかな……何か眠くなってきた」
「そう、眠いなら寝てもいいよ?」
「そうか、じゃあ、俺は寝るが、遊華に1つ頼んでいいか?」
「何?お兄ちゃん?」
「寝ている間ここにいてくれないか?」
確証はないが、遊華は俺の頼みを断らないはず。もう1度言うが確証はない
「う、うん、それはいいけど、急にどうしたの?」
マズイ、遊華が若干怪しんでる……こんな事態も予想しといてよかった
「遊華に傍にいてほしいんだ。ダメか?」
「お兄ちゃんがそこまで言うなら傍にいるよ」
「悪いな、せっかくのオフなのに」
「ううん、お兄ちゃんが私を必要としてくれているだけで嬉しいから気にしないで」
そろそろ眠気がピークを迎えようとしている。俺が寝ている間に遊華がどんな行動をするか見ものだな
「ごめん、もう限界だからベッドに行くわ」
「大丈夫?フラフラしてるけど」
「あ、ああ、大丈夫だ」
俺は遊華に支えられる形でベッドに向かった。
「お兄ちゃん、本当に大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
俺はベッドまで辿りついた途端に倒れ込んだ。どうやら睡眠薬が効き過ぎたようだ
「お兄ちゃん!?」
「大丈夫、大丈夫。ちょっと寝るだけだから」
睡眠薬が効き過ぎた為、俺はすぐに眠りに入る事ができた
これで俺が未来に来た理由と意味の手がかりが見つかるといいが……これでダメなら地道に探すか、せめて敬か親父に妹とか実妹って言った時の含みのある言い方の理由を聞こう……
「おやすみ、お兄ちゃん」
遊華の声を最後に俺の意識は本格的に堕ちた。カメラに何が写っているか楽しみだな
あれからどれくらいの時間が経っただろうか?とりあえず、俺の身辺で変わったところを確認しよう
「あ、お兄ちゃん、起きた?」
「ああ、おはよう。遊華」
「おはよう、お兄ちゃん」
俺の身辺にも遊華にも特に変わった様子はない。後はカメラの確認だが、遊華がいる今の状態ではそれは困難だ
「遊華、今何時だ?」
「もう5時過ぎだよ」
どうやら俺は2~3時間程眠っていたらしい。カメラの映像を確認する前に遊華本人に俺が寝ている間に何をしていたか聞いてみるか
「遊華は俺が寝ている間は退屈してなかったか?」
「ううん、いろいろやる事あったし、別に退屈じゃなかったよ?」
「具体的には何を?」
「台本の読み合わせとか、今度やるアニメの原作の小説を読んだりとか」
職業を考えると普通だし、俺が未来に来た理由や意味に繋がる事は特にないか
「遊華は仕事熱心なんだな」
「そんな事ないよ。原作知らない状態だと自分の演じるキャラに入り込めないし」
「そんなもんかねぇ……」
「そんなもんだよ」
この後も俺と遊華は当たり障りのない話をして2人きりの時間を過ごした
「さて、そろそろ香月たちが帰ってくるし、リビングで飯の準備でもするか」
「うん!」
俺と遊華は2人でキッチンに向かい、夕食の準備に取り掛かる事にした。いつもなら俺1人でやる夕食の準備だが、遊華に今日は傍にいてくれと言ったので必然的に風呂とトイレ以外は遊華といる事になる。言ったのは俺なので文句は言わないがな
「今日は何がいい?」
「うーん、お刺身!」
「了解」
遊華のリクエストにより今日の晩飯は刺身になり、香月と美月も刺身でいいという事で羽月さんを含めた4人での夕食を食べる事になった。そして────
「ふう、ようやく今日1日が終わるな。でもまさか、遊華が明日は朝早くに仕事に行くなんて予想外だが、おかげで俺は浩太からもらった資料の続きを改めて読む事ができるしよしとするか」
俺にはどうしても気になる事がある。それは、飛ばされた未来で出会った人に元の世界でも会えるかどうかだ。別に女々しく執着するつもりはないが、念の為だ。まぁ、過去があって今がある以上は元の世界でも存在するとは思うが……
「さて、未来から元の世界に無事に帰った人のその後の資料はっと」
元の世界に帰った人の資料を適当に漁る。知識を持ってるに越したことはない
「えーっと、“俺は未来の世界から無事に帰還し、それまでと何も変化のない生活を送る事ができている。強いて言うなら未来から帰ってから俺には最愛の人ができた。この幸せを誰かに分けてやりたい。”ってこれ後半は惚気話じゃねーか!ふざけんな!」
資料にツッコんでも仕方ないが、他人の惚気話ほど腹立たしいものはない
「次だ次!例え最愛の人と結ばれても惚気話がないやつにしよう」
俺はもう1つの資料に目を通す。今度は惚気話が少ないやつにしよう
「これなんかは最愛の人と結ばれても惚気話はなさそうだ。何々“私は未来から元の世界に帰還する事ができた。帰還した私は最愛の人と結ばれた事以外はそれまでと変わらない日常を送っているが、あくまでもこれは仕事に行ったり家に帰るという意味である。人間関係においてだが、最愛の人と結ばれた以外に変化したのは未来で出会った人たちが別の形で私の前に現れたのだ。私の前に現れたのは単なる偶然でしかないので同じ経験をした人間全員に当てはまるわけじゃない”って事は俺も必ずそうだって確証はないのか」
この人の例を自分に当てはめて考えると、俺にとって最愛の人間と元の世界に戻ってから結ばれる。その後で俺がこの世界で関わってきた人間と別の形で出会う可能性があるという事か
「別の人の資料を読んでみよう。さっきの人のは出会える可能性があるという話だからな」
別の人の資料を読んでみよう。中には出会う事がないって資料もあるかもしれない
「これなんかいいか……」
ある1つの資料が目に入った。なぜかこの資料を手に取ってしまったが、俺の目的の情報は手に入るだろうか
「ふむ、“僕は未来から無事に帰って来たが、未来から帰って1つ驚いた事がある。それは、未来で出会った人たちがそもそも僕の知り合いだった。そりゃ自分の家族の知り合いなのだから僕を知っていて当然だが、そうではなく、僕の幼い頃からの仲だと言うのだ。しかし、僕にはその記憶がない。僕が未来に行って何かが変化したのではないだろうか”つまり、元の時代に帰っても全て元通りっていう事でもないのか」
俺は資料を読み進めていくうちにわかった事がある。それは、未来から帰還した人には2つのパターンに分けられる。そう、元の世界に戻って未来であった人間と違和感のない形で出会うパターンと何らかの形で元々知り合いだってパターンだ
「俺が優先させる事が見えてきたな。というか、やる事が増えたな……」
探らなかった方がよかったと今更になって後悔しても遅いと思いつつ、もう1つやる事が増えたと感じていた。
「遊華は俺が寝ている間に何をしていたか?だな」
俺は明日、隠しカメラの映像をチェックしようと決め、今日は疲れたので眠る事にした。
今回は遊が遊華を試してみる話でした。
遊が寝ている間の話は次回になります。物足りない感があった方もいらっしゃるとは思いますが・・・
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました