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私と遊が初対面した日の事を話す件について

今回の語り部は香月になります!遊と初対面したあの日に戻りますが・・・

 今回は私、藤堂香月が遊の代わりに語り部を務めようと思う。だが、何から話したものか……そうだな、遊華ちゃんが遊を連れて帰って来た日の話をしようか。あの日はよく晴れた日だったな……


「ふぅ、今日も疲れたな」


 いつもなら同僚と途中まで一緒に帰宅するのだが、なぜか今日は1人で帰りたい気分だった


 そう、いつもと変わらない日常、いつもと変わらない職場と自宅を往復する日々、そして……いつも周囲に期待されるお姉さまキャラ。私はとうに疲れ果てているのかもしれない


「こんな時に私を理解してくれる人がいてくれたらなぁ」


 私はありもしない幻想に思いを馳せていた。


「私を理解してくれる人か……そんな人いるのかな」


 そう、私を理解してくれる人なんてこの世のどこにもいない……理解してくれそうな人は1人いる。少なくともあっちは私の事を知らないし、私も写真と遊華ちゃんの話の上でしか知らないのだからな。


「遊か……1度でいいから会ってみたいな」


 私は1度もあった事のない義弟の遊の事を考えていた


「今日の私はどうかしているな。遊華ちゃんから聞いているじゃないか、遊は10年前からずっと行方不明だって」


 そう、義弟の遊は10年前の今日、突然行方がわからなくなったらしい。らしいというのは私は遊華ちゃんと父さんの話でしか遊の事や遊が行方不明になった事を知らない


「はぁ、遊に会ってみたいなぁ……」

「誰に会ってみたいの?」

「うひゃあ!?」


 私は後ろから声を掛けられたせいで驚いて変な声が出てしまった


「か、香月ちゃん!?いきなり変な声を出さないでよ」

「な、なんだ、美月か……」


 私が振り返ると美月がいた。まさか、帰り道で美月に遭遇するとは


「なんだとは失礼な!せっかく香月ちゃんを見かけたから声掛けたのに」

「す、すまない、ちょっと考え事してたもので」

「それって10年前にいなくなった義弟の遊ちゃんの事?」

「ああ、遊が今日帰ってきたらいいのになってね」

「そうだね……」


 私と美月は奇跡が起きない限りは絶対に会えない義弟の遊の事を考えていた


「考えても仕方ないな。早く家へ帰ろう」

「うん!そうだね!けど、いつかは会いたいよね……」

「そうだな、いつか会えるといいな……」


 私と美月は義弟の遊にいつか会えることを信じて家に帰る事にした。


 そう、私たちが会いたいと思っていた人物に今日会えるとは夢にも思わずに


「こんな暗い話はもう止め止め!さぁ、帰ろう!」

「ああ」


 私と美月は再び暗い話を避け家へ向かって歩き出した


「それにしても、遊華ちゃん綺麗になったよね~」

「そうだな、初めて会った時は可愛かったが、今ではすっかり大人になったな」

「今でも周囲とは距離を置いて接している事には変わりないけどね~」

「ああ……」


 遊華ちゃんとは本当の姉妹ではなく、義理の姉妹だ。私たちは母さんの連れ子で遊華ちゃんは義父さんの連れ子だ。私たちが出会ってから今日で10年が経つ


「私たちと遊華ちゃんが出会って10年か……時が経つのは早いものだな」

「そうだね~私たちももう27と26だし」

「あと数年も経てば私たちも30か……」

「うっ……そうだね」


 今度は年齢の話で暗くなってしまった


「年齢の話は止めよう……なんか悲しくなる」

「そうだね、私たちはまだまだ若いもんね!」


 年齢の話を切り上げたところで私たちは家の前まで来ていたらしい


「とにかく、家に入る時は明るく振る舞おう」

「うん!暗くなって家族に心配かけたくないしね!」


 私と美月は家ではなるべく明るく振る舞おうと決め、玄関のドアを開けた


「たっだいまー!」

「ただいま」


 私たちが玄関に入ると見慣れない男物の靴があった


「見慣れない靴だが、お客さんでも来ているのかな?」

「多分、そうじゃない?」

「遊華ちゃんの親しげに話す声が聞こえるが、客というのは遊華ちゃんの彼氏かな?」

「さぁ~それはリビングに行ってみればわかるんじゃない?」


 遊華の彼氏かどうか確かめるべく私と美月はリビングに向かった


「あら、二人ともおかえり。遊華ちゃんも帰ってきてるわよ」


 母さんから遊華が帰宅している事を知らされるが、私は見慣れない靴の主の正体が気になった


「ああ、ありがとう母さん。それより、玄関に見慣れない靴があったが客でも来ているのかい?」


