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俺が遊華と向き合う件について

今回は遊華と向き合う話です

遊華と向き合った後は・・・・

では、どうぞ

 いざ話すとなると緊張する事ってあると思う。いつも会っている人に大切な話をする時は特に。例えばプロポーズとかはいい例だと俺の中では思う。あとはそうだな……愛の告白とか?あれも緊張するなぁ……俺は誰かに告白した経験もされた経験もない。だが、愛の告白じゃなくても重要な話はこれからするけどな


「お兄ちゃん。話って何かな?」


 いつもと変わった様子はない遊華。だが、俺と遊華の本当の関係を知った今、遊華にお兄ちゃんと呼ばれるのは違和感がある


「話す前にコーヒーでもどうだ?」


 俺という奴はつくづくダメな奴だと思う。自分が絡んでない時は効率重視で物事を考え、それを実行するし、相手の言われたくない事や相手が目を反らしている事をズバズバと言う。そのくせ自分の事になると本題に入らずに全然関係ない事であやふやにしようとする


「そうだね、コーヒーでも飲みながらにしようか?」


 俺がこれからどんな話をするかを想像もしないで……


 ある程度コーヒーを飲み終わった後で俺は本題を切り出す事にした。とてもじゃないが、今回の話はコーヒーを飲みながらできる話じゃないからな


「遊華、本題に入っていいか?」

「う、うん……」


 さて、いよいよ本番だ。張り切っていこうか


「遊華、俺とお前は実の兄妹じゃなかったんだな」

「────!?」


 信じられないものを見るような目で俺を見る遊華。心底驚いてるだろう。きっと遊華の中じゃ俺がこの事実を知っているなんて思いもしなかっただろうし


「やはりな……だが、これで遊華の行動の全てに納得がいったよ」

「…………」


 無言で俺を見つめる遊華は誤魔化すでも怒るでもなければ当然、悲しむでも喜ぶでもない


「どうした?俺が知ってるのがそんなに意外か?」

「う、うん……お兄ちゃんはそれを誰から聞いたの?敬さん?浩太さん?それとも、お父さん?」


 俺と遊華が実の兄妹じゃない事を知ってたのは敬と浩太と親父だけだったか……まぁ、現在も生きている人間の中ではの話だが


「ミス声優コンテストの参加者から逃げる為に親父が残した隠し部屋で遊華の日記を見てそれで知った。だから、敬からも浩太からも親父からも聞いてない。俺が自分でたどり着いた」

「そっか……そっかぁ……知っちゃったんだぁ……このまま何も知らなければよかったのに……」


 一瞬だが、遊華から狂気にも似た何かを感じたが、今はそれを恐れている場合じゃない


「俺が知ったらいけない理由でもあるのか?遊華にとって都合が悪い事が」

「別にぃ~、そんなことぉ~、ないけどぉ~」


 妙に間延びしたしゃべり方をする今の遊華は何を考えてるか想像ができない。まさか、真実を知った俺を殺そうとか?


