俺が羽月さんの愚痴を聞く件について
今回は遊が羽月の愚痴を聞く話になります
まぁ、人間生きていればいろいろあるよなぁ・・・
夜のテンションとは不思議である。人によっては大胆な行動に出る。人によっては恐ろしく考え方が後ろ向きになったりとまぁ、人によっていろいろだ。何でこんな話をしているかというと、俺は今……
「遊君、聞いてるの?」
「は、はい、聞いてますよ。羽月さん」
義理の母である羽月さんから愚痴を聞かされていた
「じゃあ、私が何の話をしてたか言ってみて」
「父さんの女癖が悪い話ですよね?」
「違う」
「父さんが美人に弱い話でしたっけ?」
「違う」
俺は羽月さんが感じているであろう親父の不満を言ってみたが、どうやら違ったようだ
「遊君、聞いてなかったでしょ?」
「ごめんなさい、聞いてませんでした」
「じゃあ、もう1回言うから今度はしっかり聞いててね」
「はい」
「遊君はどうして私をお母さんって呼んでくれないの?」
親父の話かと思ったら俺の話だった。まぁ、話というか愚痴というか……っていうか、俺に対する愚痴を俺に言ってどうするんだ?
「秘密です」
羽月さん嫌いじゃないし、家族として認めてないわけじゃないけど、俺は過去から来たわけで……いきなり未来で義理の母ができました。なんて言われても困るわけで……
「ダメ、話すまで逃がさない」
マジですか?羽月さん……
「い、いやでも、もう夜遅いですし……ね?」
えーただ今の時刻は午前2時59分であり、もう午前3時になろうとしている
「遊君、私言わなかったかしら?話すまで逃がさないって」
「い、いや、そう言われましても……」
「……話すよね?」
羽月さんの圧力がリビングに浸透していく。そんなに圧力かけないでくれませんかね…………
「俺が嫌だと言ったら?」
「…………」
羽月さんは俺が拒否する可能性を提示したとたんに黙ってしまった
「そもそも、いきなり呼び出して何かと思えば俺の羽月さんの呼び方についての話だなんて、どうしたんですか?」
「…………」
羽月さんはまたも黙り込んでしまった。遊華たちもそうだが、呼び方や敬語を使うか否かを決めるのはあくまでも俺自身だ。そりゃ、本人にとって寂しく感じる気持ちもわからなくはないが……
「まぁ、別に隠すようなことじゃないんで話しますけど」
「……話して」
羽月さんは見るからに元気がなかった。
「理由はわかりませんが、俺は過去の世界からいきなり未来の世界に飛ばされました。それは羽月さんも知ってますよね?」
「ええ、もちろん」
「未来に飛ばされた俺は遊華に連れられる形でこの家にやって来ました」
「そんな事わかっているわ!遊君がどうして私をお母さんって呼んでくれないのかの理由を話しなさい」
落ち着いてるように見えてこれでかなりイラついてるのかもな……こういうところが美月に受け継がれているのか
「この際はっきり言いますが、それが例えどんな事であっても受け入れられますか?」
「ええ、受け入れるわ。だから、この際はっきり言ってちょうだい。遊君が私を母親……家族として認められないと言うのならそれでも構わないわ」
あ、どんどんネガティブになってる。こういうところは香月に受け継がれているのね……ぶっちゃけ隠すような事じゃないからいいんだけど
「はっきり言いますけど、羽月さんを家族として認めてないって事はないんです」
「うん」
「ですが、俺は過去から来た人間です。当然ながら俺の本当の母さんが亡くなった事も父さんが羽月さんと再婚した事も俺はここへ来てから知りました」
「そうね。私も遊君の事は話には聞いていたけど、実際会ったのはあの日が初めてだったし……」
羽月さんが言うあの日とは俺が未来に来た日の事を指しているのだろう
「羽月さん話の上あるいは写真の上で俺を知っていたかもしれません。しかし、俺は羽月さんの事も香月と美月の事も初めて知りました」
「細かい事はこの際いいわ。結論を言ってちょうだい」
「…………いきなり母さんと呼ぶのは俺にはハードルが高いので勘弁してください」
「…………」
羽月さんは黙ったままなんだが……リアクションしてください……いや、黙ったままだと俺が困るんだけど
「…………いい」
「はい?」
「可愛い!遊君!」
今この人は俺の事可愛いって言った?
