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俺が誰かと一緒にいたいと思ったら修羅場になった件について

今回は遊が無性に人と一緒にいたがる話です

当然、それだけで済まないのが藤堂家!

では、どうぞ

 自己嫌悪から立ち直ってから早2日が経ちました。自己嫌悪に陥っていた期間は遊華たちと碌に会話をせず、この部屋からも一歩も出ずに引き籠っていた。その結果、遊華たちからのお話を俺、藤堂遊は正座で3時間聞かされたのだ。口調がブレブレなのは気にしないでいただきたい。


「はぁ……誰でもいいから甘やかしたい……」


 遊華たちが煩わしいと思ってたら、今度は誰かを無性に甘やかしたい……


「俺って矛盾してるのか?」


 最近の俺はどうかしている。自分でそう思うって事は相当だな


「仕方ない、リビングに行って誰か探すか」


 俺はその辺にいる女や子供を攫ったりする事はしたくない。しかし、俺の身体は1つしかない。複数の人間を甘やかす事は不可能だ


「頼むから誰か1人はいてくれよ……できれば香月がいいな」


 俺は香月にリビングにいてほしい。そんな願望を抱きながら部屋を出た。


「遊、どうしたの?」


 リビングに入った瞬間、香月に声を掛けられた。うん、早速香月に会うなんて俺って今日は運がいいんじゃね?


「お兄ちゃん、何か必要な物でもあるの?」


 何と、遊華もいるではないか。別にいちゃいけないと言うわけではないが……今の状態での遊華は危険だ。俺の病気みたいな身勝手に巻き込むわけにはいかんし


「遊ちゃんの部屋って冷蔵庫あるし、ここに飲み物とか取りに来る必要ないと思うけど……」


 はぁ~、美月までいるんか……あれ?香月を甘やかしたくて部屋から出てきたのに、何でだろう……今はこの3人を無性に抱き枕にしたい……


「そうか……迷う必要も選ぶ必要もなかったんだ……」

「どうしたの?遊」

「何か変だよ?お兄ちゃん」

「身体の具合でも悪いの?遊ちゃん」


 遊華たちの心配は正しい。今の俺はどうかしている。普段は遊華たちから要求してくる事を俺がしたいと思うあたり変だからな


「3人とも俺の部屋に来ないか?」


 今の俺は完璧に下心丸出しの男だ。それか、小学生を狙う誘拐犯に見られてもおかしくない。さすがの遊華たちも軽蔑するだろうな


「「「え?いいの?」」」


 軽蔑するどころか誘いに乗ってきた。誘っておいてなんだが、いいのかなぁ……


「ああ、今日は無性に3人といたい気分なんだ」


 俺のこの言葉に嘘偽りはないが、捉えようによってはチャラ男だ


「お兄ちゃん、どうして私たちといたいの?」

「え?」


 意外な事に遊華からこんな質問が投げかけられた。さっきまで乗り気だったのにどうしたんだろう?


「確かにさっきは嬉しかったが、私も納得いかない。遊、いきなりどうしたの?」

「いや、どうしたもなにも俺は別にどうもしないが」


 香月までも疑うか……俺がこんな事言い出すのはやはりおかしいかな?


「まぁまぁ、遊ちゃん、香月ちゃんと遊華ちゃんが疑問に思うのも無理はないけど、疑っている2人の事は置いておこうよ。唐突に誰かと一緒にいたくなる事だってあるよね」

「ああ、そうだな」


 美月だけは俺の行動に疑問を抱かずに肯定してくれた


「遊ちゃん、誰かと一緒にいたいなら、今日は私が傍にいるよ~?私なら2人とは違って遊ちゃんにあれこれ聞かないし、遊ちゃんが自己嫌悪に陥って部屋から出てこない状況を作ったのは私たちにも責任があるし……一緒にいる事で少しでも遊ちゃんの心が癒されるならね」

「美月……」


 別にそこまで言ってないし、自己嫌悪した件には1回も触れてないんだが……まぁ、美月が傍にいてくれるって言うなら


「遊ちゃん、いこ?」

「あ、ああ……」


 美月は俺の手を引いて歩き出そうとした


「「ちょっと待ったぁ!」」


 香月と遊華が大声で待ったを掛けた


「遊華ちゃんと香月ちゃんどうかした?」

「美月は何でそんなにすぐに受け入れられるの!?」

「逆に香月ちゃんは何でそんなにすぐに受け入れられないの?」

「そ、それは……」


 質問した香月が美月に逆に質問を返されてたじろいでしまった。


「はい、香月ちゃん撃破~」


 美月は楽しそうに香月が押し黙った様子を見ている


「お兄ちゃんは普段はそんな事言わないのに今日になってそんな事を言う事に対して美月お義姉ちゃんは変に思わないの!?」

「遊華ちゃん、普段は遊ちゃんに甘えるだけ甘えて、いざ遊ちゃんが甘えたいとか一緒にいたいって言ってきた時に理由を聞くのはズルいんじゃない?遊華ちゃんが同じ事した時に遊ちゃんは詳しく理由を聞いてきた?」

