美月が意外と臆病かもしれなかった件について
今回は美月メインのお話です
はい、毎度おなじみ藤堂遊です。いきなりですが、俺は今、義理の姉である美月の部屋にいます。元から今日は美月と一緒に寝るという約束だったからいいけど……
「ようやく遊ちゃんと一緒に寝れる~」
美月さん、密着しすぎじゃないですかねぇ?
「俺と寝るだけでそこまで嬉しいのか?」
「うん、嬉しいよ」
美月が真面目なトーンで答えた
「遊ちゃ~ん」
「はいはい、何でございましょうか?」
「えへへ~呼んだだけ~」
「さいですか」
美月は他の2人といる時と変わらないんだな
「遊ちゃん、もう2人からはそれぞれの事聞いてるよね?」
「まぁな」
美月は“そっか……”と呟くだけだった。何だ?美月も何か俺に話があるのか?
「美月も話したい事でもあるのか?」
「遊ちゃんにはわかっちゃうんだ」
「別に遊華と香月がそうだったってだけだ」
「そう……」
まぁ、俺は美月から強引に聞き出すつもりはない。むしろこのまま何事もなく寝かせてくれ
「じゃあ、私も話さないわけにはいかないかな」
「好きにしろ」
「うん、じゃあ話すね」
「わかった」
美月が話したいならそうさせるか
「私さ本気で人を好きになった事ってないんだ」
「へぇ~」
意外だ……美月なら男なんて引く手数多だろうに
「まぁ、遊ちゃんの事も遊華ちゃんが執着するからどんな人なんだろう?って思っていた程度だった」
「でも遊華や香月がいる前だと張り合ってただろ」
「うん……だけど、それはあくまで遊華ちゃんを煽る為にしていたこと」
美月さん、性格悪くね?
「美月って意外と性格悪いんだな」
「……ごめんなさい」
「そこは謝るんだ?」
美月って変なところで素直なんだな
「香月は惚れっぽいっていうか、あれで夢見る乙女な部分があるから遊ちゃんなら“本当の私”を見つけてくれるかもって思っていた節があった」
「そんな期待されても困るんだが?」
「ううん、現に見つけたよ。今日の朝の香月を見て確信した……遊ちゃんは見つけたよ」
俺は大した事はしてない。ただ、香月に自分の為に頑張れって言っただけだ
「で?本気で人を好きになったことがなく、遊華を煽る為だけに俺とスキンシップを取ったりしていた美月は俺にどうしてほしいんだ?」
「遊ちゃん、何か嫌な感じ……」
そりゃ、美月のせいで遊華に睨まれた事もあるし、香月の機嫌を取らなきゃいけない状況に追い込まれた事もあるからな。この程度の仕返しは許してほしいもんだ
「自業自得だろ。香月から聞いたが、昔は苛められていたらしじゃないか」
「香月……その事話しちゃったんだ……」
「まぁな。それを踏まえて美月が今の性格になった理由を当ててやろうか?」
俺は美月を挑発してみた。引っかかるかはわからんが……
「ふ~ん、やれるものならやってみれば?」
美月は俺の挑発に引っかかった
「じゃあ、遠慮なく言わせてもらうぞ?」
「どうぞ」
美月は遊華たちといる時の雰囲気ではなく、どこか挑発的な雰囲気だ
「美月は人を手放しで信用するのが怖いんだろ?」
「どうしてそう思うの?」
「昔苛められたって話を聞いた時にひょっとしたら味方のフリして近づいて裏切られるって事をされたのかもしれないと思っただけだ」
「…………」
美月は何も言わなかった
「何だ?当たりか?」
「……当たりよ」
美月は一言だけの答えしか言わなかった
「で、美月は考えたんだろ?」
「何を?」
「自分に好意を持っていると勘違いしている男達をどうやってやり過ごすかをだ」
「それを考えた私が出した答えがこれって言いたいの?」
「その通りだ。男子にも女子にもいい顔してもし勘違い男が現れた時に周囲の人間を利用しよう。そう考えたってところか」
美月は再び黙ってしまった。
「また当たり。すごいわね遊ちゃん」
「もう隠す気ないんだな」
「まぁね、ここまでばれてしまったし……隠す必要もないしね」
さて、ここからが正念場だな
「さて、ここからが本題だが本当は美月も人を本気で好きになりたいんじゃないのか?」
「…………っ!」
美月の目は一瞬だが揺れた。いや、揺れたように見えた
「やっぱりか……でも、仕方ないよな」
「な、何が?」
「今までずっと人を好きにならないって自分に言い聞かせてきたんだし」
「…………っ!」
今度は美月の目が確実に揺れた
「……が……かるの?」
「ん?何?」
「アンタに私の何がわかるの!?私は何も悪い事なんかしていない!私は誰かを特別扱いで優しくした事なんてないのに……なのにどうして……どうしてなのよ……」
美月はそれだけ言うと泣き出してしまった。
「天然キャラってのも意外と大変なんだな」
俺は泣いてる美月の頭を撫でた。遊華や香月もそうだが、俺と初めて一緒に寝る女ってのは重たい話をして泣くのが流行っているのか
「遊ちゃん……お願い、遊華ちゃんと香月にしたことを私にもして……」
マジですか?何か俺チャラ男っぽくなってるの気のせいか?