「都合の悪い事がないなら何だ?」

「いやぁ~、とうとう知っちゃったんだと思ってね……そっか、そっか」

「自己完結してないで俺にわかるように説明してくれないか?」

「うん、そうだね」


 向かい側に座っていた遊華は俺の方へ回り込んできた。そして────


「痛っ!」


 ソファーに押し倒された。幸いな事に頭を打つ事はしなかったが、遊華に肩をすごい力で掴まれているかから身体へのダメージはある事に変わりはない


「あ、ごめん……でも、お兄ちゃんが悪いんだよ……勝手に真実にたどり着くから……」


 ごめんと言いながらも俺の肩を掴む力は緩んでないぞ


「勝手にって……じゃあ、遊華は俺に真実を話す気はあったのか?敬や浩太、親父もだ。みんな俺に真実を話す気はあったのか?」


 敬も浩太も親父も俺が遊華を妹扱いするとガッカリしたような表情になった。ガッカリした表情になりはするが、誰1人として俺に真実を話してはくれなかった


「ないよ?だって話すとお兄ちゃんは私から離れていくでしょ?」


 真実を知っても俺は遊華から離れていく事はない。この世界に来てからずっと決めていた。俺は遊華の側にいるってな


「真実を知っても俺は遊華から離れていく事はない」

「嘘だっ!!お兄ちゃんは真実を知ったら離れていく!!私から離れていくんだ!!お兄ちゃんは私から、この家から出て行く!そうに決まっているんだ!!」


 自分から離れていくんだと決めつける遊華を見て俺は冷静になる。そして、同時に酷い言いがかりだとも思う。だって、そうだろ?俺が離れていくっていうのはあくまでも遊華個人の意見で俺がそう言ったわけじゃない。


「落ち着け、遊華。俺は離れていかない。遊華の側にずっといる」

「嘘だっ!!」


 何とか遊華を落ち着かせようとするが、こちらの話など聞く耳を持たない遊華。ここで俺まで怒鳴ったり騒いだりすると収集が付かなくなる。だから俺は冷静でいよう


「嘘じゃない。離れていくどころか俺はこの世界に来て遊華の側にいようって決めたんだ。それはどんな時でもどんな関係でも変わらない」


 俺は遊華から離れていかない。それが過去の世界であっても変わらない。それどころか、10年前に戻れたら俺は遊華に好きだって言うつもりでいる


「嘘……嘘だ……」

「嘘じゃない。俺は遊華から離れていかないし、遊華が望みさえすればずっと側にいる」

「嘘だ……嘘だ……」


 俺が側にいると言って尚、嘘だと言い続ける遊華だが、俺の肩を掴む力が弱くなってきた。これはチャンスだ


「遊華、俺は嘘なんか吐かない。遊華の側にいる」


 俺は遊華の隙をついて抜け出し、遊華を抱きしめた。結局はいつも通りのハグになってしまうが、この方が俺らしい


「本当?本当にお兄ちゃんは私の側にいてくれる?」

「ああ、俺は遊華の側にいる」


 俺は遊華の側にいる。これに嘘はない。だが、俺はここに来て1つだけ嘘を吐く事にする


「じゃあ、ずっと側にいて」

「ああ、そのつもりだ。10年前からそう決めていたからな」


 俺の嘘。それは、10年前から遊華の側にいると決めていた事だ。10年前は遊華の元から離れたくて仕方なかった。無愛想な妹、俺にだけ冷たい妹。俺はそんな遊華が嫌で高校卒業と同時に1人暮らしをするつもりでいた。だが、今は違う


「本当?」

「ああ、できる事なら10年前に戻って告白したいくらいだ」

「そっか……」


 遊華の顔は夕日に照らされたかの様に赤かった。いつもはリンゴみたいに真っ赤なのに


「まぁ、こんな事言っても仕方ないよな」

「うん……どうやっても戻れないしね」

「でも、10年も付き合った恋人同士だったら今頃、俺と遊華は結婚してたかもな」

「そうだね。ひょっとしたら私はお母さんになってたかもしれないし、お兄ちゃんはお父さんになってたかもしれないね」


 在りもしない理想を語り合う俺と遊華。同時に俺は10年前に戻るのはもうできないんじゃないか?と思い始める


「さて、話は終わりだ。そろそろ香月と美月が帰ってくるし、戻るか」

「うん!」


 まぁ、戻れないなら戻れないでこの世界で遊華や香月、美月と楽しく暮らすか……っとその前に


「俺はパソコンの電源切ってから行くから遊華は先に行っててくれ」

「わかった。あんまり遅くならないでね」

「わかってるよ」


 遊華はいつも通りの笑顔を浮かべて部屋から出て行く。さて、俺もパソコンの電源切って戻るかな


「結局は愛の告白もしてないし、遊華の側にいるとは言っただけで何1つ伝えられてないな……俺と遊華が本当の兄妹じゃないって事と10年前に告白して恋人同士だったら今頃は結婚して子供がいたんだろうなっていうもしもの話くらいしかできなかったな」