「そ、それは聞いてこなかったけど……」


 まぁ、聞くのが面倒だって事もあったけど、1番はそれをする必要がなかったからだな


「はい、遊華ちゃんもおしまい。遊ちゃん、行こう」

「そ、そうだな」


 美月の遊華たちと対峙した時の表情は冷たいものがあったが、俺に向けた表情は普段の美月のままの表情だ


「お兄ちゃん、私も行く!」


 遊華は慌てて追いかけてきたが、ここは家の中だ。そんなに慌てなくても良かろうに


「遊、私もついて行く」


 香月も遊華に倣い追いかけてきた。もう1度言うが、ここは家の中だ。そんなに慌てなくてもいい


「別に~遊華ちゃんたちは来なくてもいいんだよ?」

「「…………」」


 俺はあえて口を開かなかったが、今日の美月はやけに突っかかるな


「美月、もうその辺で……」


 俺は美月を止めようとした。しかし、美月は


「止めないよ。私は今の香月ちゃんも遊華ちゃんも気に入らない」


 いつもの癒し系の声じゃなく、冷たい声で香月と遊華を気に入らないとはっきり告げた美月だが、一体何が気に入らないんだ?


「美月お義姉ちゃん、私たちの何が気に入らないの?」

「そうだよ、美月。私たちのどこが気に入らないの?」

「全部だよ」


 遊華と香月の質問に全部が気に入らないと答えた美月


「「全部?」」

「そ、全部。普段から遊ちゃんに甘えてばかりいる私たちだけど、遊ちゃんは何も言わずに甘えさせてくれる……だけど、遊ちゃんが甘えたいとか一緒にいたいって言った時に詳しく理由を聞く香月も遊華も私は気に入らない……ううん、遊ちゃんには必要ない」


 淡々と答える美月。俺の為に言ってくれているのだろうけど、なんか怖いぞ


「「…………」」


 無言のままの遊華と香月を残し、俺たちは隠し部屋……今の俺の部屋へと向かう。


「なぁ、美月……」

「遊ちゃん、今は何も言わないで、遊ちゃんが自己嫌悪で部屋に閉じこもっちゃったのは私たちのせいだし、誰かに甘えたいと思ったのも私たちのせい。だから、今日は私に精一杯甘えてね」


 俺が誰かを甘やかしたいという唐突な思いからなぜか美月に甘え、その肝心の美月は遊華と香月と気まずい雰囲気になってしまうという何とも言えない状況になってしまった


「そうだな……そうさせてもらうか……」


 最初は俺が甘やかしたいと思っていたが、いつの間にか美月に甘えるという図が完成してしまったが、これはこれで悪くないと思う


「遊ちゃん」

「何だ?」

「今更になるけど、遊華ちゃんのお友達のストーカー退治お疲れ様でした」

「ああ」


 ただイタズラに話を蒸し返して説教をするわけでもなく、自分たちが動けなかった事を棚に上げるわけでもない。俺を労ってくれる言葉。今更感はあるが、俺にはとても心地よいものに聞こえた。そして、俺のした事をようやく誰かに認められた。そんな気がした


「本当はもっと早く言いたかったんだけどね~」


 美月の口調は普段のものに戻っていた。だが、俺には1つ気になる事がある


「ここに遊華たちはいないが、どうなっているかな……」


 俺は美月に膝枕されながらも監視カメラの映像を確認する事にした


「遊ちゃん、香月ちゃんと遊華ちゃんの様子が気になるの?」


 頭上から美月の声がする。気になるか?だって?あんな事があって逆に気にならないわけがない


「俺のせいで美月と気まずい関係になったんだ。当たり前だろ」

「そっか、じゃあ確認しよっか」


 俺と美月は監視カメラを確認してみたが、やはりと言うか、なんと言うか、案の定遊華たちは落ち込んでいた


「遊華たち落ち込んでるな」

「そうだね~、私もちょっと言い過ぎたかな~」

「このままだとさすがに可哀そうだから呼び出すか」

「遊ちゃんがそうしたいなら私は止めないよ」


 俺はさすがに可哀そうになったので、遊華たちをここに呼ぶことにした


「遊華、香月、今から地下の隠し部屋へ来てくれないか?扉は開いてるから入ってきて構わない」


 俺は用件だけ伝えるとマイクのスイッチを切った。遊華たちは頷く事もなく、無言で歩きだしここに向かった。


「「…………」」


 部屋へ入ってきた遊華たちは無言だった。まぁ、俺が何の説明もなくあんな事を言ったせいもあるが、遊華たちにも思うところがあったのだろう。


「あ、あの、2人とも……」


 俺がおずおずと遊華たちに声を掛けるが、2人とも顔を合わせてくれない


「え?ゆ、遊華!?」


 俺は遊華にいきなり抱きしめられた。どうしたんだ!?


「お兄ちゃん、考えてみれば私はいつもお兄ちゃんに甘えてばかりだった。だから、美月お義姉ちゃんの言った通りに何も聞かずに甘えさせてあげればよかったんだ……そして、安直な事だけど、言われた時にこうしていればよかった」


 遊華は泣いてはいないが、その表情はとても悲しそうな表情だった


「遊、今日はみんなで寝よう……」


 香月は俺の頭を撫でながらみんなで寝る事を提案してきた。しかし、前に一緒に寝る時とは違うのだろうな……俺はそんな気がしてならなかった。


「ああ、そうするか。な?美月」

「うん……」


 俺は今日、何をするにも遊華たちがやってくれたし、自分でやる事も遊華たちが手伝ってくれた。ただ、さすがに恥ずかしいので、風呂とトイレは1人だったが。


今回は遊が無性に人といたがりました。

しかし、そこで修羅場発生

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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