「男の俺が可愛いとか言われても嬉しくないんですけど」
「そう?私は可愛いと思うけど?」
「俺が可愛いってところを肯定しちゃいけないと思うんですけど……」
俺が可愛いって言われてお礼を言った姿か……想像しただけで気分が悪くなってきた……
「あら、もうこんな時間だわ」
羽月さんにつられて時計を見ると時刻は午前4時前である。あの押し問答と俺が理由を説明するだけで1時間ちょっと掛かってたのか
「じゃあ、俺は寝ますんで」
俺はパソコン部屋へと向かおうとした
「待って」
が、羽月さんに阻まれてしまった
「まだ何か?」
「一緒に寝ましょう」
「なぜ故に?」
「1度息子と一緒に寝たかったの!」
俺は有無を言わさずに羽月さんに寝室まで連行された。
「さぁ、寝ましょうか?遊君」
「「「ちょっと待った!」」」
俺が寝室に連行され、いよいよもって寝ようとした時に野生のモンスターたち……もとい、遊華、香月、美月が現れた
「どこから湧いて出た……」
「何?3人とも?」
「「「私も一緒に寝る!」」」
「ダメよ」
羽月さんのこの言葉が引き金となり、4人はぎゃあぎゃあと言い争いを始めた
「みんなで寝るって選択肢はないのか?この親子は」
きっと俺のこの意見は今の4人には届かないんだろうな……なんて思いながら俺はさっさと寝るのであった。
あれ?身体が重い……前にも似たような事があったっけ……
「ん?もう朝か……」
俺は時間を確認しようと手を伸ばした
「もう!お兄ちゃん!大胆!」
俺の手は時計ではなく、遊華のある部分を掴んでいた
「…………どうなっている?」
ラブコメの主人公ならこんな時は大抵テンパるが、俺は寝る前に羽月さんと遊華たちが言い争いをしている姿を横目に就寝した。その後何があったかなんて簡単に予想がつくが…………
「お兄ちゃんが寝たと気が付いた私たちは言い争いを止めてそのまま寝ただけだど?」
俺が聞きたいのは何で起きた時に遊華の身体に触れる形になっているのかを聞きたいんだが?
「どうして俺は遊華の胸を触っている事になっているのかを聞いているんだ」
「だって、私が寝る前にお兄ちゃんの手を胸元に持って行ったからだよ」
よしわかった。この妹は俺を社会的に抹殺したいんだな……
「羽月さんや香月、美月はどうした?」
「お義母さんたちならそこにいるよ?」
遊華の指差した先……つまり俺の右側に羽月さんたちはいた
「結局みんなで寝たのか」
最終的にみんなで寝るなら最初から喧嘩なんかしなくてもよかったのでは?
「お兄ちゃん……」
遊華は情熱的な視線を俺に送ってくる。うん、おかしくね?俺何もしてないし……
「遊華……」
俺も遊華に倣っておくか……別に妹で遊ぼうとかそんな気はない。多分
「お兄ちゃぁん……」
遊華はそっと目を閉じた
「遊華……」
俺は遊華の顔を包むようにして両手で掴んだ。そして……2人の距離はゼロに……
「俺は朝飯作りに行くから羽月さんたちを起こしておいてくれ」
ならなかった。
「そんなぁ……お兄ちゃぁん……」
遊華はションボリしていた。何キスされると思った?残念、実の妹にキスするほど俺は飢えてない
「じゃあ、起こすの任せた」
俺は遊華に羽月さんたちを起こす事を任せ、キッチンに向かった
「さて、朝飯でも作るか」
俺は冷蔵庫の中から卵とハムを取り出し、人数分のハムエッグを作る事にした
「後は適当にサラダでも作ってっと」
よし、ハムエッグとサラダが出来た。パンは……各自の自由にしよう。
「パンは焼いて食べるか焼かないで食べるかはその日の気分や人それぞれ好みが違うからな」
俺が朝飯を用意し終えた後だった
「お兄ちゃん、おはよう」
遊華が一番最初に降りてきたか
「おはよう。朝飯できてるぞ」
「わー、おいしそう」
「パンは自分でやってくれ。俺は遊華たちの好みはわからん」
「うん」
遊華はパンをトースターに入れパンを焼き始めた
「おはよう、遊ちゃん」
「おはよう、美月」
「遊、おはよう」
「ああ、おはよう。香月」
「遊君、おはよう」
俺は羽月さんの事を感謝の意味を込めてこう呼んだ
「おはよう、義母さん」
「「「「え?」」」」
「何だ?何か変な事言ったか?」
俺が羽月さんを母と呼ぶ事は珍しい事らしい……4人ともフリーズしているし
「こりゃ慣れるまで時間が掛かりそうだな」
俺も羽月さんを母と呼ぶ時は恥ずかしい。お互いに慣れなきゃいけないという事か
今回は遊が羽月の愚痴を聞く話でした。後半は遊が朝食を作ってましたが・・・
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!