俺が家で香月と2人きりな件について
今回は家で香月と2人きりのお話になります
友人と再会した時、皆さんは何を思うだろうか?例えば、学生時代の思い出に浸ったり、昔話に花を咲かせたりといろいろあるだろう……藤堂遊は友人と再会した結果……
「頭が痛い……心なしか身体も怠いような気がする……」
どうやら、風邪を引いたようです……まぁ、激変した敬と再会したせいだけではなさそうだが……
「ここんとこいろいろあったしな……身体が急激な変化に耐えきれなくなったのかもしれないな」
「遊、身体の具合はどう?」
「まだ怠い……」
今日は遊華と美月は仕事で不在、親父と羽月さんも仕事で不在である。結果、香月と2人きりなのだ
「遊、今日は付きっきりで看病するね」
「ああ、よろしく頼む。と言いたいが、香月にまで風邪を移すと困るから俺に近寄らない方がいいぞ」
「遊、香月の事嫌いなの?」
何をどう捉えたのか香月は俺に嫌われたと思ったらしい……
「いや、香月に風邪を移したら悪いし、仕事に支障をきたすだろ?別に嫌いじゃないぞ」
「よかった……嫌われてないんだ……」
俺は香月を嫌いだなんて言った覚えは1回もないんだが……
「俺は香月の事好きだぞ」
「遊……」
「家族としてな」
「もう!遊!」
香月は剥れてしまった。はぁ、俺が家族を恋愛対象として見たら変だろうが
「それにしても、香月と2人きりとか珍しい事もあるんだな」
「今日は遊華も美月もいないし、父さんも母さんも仕事だし。今日は2人きりだね……」
香月は俺の身体にすり寄ってきた
「風邪移るから離れろ」
「嫌……今日は遊と一緒にいる」
はぁ、たった数日……でもないか、もうすぐ俺が未来に来てから1か月か……とにかく、俺は遊華と美月もそうだが、香月も俺の事になると周囲が見えなくなるというか、何というか……
「どこまで本気なんだか……」
「遊の事ならいつも本気だよ」
「ありがとう。冗談でも嬉しいよ」
「…………遊のバカ」
香月はボソッと何か言ったが、身体の怠さも相まって何を言ったかよく聞こえなかった
「香月、俺は少し寝る」
「うん、おやすみ。遊」
俺は眠りにつくのにそう時間が掛からなかった。
「ん?ここはどこだ?」
気が付くと俺は何もない部屋にいた
「何もないな……窓もなければ出入り口さえない」
なぜ、俺はこんな部屋にいるんだ?
「お兄ちゃん」
「遊華……」
「遊ちゃん」
「美月……」
「遊」
「香月……」
俺は遊華たちに呼ばれた。あれ?でも何で遊華たちがここに?
「3人ともなぜここに?」
「それはね、お兄ちゃん」
「私たちはね、遊ちゃん」
「3人とも遊の奥さんだからここにいるんだよ」
待て、俺は結婚できる年齢じゃないし、そもそも、俺は遊華たちと結婚する気はない。
「待て、俺は結婚した覚えはない」
「「「…………」」」
俺が真実を告げると3人は黙ってしまった。何か悪い事した気分だが、ここで嘘を吐いても仕方ない
「そっか、お兄ちゃんは嫌だよね?」
「何が?」
「遊ちゃんは私たちと結婚なんてしたくないよね?」
「したくないとは言ってない」
「でも、遊は迷惑そうだった……」
「そんなことはない」
3人とも悲しそうな表情で消えてしまった。
3人とも消えてしまったし、俺もそろそろ起きるか……
「夢か……しかし、なんだってあんな夢を……」
「んぅ……遊?起きたの?」
目が覚めた俺の横では香月が寄り添うようにして寝ていた。どうやら俺が目を覚ましたと同じタイミングで目を覚ましたらしいな……
「あの妙な夢は香月が隣で寝ていたからか……それとも、風邪のせいか?」
俺が遊華たちの夢を見たのは3人に思う事があるからか、それとも単なる偶然か……
「俺が遊華たちの夢を見たのは神のみぞ知るってか……?」
「どうしたの?遊?どっか痛い?」
「何でもないさ」
俺は香月の頭を撫でた。
