私が遊ちゃんと初めて会った時の事を話す件について
今回はタイトル通り美月の視点から見た遊との初対面の話です
若干香月の話と被る部分もありますが、美月は美月で思うところがあったんです
では、どうぞ
今回は遊ちゃんの代わりにこの私、藤堂美月がお話するよ~よろしくね。さてさて、どんなお話しようかなぁ……あ、私が遊ちゃんと初めて会った時のお話がいいか!うん、そうしよう!私が遊ちゃんと初めて会った時のお話をするね~
「あ~、今日も疲れた~」
私は今日もしたくもない愛想笑いに持ち前のポワポワ系のキャラで今日1日のお仕事を終えたところだ
「はぁ~、このキャラもそうだけど、愛想笑いも結構疲れるのよね……」
私は幼い頃からポワポワ系のキャラだった。そのおかげで男女共に好かれてきた。と自分では思っているが、時々このキャラで女性から嫌われる事がある
「遊ちゃんの前なら素直になれるのかな……」
遊ちゃん……本名は藤堂遊。私には義理の弟にあたり、義妹の遊華ちゃんにとっては本当のお兄さんにあたる人だ。私は写真と遊華ちゃんの話の上でしか知らないけど、話を聞くだけだと私とも向き合ってくれそう……こんな私ともね……
「はぁ~、会えない人に希望なんて抱いても無駄だってわかっているのに……」
遊ちゃんは10年前の今日、突然行方不明になった。いくら探しても見つからないし、それこそ警察でも見つけられなかった。
「それでも、私は遊ちゃんに会いたいなぁ」
私は今日、ひょっこり遊ちゃんが帰ってくる。そんな淡い希望を抱きながら家への帰路に就く事にした。
「はぁ、遊に会ってみたいなぁ……」
あの哀愁漂う背中は香月ちゃん!面白そうだから後ろから声掛けちゃえ!
「誰に会ってみたいの?」
「うひゃあ!?」
香月ちゃんは案の定驚いて変な声を上げた。しかし、その驚いた声が“うひゃあ!?”って……
「か、香月ちゃん!?いきなり変な声を出さないでよ」
まぁ、驚かせた私が言えた立場じゃないけどね~
「な、なんだ、美月か……」
むぅ~、さすがになんだはないんじゃないかな!見かけたから一緒に帰ろうと声掛けたのに~!
「なんだとは失礼な!せっかく香月ちゃんを見かけたから声掛けたのに」
「す、すまない、ちょっと考え事してたもので」
香月ちゃんも行方不明の弟の遊ちゃんの事を考えていたのかな……?
「それって10年前にいなくなった義弟の遊ちゃんの事?」
「ああ、遊が今日帰ってきたらいいのになってね」
やっぱり……予想はしてたけど、香月ちゃんも遊ちゃんの事を考えていたんだね……でも、そんな10年もの間探して見つからない人がいきなり今日帰って来たら苦労はしないよ……
「そうだね……」
私と香月ちゃんは奇跡が起きない限りは絶対に会えない義弟の遊ちゃんの事を考えていた
「考えても仕方ないな。早く家へ帰ろう」
香月ちゃんは暗くなった空気を明るくしようと努めてくれているのか、比較的明るい声で私に言った
「うん!そうだね!けど、いつかは会いたいよね……」
私も香月ちゃんの努力を無駄にしないように明るく返す。そして、その中に遊ちゃんにいつか会えるという希望を持った
「そうだな、いつか会えるといいな……」
香月ちゃんも遊ちゃんに会えるかもしれない希望を持って返してくれた。私的にはそう信じたい
「こんな暗い話はもう止め止め!さぁ、帰ろう!」
私たちは家にまで暗い雰囲気や暗い話を持ち込まないように一旦ここで話題を切り替える
「ああ」
私と香月ちゃんは2人で夕暮れの空の元、家へと向かった
「それにしても、遊華ちゃん綺麗になったよね~」