 客……ひょっとしたら遊華ちゃんの彼氏かもしれない。粗相がないようにしないと


「そうだよ~言ってくれればお土産買ってきたのに~」


 美月の言う通りだ。言ってくれれば来客用の茶菓子くらいは買ってきたのに


「お客さん……ある意味お客さんね」


 ある意味?ある意味ってどういうことだろう……私は来客の正体が気になって仕方なかった


「二人とも早く荷物を片付けてきなさい」


 来客の正体が気になるが、母さんの言う通り一旦荷物を部屋に置いてからでも遅くはない


「そうだな、一旦荷物を部屋に置いてくるとしよう」


 私は母さんの言う通りに一旦部屋へ戻る事にした


「私も~」


 美月も同じく部屋へ戻る事に賛成しリビングを出た。出る時にチラッと見えたのは見た目だけで判断するなら私たちよりも年下の少年だった


「美月、あの少年が遊華ちゃんの彼氏なのかな?」

「どうなんだろうね~?ひょっとしたら家出少年だったりして」


 私は美月の予想に言葉を返すことができなかった


「じゃあ、私はここで」

「ああ、私も荷物を置いたらすぐに行く」


 私と美月はそれぞれの部屋へ戻った


「あの少年……10年前に行方不明になった遊によく似ていたな」


 10年前にいなくなった人間がそう簡単に見つかるわけがない。私はあの少年が遊ではないか?という仮説を立てたが、その仮説はすぐに否定する事にした


「とにかくリビングに行くとしよう」


 私は荷物をおいてリビングに行く事にした


「香月ちゃん」

「美月……」


 同じタイミングで美月が部屋から出てきた


「一先ずリビングへ行こう。そうすればあの少年の正体もわかるだろう」

「そうだね」


 私たちは階段を下りてリビングへ向かった。


「よし、行くか」

「うん」


 リビングのドアの前に着いた私たちは意を決してドアを開けた。リビングのドアを開けるだけで意を決するも何もないんだが……


「遊華ちゃん、ただいま」

「遊華ちゃ~ん、たっだいま~」

「おかえり、お義姉ちゃんたち」


 私たちは努めて明るくいつも通りに遊華ちゃんにあいさつをしたが、遊華ちゃんから返ってきたあいさつが心なしか明るかった


「ゆ、遊華。そろそろ説明と紹介してほしいんだけど」


 少年がおずおずと口を開いた。しかし、見れば見るほど写真で見た遊にそっくりだ


「あ、ごめんお兄ちゃん」


 お、お兄ちゃん!?この少年が10年前にいなくなった遊だと言うのか!?


「そうだな、私たちも君が誰か知りたいところだな」


 私は目の前の少年が遊だという確証が欲しくてあえて紹介するように促がした


「そうだね~」


 美月は知ってか知らずか私に賛成した


「じゃあ、まずはお兄ちゃんにお義姉ちゃんたちを紹介するね」


 お兄ちゃんという事は……目の前の少年はやはり遊という事になるのか?


「ああ、頼む。じゃないと俺そろそろ理解が追い付かない」


 どうやら少年はここに来るまでにいろいろあったらしく、そろそろ理解が追い付かなくなる寸前に達していた


「じゃあ、こっちのショートカットで口調が男に近いのが一番上の香月」


 男に近いって失礼だな。私だって好きでこんな口調なわけじゃないのに……


「香月だ。よろしく」


 とりあえず自己紹介しておくことにした。ここで口調の事をあれこれ言ったら話が前に進まないしな


「よ、よろしくお願いします……」


 少年はどもりながらも私の紹介に対し、返してくれた。ん?顔が赤い気がするな……私に見とれていたとか?そんなわけないか……私はこんなだし


 その後の話を少しだけしよう……この少年は10年前にいなくなった藤堂遊本人であり、今日いきなり過去から未来に飛ばされてきたらしい。信じがたい話だが、いなくなったのが10年前で遊華ちゃん曰く10年前の容姿のままだそうだ。これじゃ信じるほかないな


「遊……写真で見ただけだが、遊なら本当の私を見てくれるかもしれない」


 私は部屋で1人になり、遊に対して淡い希望を抱いていた


「この年で白馬の王子様に憧れるとは……私もまだまだ若いって事かな」


 今日は遊華ちゃんに譲ったが、遊と一緒に寝る時に甘えてみようかな……





今回は香月から見た遊との初対面にしました

香月だってまだまだ若いし女の子!

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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