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香月と明美さんの空腹が限界を超えそうな件について

今回は香月と明美が空腹でグダる所から始まります

それと、作中に出てくる島寿司について少しだけ解説を入れておきます。

島寿司とは東京都の八丈島の郷土料理で握り寿司の一種です。ワサビの代わりに辛子を使うのが特徴です

知っている方もいらっしゃると思いますが、軽く解説しました。

では、どうぞ

 俺が10年後の未来であるこの世界に飛ばされた事について真剣に考えなければならない。その事は浩太との話でよく理解した。なぜなら、俺と遊華の関係や俺が遊華を妹とか実妹と言った時の含みのある言い方の理由が見えてくるからだ。だが、それよりも俺、藤堂遊が今考えるべき事は……


「昼飯何にすっかなぁ……」


 未来に飛ばされた事や遊華の事よりも昼飯である。俺は浩太の部屋からリビングに戻る数分のうちに香月と明美さんにどう言い訳するかと昼飯のメニューを考えなければならなかった。


「香月、明美さん、昼飯のメニューのリクエストは……うおっ!?」


 昼飯のリクエストを聞こうとした俺が目にした光景、それは……


「遊、お腹すいた」

「遊君、私もうダメ……」


 空腹でダウンした香月と明美さんだった。


「明美さん!しっかりしてください!香月も!」


 とりあえず俺は机に突っ伏している香月と明美さんに声を掛ける


「「…………」」


 だが、返事はない。よくゲームや漫画などでは、ただの屍のようだ。なんて表現される事が多いが、今の香月と明美さんはただの屍ではなく、返事がない、マジで屍のようだ。という表現が正しいだろうな。


「すぐに用意します!2人ともしっかりしてください!」


 俺はこのままだと香月たちが屍を通り越してゾンビになりそうなので、リクエストなど聞かずにすぐに調理に取り掛かる


「ご飯は炊けてるし、今回は手巻き寿司にするか」


 なぜか米だけは炊けているの状態だったので2人の空腹具合を考慮して昼は手巻き寿司にする事にした。嫌がらせ?目の前のゾンビ寸前の2人を見てそんな事を考えている場合じゃない!


「よし!酢飯はOK!後は刺身だ!」


 俺は酢飯のを急ピッチで作った。もちろん、急いでいるからと言って酢飯を冷ます事は忘れない


「えーっと、刺身はっと……」


 俺は他人の家の冷蔵庫を開ける事に罪悪感を抱きつつも刺身を探すために冷蔵庫を開けた


「マグロとホタテとウニとタイか……とりあえず、マグロとホタテとウにを使うか」


 俺はタイをあえて残し、マグロ、ホタテ、ウニを取り出し、マグロは一口大の大きさに切り分け、ホタテとウには皿に盛りつけた


「香月、明美さん、もうすぐ完成ですから、気をしっかり持ってください!」


 マグロを切り分けながらも2人へのエールを忘れずに送る。雪山で遭難した人とかに送るエールみたいになっているのは気にしたら負けかなと思う


「遊……ご飯できるまで待ってる……」

「私も……美味しいの期待してるわね……」


 ダメだ、香月と明美さんの返事に力がない。これは急がねばならないな


「よし!一先ずマグロの調理完了!」


 切り分けたマグロと盛り付けたホタテとウニを持ってリビングに行き、再びキッチンに戻り酢飯と醤油と醤油皿を持ってキッチンに戻る俺。飲食店の昼飯時じゃないのに何でこんなに慌ただしく作業だ?


「香月、明美さん!できましたよ」


 香月と明美さんに声を掛ける。すると2人は………


「「ご飯!!」」


 急に覚醒したかのように顔を上げ手巻き寿司に食らいつく。あなた達は猛獣ですか?