私は義妹の遊華ちゃんの事を話題にし、香月ちゃんに最近の遊華ちゃんの容姿について話を振ってみた
「そうだな、初めて会った時は可愛かったが、今ではすっかり大人になったな」
香月ちゃんの言う通り、初めて会った時の遊華ちゃんは可愛かったけど、今ではすっかり大人の女性だ。まぁ、当たり前なんだけど……
「今でも周囲とは距離を置いて接している事には変わりないけどね~」
そう、初めて会った時から唯一変わらないのが距離感だ。打ち解けているように見えても心の距離が離れている。それは誰に対しても変わらない。私にはそう感じる……
「ああ……」
香月ちゃんも同じ事を感じていてくれたのか、私に同意したくれた
「私たちと遊華ちゃんが出会って10年か……時が経つのは早いものだな」
改めて言われると10年という歳月の長さと時の流れが一瞬であるという事を感じさせられる
「そうだね~私たちももう27と26だし」
私も20代の後半に差し掛かっている年齢だ。いつまでもポワポワキャラじゃいけない気がしてならない
「あと数年も経てば私たちも30か……」
年齢の話を出したのは私だけど、あと数年で30は言わないでほしかった……
「うっ……そうだね」
私は苦しいながらも同意した。強く否定できない自分の年齢が恨めしいが、年を重ねる事は仕方のない事だし……
「年齢の話は止めよう……なんか悲しくなる」
香月ちゃんは自分で言ってて悲しくなったのか、年齢の話はこれ以上は避けたいみたいだ
「そうだね、私たちはまだまだ若いもんね!」
私も正直、これ以上は年齢の話をしたくないし、周りから老けて見られたくもないので香月ちゃんと2人で若いんだという事を言い聞かせた
「とにかく、家に入る時は明るく振る舞おう」
「うん!暗くなって家族に心配かけたくないしね!」
私たちは家では暗い話をしまいと明るく振る舞う為に家の前で明るい雰囲気を作る
「たっだいまー!」
「ただいま」
香月ちゃんが玄関のドアを開け、私が明るくあいさつをする。うん!いつも通りだ
「見慣れない靴だが、お客さんでも来ているのかな?」
香月ちゃんが見慣れない靴を見つけて私に尋ねてくるが、私の位置からだとそれがどんな靴かははっきりと見えるわけじゃない。なので、私は……
「多分、そうじゃない?」
曖昧に答え、お茶を濁すしかなかった
「遊華ちゃんの親しげに話す声が聞こえるが、客というのは遊華ちゃんの彼氏かな?」
あの遊ちゃん大好きな遊華ちゃんが簡単に彼氏を作るとはおもえないけどなぁ……でも、私も靴の主は気になるので
「さぁ~それはリビングに行ってみればわかるんじゃない?」
自分でも内心楽しみにしつつ香月ちゃんが尋ねるようにするためにあえてこの答え方をした
「あら、二人ともおかえり。遊華ちゃんも帰ってきてるわよ」
それは声が聞こえたからわかっている事だよ~、香月ちゃんが気にしているのは遊華ちゃんと話しているのが彼氏かどうかってところなんだけどなぁ……
「ああ、ありがとう母さん。それより、玄関に見慣れない靴があったが客でも来ているのかい?」
家に人が来るなら連絡くらいくれたらよかったのに……とにかく、粗相はしないようにしないとね~
「そうだよ~言ってくれればお土産買ってきたのに~」
私は遊華ちゃんのお客さんが遊華ちゃんとどんな関係かはわからないけど、言ってくれればお土産くらいは買って帰るくらいはする
「お客さん……ある意味お客さんね」
ん?どういう事だろ?ある意味お客さんって事は私たちの親戚が遊びに来ているのかな?