「どうせ断れない状況だし……ほら、おいで」
「うん……」
俺は遊華や香月にしたように美月を抱きしめた。
「はぁ、どうしてこんなになるまで無理したかな……」
「え?」
「別に美月が誰を好きになろうが美月の勝手だ」
「うん」
そう、誰を好きになろうが美月の勝手だ。
「逆に美月の事を誰が好きになろうがそいつの勝手だ」
「うん」
人が人を好きになるのは自由だからな
「美月に嫉妬してる暇があるなら自分を磨く事に精を出してりゃいいものを……まぁ、それだけ美月が魅力的だったって事か」
「遊ちゃん?」
「悪い、最後の方は忘れてくれ」
自分で言っててあれだが、恥ずかしいな……
「ううん、忘れない……絶対に忘れないよ」
「お願いです忘れてください」
「うん、嫌だ」
はい、俺の黒歴史が増えましたね
「それより遊ちゃん」
「ん?何だ?」
「私好きな人できちゃった」
「そうか、そりゃよかった」
美月も本気で好きになれる人ができてよかった
「私が本気で好きになったのは遊ちゃんだよ?」
「は?俺?」
「うん」
「俺は好かれる事した覚えないぞ」
「遊ちゃんに抱きしめられた時すごく安心した。それに誰を好きになろうが私の勝手なんでしょ?遊ちゃん自分で言ったんだよ」
そりゃ言いましたけど……だからって俺を好きにならんでも……
「マジで?遊華や香月を煽る為だったりとかしない?」
「本気だし、遊華ちゃんや香月を煽る為じゃない」
俺やっぱこの家出て行こうかな……
「これからは私もたくさんアピールしていくから覚悟してよね!遊ちゃん!」
俺生きて元の時代に帰れるのかな……
「今までアピールしてたよね?」
今の俺にはこの一言が精一杯だった
「知りませーん。さて、重い話はお終いお終い!遊ちゃ~ん」
こうなりゃ自棄だ。俺はこのあと美月を思う存分甘やかした。後の事?そんなの明日の俺に任せとけばいいんだよ!って事で明日の俺、任せた!
「おっと……さっきまでの美月はどこ行った?」
「挑発的な私が好きならそうするけど?」
「別に今までの美月でいい。まぁ、挑発的な美月も今までの美月もどっちも変わらないが」
そう、甘えんぼな部分も性格が悪い部分も挑発的な部分も全部ひっくるめて美月なんだから……
「そっか……」
「今までの美月も今の美月もどっちも同じ美月だからな。今更変える必要もないし、無理して変わらなくてもいいんだ」
「うん……」
こうして俺と美月の夜は更けていった
そして、俺の寝苦しい夜が始まった……正直、遊華と香月の時点で気づくべきだったのかも知れなかったと俺は後悔することになったのは言うまでもない
今回は美月メインのお話にしてみました!
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!