 パソコンの電源を切り、遊華の待つリビングへと向かうために部屋から出た。その時────


「うわっ!」


 視界が真っ白になった。俺が10年後であるこの世界に来た時のように……


「あれ?俺は今まで家にいたはずなんだが……」


 家にいたはずだから当然、靴は履いてない。だが、今の俺は靴を履いている


「どうなってんだ?しかも、家じゃなくて駅前に来てるし……」


 周囲を見回すと家ではなく駅前である事が確認できた。俺はいつの間にテレポートしたんだ?


「うおっ!」


 俺の携帯へ突然の着信。しかも、10年後の世界で買った携帯への着信だった。ビックリするなって言う方が無理だろ


「誰だよ……」


 10年後からのメッセージか?あっても不思議じゃないから怖い。


「浩太?何だ一体……」


 着信画面には浩太と表示されていた。だが、浩太は俺に一体何の用だ?とりあえず出てみるか


「もしもし?」

『もしもし?じゃねーよ!遊!約束の時間過ぎてるぞ!』

「約束?」


 約束が何かがわからない。俺は浩太と何か約束してたか?心なしか浩太の声も幼いような……


『おいおい、その年でもうボケたのかよ……今日は俺と敬と遊で遊ぶ約束してただろ』


 呆れるような浩太の声と遊ぶ約束……どういう事だ?


「浩太、今何年だ?」

『お前、ついに今年が何年かもわからなくなったか?2018年だよ』


 2018年……つまり、俺は元の世界に戻ってきた。浩太の約束という言葉から察するに今俺がいるのは俺が10年後に飛ばされた日って事になる


「浩太!悪い!今日の約束はキャンセルだ!」

『はぁ?お前、急に何を───』

「埋め合わせは必ずする!今日はどうしてもある人に想いを伝えなきゃいけないんだ!!」

『はぁ、敬には俺から言っておくから。その代わり、どうなったかは教えてくれよ』


 物分かりのいい友達を持って俺は幸せだと思う。


「ああ、ちゃんと報告するよ」

『フラれたら愚痴くらい聞いてやる』

「ああ、頼むわ」


 浩太との通話を終わらせた俺は駅から全力で家まで走った。こんなどうしようもない俺を10年間思い続けてくれたたった1人の為に……


「ただいま!!」


 家に着いた俺は玄関のドアを思いっきり開け、脱いだ靴を揃える事なくリビングへ


「あら、遊。早かったのね」


 俺の母さんだ……羽月さんじゃない……俺の本当の母さん……


「ああ、それより、遊華は?」

「遊華?遊華なら部屋にいると思うけど?それより、遊アンタどうしたの?いつもなら遊華の事なんて気にも留めないのに」

「まぁ、いろいろとな」


 母さんとの会話を切り上げ遊華の部屋へと向かう。いてくれると助かるんだが……


「遊華、いるか?」


 俺は遊華の部屋のドアをノックして声を掛けた。10年後の遊華は俺に笑顔で答えてくれたが、この時の遊華は確か無愛想だったはず……


「何……?遊びに行ったんじゃないの?」


 うわー、不機嫌そうな顔。これで10年後の遊華は俺を好きだとか言ってたんだぜ?信じられるか?っていうか、俺、こんなのに告白するの嫌なんだけど……


「ああ、だが、諸事情により帰ってきた」

「ああ、そう。で?何?私忙しいんだけど?」


 コイツが原因で俺が10年後の未来に飛ばされたと思うと腹立つな……今更ながら思う。10年後の未来に帰りたいと






今回は遊華と向き合う話でした

遊華と向き合った後は元の時代に帰ってきました

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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