「二人とも早く荷物を片付けてきなさい」
お母さんの言う事は尤もだ。この鞄の中には仕事で使う台本が入っている。うっかり中身を見られたら大変だ
「そうだな、一旦荷物を部屋に置いてくるとしよう」
香月ちゃんが一旦部屋に戻ることだし、私も部屋へ戻って荷物を片付ける事にしよう
「私も~」
私は香月ちゃんと部屋へ戻る。その際チラッと見えたのが私よりも多分、10歳くらい歳の離れたと思われる男の子の姿だった
「美月、あの少年が遊華ちゃんの彼氏なのかな?」
香月ちゃんは意外とそういうとこは敏感だから、気になるのも無理はないかぁ
「どうなんだろうね~?ひょっとしたら家出少年だったりして」
私は念のため家出少年の可能性も考えて一応、仮定として出しておいた。けど、あの子どこかで見た事が……
「じゃあ、私はここで」
「ああ、私も荷物を置いたらすぐに行く」
私と香月ちゃんは部屋の前で一旦別れ、それぞれの部屋へ戻る
「遊華ちゃんの連れてきた子って誰かに似ていたような気が……」
私は遊ちゃんの写真を思い出していた。だが、10年も行方不明の人間が簡単に見つかるわけがない。そんな疑いを拭い去る事が出来なかった。
「直接会えばわかるか……」
私がいろいろ考えるよりも遊華ちゃんとあの男の子に説明してもらえばいいか。私は荷物を置いて部屋から出る
「香月ちゃん」
「美月……」
同じタイミングで香月ちゃんが出てきた。タイミングバッチリでよかった~
「一先ずリビングへ行こう。そうすればあの少年の正体もわかるだろう」
「そうだね」
私たちはリビングに行く事にした。あの子が誰なのかを知るにはそれしかない
「よし、行くか」
「うん」
香月ちゃんは何やら意気込んでいるようだけど、リビングのドアを開けるってそんな決意することなのかな?
「遊華ちゃん、ただいま」
「遊華ちゃ~ん、たっだいま~」
私は努めてハイテンションで遊華ちゃんにあいさつをする。でも、どうしてかな?遊華ちゃんも心なしか嬉しそうに見える
「おかえり、お義姉ちゃんたち」
うん、やっぱり明るいように見えるよ。遊華ちゃん
「ゆ、遊華。そろそろ説明と紹介してほしいんだけど」
男の子がおずおずと口を開くけど、年上を呼び捨てとは感心しないなぁ……
「あ、ごめんお兄ちゃん」
え!?お兄ちゃん!?遊華ちゃんは何を言っているの!?まさか、そういう趣味!?
「そうだな、私たちも君が誰か知りたいところだな」
さすがは香月ちゃん!こんな時でも冷静なんだね!
「そうだね~」
私もいつもと同じように天然系キャラを演じ、紹介を促した
「じゃあ、まずはお兄ちゃんにお義姉ちゃんたちを紹介するね」
ううぅ……遊華ちゃん……遊ちゃんが帰って来ないショックで自分よりも年下の少年をお兄ちゃんと呼ぶようになるなんて……
「ああ、頼む。じゃないと俺そろそろ理解が追い付かない」
少年よ、理解が追い付いていないのは私も一緒だよ!
「じゃあ、こっちのショートカットで口調が男に近いのが一番上の香月」
香月ちゃんの特長をわかりやすく説明した紹介だね!遊華ちゃん
「香月だ。よろしく」
香月ちゃんにも思うところがあったのだろうけど、今は特に何も言わずに簡単な自己紹介をするだけだった
「よ、よろしくお願いします……」
少年は香月ちゃんを見てデレデレしてた。何か気に入らないなぁ……
「お兄ちゃん?続けていいかな?」
どうやら遊華ちゃんの逆鱗に触れたようだね
「こっちのロングヘアーでぽわぽわしているのが2番目|美月だよ」
「美月だよ~よろしくね~」
「は、はい。よろしくお願いします」
私はいつものキャラで軽く自己紹介した。何か少年君が癒されるみたいな顔で私を見ていたけど
その後の話で、遊華ちゃんが連れてきた少年君は10年前にいなくなった藤堂遊本人であり、駅前に買い物に行った遊華ちゃんが遊ちゃんである確認を取ってから連れてきた事がわかった。写真で見たことがある気がしたのは遊ちゃんがタイムトラベルしてきたからだという事を聞いた
今回は美月から見た遊との初対面の話でした
美月は美月でいろいろと大変なんですねぇ~
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました