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遊華に説教と拘束された件について

今回は遊華に説教と拘束をされる話です

 俺、藤堂遊は現在、目に光が宿っていない妹の遊華に押し倒されている状態である。これは本能的にわかることだが、かなりヤバい……朝の液体を塗った時よりも昼飯の激辛カレーの時よりも今日1日の中で1番ヤバいやつだ……


「お兄ちゃん……」

「ど、どうした?ゆ、遊華?」

「今日さ、美優のストーカーに何された?」

「何って俺は何もされてないぞ?どちらかと言えば秋野さんがずっとストーカーされてじゃないか」


 俺のこの答えが正しいのかはわからんが、この状況だとこう答えておいた方が良さそうだ


「違うでしょッ!!!」

「!?」


 遊華がいきなり怒鳴りだした


「お兄ちゃんさぁ!今日!あのストーカーに!刺されたよねッ!」

「あ、ああ……だが、俺は無傷だったし、別にいいだろ。それよりも早くどいてくれ」


 俺は遊華に押し倒されているため身動きが取れない。そのため、俺の上からどいてほしかった


「それよりも?お兄ちゃんは今日大ケガしたかもしれないんだよ!?最悪の場合死んでたかもしれない……それ自覚してんの!?私も由紀も美優もすごく心配した……ねぇ、それわかってる!?」

「遊華、お前……」


 俺の顔に水滴が落ちてくるが、俺にはその水滴が何かすぐにわかった


「ううぅ……グスッ……」


 遊華が泣いていたのだ……俺はこの時になって初めて目的もそうだが、遊華たちの気持ちも考えるべきだったと気が付いた


「遊華……ごめんな」


 俺はただ謝る事しかできなかった。いや、違うか……俺は謝るべきだから謝った


「うわあぁぁぁぁぁん!」


 遊華はとうとう耐え切れなくなったのか大声を上げて泣きだした


「これが効率や遊華たちに危険が及ばないようにっていう事だけを考えて俺自身の事を蔑ろにした結果か……」

「効率や私たちに危険が及ばないようにって事を考えてくれるのは嬉しいけど、それでお兄ちゃん自身を蔑ろにしたら意味ないじゃん!お兄ちゃんはもっと自分の事を大事にしてよ!お兄ちゃんが傷ついてそれで幸せになっても私は嬉しくない!」


 これからは自分の事も考えて行動しよう……遊華に泣いてほしくないし


「これからは自分の事も考えてから行動するし、今日みたいな事になって対策する時は遊華に声掛けてからにする」

「…………約束だよ?」

「ああ、約束だ」


 遊華はどこか納得いかないような感じだったが、約束もしたし、大丈夫だろう


「今日は疲れたし、もう寝るか」

「その前に、何か飲みたい。叫んだら喉乾いたし」

「そうか、じゃあ俺は先に寝るが?」

「飲み物はここに持ってきて飲むからちょっと待ってて」

「ああ」


 遊華は一旦部屋を出てキッチンに飲み物を取りに行くらしい。その間に俺は布団を敷いとくか


「戻ったよ~」

「おう、おかえり」


 遊華はオレンジジュースを2人分持って戻ってきた


「はい、お兄ちゃんの分」

「ありがとう」


 俺は遊華に渡されたオレンジジュースを一口飲んだ


「お兄ちゃん、聞きたいことがあるんだけど」

「何だ?俺に答えられる質問なら答えてやるぞ」


 遊華が俺に質問とは珍しいな……ここは兄らしく答えてやろう


「今日ストーカーに刺されて何で平気だったの?」

「ああ、あれは父さんの防弾チョッキを拝借して着てたからな」

「そう……」


 遊華は何で防弾チョッキを俺が来ていたのかを問いただすことはなかった


「じゃあ、あの血糊は?」

「あれも父さんのから拝借した物だ」

「そっか、お兄ちゃんは知ってたんだね?美優のストーカーがナイフを持っていたことを」

「いや、予想はしてたが、本当に持っているとは俺もあの男がナイフを取り出すまでは知らなかったよ」

「そう……じゃあ、最後に1つだけ聞かせて」

「何だ?」


 遊華は表情は笑っているのに目は泣きそうな表情で俺を見つめている


「どうしてお兄ちゃん、血糊とかの場所知ってたの?」

「昔、父さんに嫌がらせで血糊ドッキリに遭って以来、定期的に嫌がらせで血糊ドッキリを仕掛けられるようになったんだが、その時に父さんが血糊をここに隠してたのを見た。それでだ」