「俺は浩太を呼んできますね。って飯に夢中で聞いてないし……」


 2人は俺の声など無視し、ガツガツと飯に食らいついていた。よっぽど腹減ってたんだな


「さて、俺は浩太を呼びに行きますか」


 俺はリビングを出て再び浩太の部屋へと向かう。香月と明美さんには手巻き寿司あるからしばらくは大丈夫だろう


「浩太、できたぞ」


 俺は浩太の部屋のドア越しに声を掛けた。別にノックして入ってもよかったんだが、わざわざ入る必要もないだろ


『了解。ところで昼飯何?』


 ドア越しに浩太が昼飯のメニューを聞いてきた。そういえば浩太には伝えてなかったな


「手巻き寿司」


 簡潔にドアの向こうの浩太にメニューを伝え、俺はその場から去ろうとしたが


『手巻き寿司かぁ……もうちょい手の込んだものを期待してたんだが……』


 普通なら作ってもらって文句言うなとか言いそうなんだが、今回は別だ。というか、俺もそうしたかったし


「お前、屍になりつつある状態の香月と明美さん見て手の込んだモン作ろうと思うか?」

『ごめん、遊』

「わかればいいんだ。じゃあ、すぐに来いよ」


 俺は浩太の部屋の前から去ろうとした。しかし……


「俺も昼飯にしようと思ってたところだから一緒に行こうじゃないか」


 浩太は部屋から出てきた。時間も時間だが、浩太自身も空腹だったらしい


「さて、じゃあ、飯にするか」


 浩太はリビングを通り過ぎ、キッチンに入り自分の分の醤油皿と刺身を持ってリビングに移動した。


「そうだな、俺も腹減った」


 俺も浩太と同じように自分の分の醤油皿と刺身を持ってリビングに移動した。


「さて、食うか遊」

「ああ、そうだな。浩太」


 俺と浩太は向かい会って手を合わせた


「「いただきます」」


 香月と明美さんは満足したのかソファーでくつろいでいてこちらの様子に気づいていないようだ。


「ふぅ……」


 手巻き寿司を食い終わった浩太は何とも言えない表情をしていた


「どうした?浩太」

「いや、食い足りないなと思ってな」

「そういや俺も物足りない感じだな」

「何かあと少しは何か食いたいな。何かないか?遊」


 浩太はそんなガッツリ食べたいと言うわけじゃなく、少し食うくらいの何かを求めているようだ


「調理に時間掛かるものでいいならない事もないが、すぐ食いたいか?」

「いや、すぐじゃなくてもいいが、何か食いたいのは確かだ」

「仕方ない、島寿司でも作るか」

「島寿司って何だ?」


 そうか、普通の寿司なら馴染みがあるが、島寿司はあまり馴染みがないのか……


「島寿司ってのはまぁ、郷土料理だ。あまり細かい説明されんの嫌だろ?」

「まぁな。食う前に細かい説明は聞きたくない」


 浩太は飲食店に入った時もそうだが、基本的に食前食後の細かい説明は嫌いなタイプだ。簡単に言えば腹に入り美味ければ何でもいいタイプの人間だ


「「島寿司!!」」


 香月と明美さんも島寿司という言葉に反応した。多分、反応したのは“島寿司”じゃなく、“寿司”って部分にだと思うが


「2人とも食べます?」


 俺は2人の反応の速さに引きつつも尋ねてみる事にした。後から文句言われたくないし……


「「食べる!!」」


 この瞬間、俺は全員分の島寿司を作る事が決定したらしい。さっき手巻き寿司を食べていて米は固めに炊かれていたし、問題はないだろう


「タイしかないから、タイの島寿司でいいか?」


 例え魚と言えど好き嫌いはある。なので念のために聞いておくか


「「「OK!」」」


 3人からOKサインが出たところで調理開始する前にやる事がある


「醤油は一旦回収するぞ」


 俺はリビングにある醤油を一旦回収し、キッチンに持って行く


「さて、調理開始といきますかね」


 キッチンに戻った俺は早速調理に取り掛かる。


「遊、醤油はリビングに戻さなくていいの?」


 香月から醤油を戻さなくていいのか?という質問が飛んでくる


「この家の方針でリビングには常に醤油がなきゃダメだって言うなら戻すけど?」

「常に醤油がリビングになきゃダメだって方針はないけど、お寿司って普通はお醤油付けて食べるからお醤油は必要なんじゃないかしら?」


 普通の寿司ネタが刺身の場合はそうだが、しかし、この島寿司には必要ない。好みによるが……


「大丈夫です。醤油はつけなくても食べられますよ。まぁ、好みによると思いますが」

「そう、その辺は遊君に任せるわ」


 明美さんは俺に完成した料理の食べ方まで任せてくれた。まぁ、みんな初めてだし、仕方ないか


「さて、じゃあまずはタイを切り分けて醤油に漬けますか」


 俺は切り分けたタイをボウルに入った醤油に漬ける


「次は酢に砂糖と塩を入れてっと、これで寿司酢完成!」


 手巻き寿司の時は市販の寿司酢を使ったが、今回は手間をかけていいと言われているので自分で寿司酢を作った。


「さて、これを米と混ぜ合わせて……そういえば、ボウルはこれ以外ないのかな?」


 この家にはボウルはもうないのかな?明美さんにでも聞いてみるか


「明美さん、ボウルってまだありますか?」


 俺はキッチンから声を掛け、ボウルの場所を確認する。まぁ、3つ目のボウルは多分ないだろうが……


「戸棚の下にないかしら?」


 明美さんに言われた通りに戸棚の下を確認する。


「ありました。ありがとうございます」

「いえいえ、どういたしまして」


 俺は戸棚からボウルを取り出して調理を再開した。浩太と2人暮らしなのにボウルが3つも何で?


「さて、寿司酢と米を混ぜてっと」


 よし、よく混ざったな。後は一口大の俵型に握って辛子を付けて醤油漬けにしたネタを乗せてっと


「よし、完成!」


 我ながらいい出来だと思う。さて、リビングまで運ぶか


「できたぞ~」

「「「待ってました!」」」


 香月たちは目をキラキラさせて島寿司を見つめていた。いや、そんなにガン見せずとも寿司は逃げないよ?


「遊、この寿司には醤油はいらないのか?」


 浩太、寿司ネタに醤油漬けの刺身が乗っているのにお前はまだ塩分を摂取するつもりか?


「この寿司は醤油なしで食えるから安心しろ」

「そうか」


 浩太は納得してくれたみたいだ。さて、他の2人はどうかな?


「…………」


 見てないぞ。俺は香月と明美さんが既にヨダレをダラダラと垂らしながら待っている光景なんて見てないぞ


「浩太……」

「ああ、食べるとするか。遊」

「「「「いただきます!」」」」


 俺たち……俺と浩太は香月と明美さんが待ちきれない様子だったので、島寿司を食べる事にした。食べてる最中に香月と明美さんからワサビじゃなくて辛子である理由やいろいろな事を聞かれたが、辛子である理由はワサビが手に入らなかった昔の名残りと答えておいた


「今日は久しぶりに会えて楽しかったよ。遊」

「俺の方こそ、こんな貴重な資料をありがとな。浩太」


 飯を食い終わった後、後片付けは明美さんと香月と浩太で分担してやってくれた。そして、俺は浩太から帰り際に約束の資料が入った鞄を受け取った。その際に香月と明美さんから質問攻めにあったが、必死に誤魔化した事を言っておこう。





今回は香月と明美が空腹でグダる話でした。

遊が作れる料理のレパートリーって和食が多い気がする

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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