「そう?何か欲しいものある?」
「そうだな、飲み物が欲しいかな」
「わかった、ちょっと待ってて」
香月は部屋から出て飲み物を取りに行った
「少し寝たから身体がかなり楽になったな……これも香月の看病のおかげかな」
少しして香月は2人分のスポーツドリンクを持って戻ってきた
「お待たせ、遊」
「そんなに待ってないから大丈夫だよ」
「そ、そう?」
香月は不安そうだが、いちいち不安そうにしないでくれ……なんか俺が悪い事した感じになるから
「ああ、それより喉が渇いた」
「う、うん、そうだね」
香月は500mlのペットボトルを俺に渡してくれた。
「ありがとう、香月」
「うん、それより、身体の調子はどう?」
「だいぶ楽になったよ」
「そう、よかった」
俺は朝の身体の怠さがすっかりなくなっていた。大方風邪の原因はストレスか何かだろうな……
「多分、ここ最近の変化で疲れただけだろ」
「変化……」
香月は変化という言葉に反応した
「どうした?別に香月が気にする事なんて何一つないんだぞ?」
「そっか……私……いや、私たちが振り回したせいじゃないんだ」
香月が気にしていたのは俺を振り回した事か……っていうか、自覚あったのね
「はぁ、香月たちに振り回される事を嫌だと思った事はない。そりゃ、疲れないか?って聞かれたら回答に困るが……それでも、遊華にしてみれば10年ぶりの再会だし、香月や美月にしてみれば初めての弟だしな」
「うん……」
「だから、気にするな。遊華もそうだが、香月や美月は何も考えずに甘えてろ。俺にできる範囲でなら答えてやる」
今の俺に言える精一杯の事だ。これ以上の事は何も言えん
「遊、いつもは私たちが振り回している分、今日1日は遊のために私がいろいろしてあげる」
「ああ、ありがとう」
いろいろしてあげるって言われてもなぁ……香月にしてほしい事なんて特に思い浮かばない。しかし、何も頼まないってのも香月に悪いな。あ、そうだ
「香月、さっそく頼みごとがあるんだが。いいか?」
「うん!何でも言って!」
「じゃあ、添い寝してくれ」
「う、うん」
これしか思いつかなかったんだ。悪いか?安直とか言うなよ
「自分で言っといて何だが、安直な頼みだよなぁ」
「安直でも何でも遊からの頼みごとなら私は何だって嬉しい」
嬉しいが、さすがに無茶な要求はしないぞ……
「そうか……だが、俺は無茶な要求はしないぞ」
「うん、そこは遊を信じているから大丈夫だよ」
香月の俺に対する信頼度の高さは一体何なんだ?俺は疑問が残る中、香月と再び眠りについた。
「遊、ずっと一緒だよ」
俺が眠りにつく前に香月から聞いた最後の言葉だった。
どれくらい眠っただろう?俺は香月に抱きしめられる形で寝ていたらしい……
「香月……寝てると美人系なんだな」
俺は香月の頭を撫でながら唐突にこんな事を思っていた。
「俺は香月を意識しているのか?」
「ゆう……」
寝言でも俺を呼んでいるのか……
「香月を起こすべきなのか……それとも、このまま寝かせておくべきなのか……寝かせておくか」
俺は香月を起こさないように布団から出てリビングに向かった
「さて、もう動いても問題なさそうだし、香月にはいろいろしてもらったし……晩飯くらい俺が作るか」
俺は香月にしてもらってばかりじゃ悪いのでせめて晩飯くらい作ろうと決意し、調理にとりかかるために冷蔵庫をチェックし始めた
「これならチャーハンが作れるな」
俺はチャーハンとスープを作り始めた。まぁもっとも俺が作れるのはこれくらいしかないけどな
「さて、やりますか」
まさか未来で俺が料理をすることになるとはな……
今回は家で香月と2人きりでした!遊も未来に飛ばされたりといろいろあって疲れたんでしょう・・・
という話でした。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!