「私はその嫌がらせされてないよ?」

「父さんは家の本当の母さんと遊華を恐れてたからな」

「ふふっ、何それ」


 今度の遊華の顔は本当に笑顔だ


「なんだか眠くなってきたし、寝るか」

「うん、おやすみ。お兄ちゃん」

「おやすみ、遊華」


 俺は今日1日の疲れが出たのか、急激に睡魔が襲ってきてしまった


「朝か……ん?朝にしては暗いな」


 4月終わりだからもう日が出ててもおかしくないはずなんだが……


「それに身体の自由も効かないような……」


 俺はとりあえず身体を動かしてみるが、自由は全く効かず、身体を動かす度にガチャガチャと金属音が聞こえてくる。ここから予想できる事態は1つ


「俺は拘束されているのか?」

「大正解!よくわかったね!お兄ちゃん」

「その声は遊華か」

「おおっ!また正解!」


 どうやら俺は遊華によって拘束されたらしい


「何でこんな事を?」

「あれ?そこは予想つかないんだ」

「ああ、是非とも聞かせてくれ」

「昨日の事を蒸し返すわけじゃないけど、お兄ちゃんは家族かその周囲の人が危険に晒された時にまたあんな事するでしょ?」


 遊華の言うあんな事とは危害を加える人間を煽るだけ煽って標的を自分にするという事か……


「さぁ?昨日はあれが1番最適だと思ったし、万が一の為にちゃんと装備も整えてした事だが……まぁ、そうだな。多分するな」

「だよね……でもっ!私はっ!お兄ちゃんに傷ついてほしくない!」

「ああ、それは昨日も聞いた。それで遊華が俺を拘束する意味がわからない」

「それで、私は昨日考えて考えて考え抜いた……」

「何をだ?」


 俺は遊華が昨日の俺の行動から何を考えたかサッパリわからなかった


「お兄ちゃんが全力で私たちの事を守ろうとしてくれているのは嬉しいけど、その度にお兄ちゃんが傷ついたり危険な事をするのは私には耐えられない。だから……」

「だから?」

「お兄ちゃんを監禁してもう外には出さない、他人とも関わらせない……ずっと私が傍にいてお兄ちゃんが危険な事をしないように、お兄ちゃんが傷つかないようにする」


 遊華の言いたい事はこうだ。俺は遊華たちやその関係者に危険が迫ったり、危険に晒されたりした時に自身の事を犠牲にしてでも守ろうとするから、そうしないために俺を監禁し、外界と完璧に遮断する


「遊華……」

「さぁ、お兄ちゃん……これからはずっとずーっと一緒だよ」


 遊華はいつもの笑顔で俺に微笑んできた。ただし、目に光はなく、今の遊華に何を言っても無駄だという事は火を見るよりも明らかだ


「遊華1ついいか?」

「うん、なあに?お兄ちゃん」

「飯を食わしてくんない?」


 目隠しは既に外されており、手足の自由が効かないという事以外はいつもと同じだが、空腹には耐えられん


「うん、いいよ。待っててすぐに持ってくるから」


 遊華は俺の飯を取りに部屋を出た。この隙に拘束を解ければいいが……


「やっぱダメか……まぁ、簡単に解ければ苦労しないか」


 遊華さん、ここまでしなくても……


「お兄ちゃん、持ってきたよ」


 遊華が朝食を持って戻ってきた。よかった……拘束解こうとしているところを見られなくて


「ああ、ありがとう」

「うん、どういたしまして」


 俺はこの飯に乗じて両手の拘束を解いてもらえないかという事を考えた


「遊華、両手が拘束されてて飯が食えんから外してくれると助かるんだが」

「あ、そうだよね。さすがにそれじゃ食べられないよね」


 遊華よ、わかってくれて俺は嬉しいぞ


「そ、そうなんだよ。だから外してくれないか?」

「私が食べさせてあげるよ」


 予想外の答えが遊華から返ってきました


「い、いや自分で食えるし……」

「お兄ちゃんは私に食べさせられるの嫌?」


 遊華、涙目でこちらを見るんじゃありません……


「嫌じゃないです……」


 飯に乗じて手の拘束解いてもらおう作戦は失敗に終わったか…………ならば、次なる作戦だ!


「なぁ、遊華」

「何、お兄ちゃん」

「トイレに行きたいんだが」

「そう、ならここにしたらいいよ」


 遊華が取り出したのは2リットルのペットボトルだった


「い、いやぁ、さすがにそれは……」


 俺は介護を必要としてないんだが?それと、俺は妹の前でする趣味はない


「お兄ちゃん」

「な、何だ?」

「お兄ちゃんが拘束から逃げようとしているのはお見通しだし、私はそれを解く気はないから」


 遊華は最初から俺が拘束を解こうとするのはわかっていたと言うのか……ならば、もう遠回しに言う必要もないか


「遊華、頼むからこれを解いてくれないか?」

「いや」

「お願いだ」

「いや……」

「遊華……」

「いや!!」


 今の遊華はただの駄々っ子の様に見える……そう、欲しいおもちゃを買ってもらえなくて駄々をこねている子どもだ。つまり、俺が熱くなったらそれこそジリ貧になってしまう


「遊華が嫌なら別にこの拘束を解かなくていい……ただ俺の話を聞いてくれるだけでいい。それはできるな?」

「うん」

「確かに俺は昨日、危険な事をした。それは完全に俺に非がある……だがな、遊華たちは声優っていう人前に出る職業だろ?」

「うん……」

「だから、俺は遊華たちに怪我なんてしてほしくなかった。だが、俺が自分を犠牲にするような真似をした結果が遊華にこんな事させてる事もまた事実だ」


 そう、これは遊華が俺を思っての行動なんだから俺に強く咎める資格はないのは俺が1番よくわかっている


「…………」

「だけどな、このまま拘束されたままだと遊華と出かける事も遊華を抱きしめる事もできないんだが……それでもいいのか?」

「お兄ちゃんとデートできないのも抱きしめてもらえないのも嫌……」

「じゃあ、これ外してくれるな?」

「うん……」


 ようやく遊華は俺の拘束を解いてくれた


「遊華、おいで」

「うん……」


 俺はちょっと行動力のありすぎる妹を優しく抱きしめた


「お兄ちゃん……あの……」

「謝るのはナシだ。元は俺が悪いんだからな」

「うん……」


 落ち着いた遊華に今回の事はお互い様だという事を伝え、この話はこれで切り上げた


 余談だが、俺は秋野さんと冬野さんにも心配をかけた事を謝り、その後は何事もなく女子+俺のお泊り会は終了した。1週間振りに帰宅した香月と美月に俺のした事について3時間は説教をされたことは言うまでもない



今回は遊華に説教と拘束をされる話でした。後半は遊華が暴走したような感じになりました

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!

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