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お兄ちゃんがいなくなってからの私を話す件について

今回は遊華が語り部です。

遊華の遊に対する思いが少し重たくなっているような・・・そうでもないような・・・


 今回はお兄ちゃんじゃなく私、藤堂遊華が語り部をしようと思います。みなさん、少しの間お付き合いください。早速お兄ちゃんが遊びに行った日の事とお兄ちゃんと再会した時の事をお話ししますね。


 私はお兄ちゃんが大好き。それは家族としてではなく、1人の男性として。LikeではなくLoveの方で大好きです。だけど、私は素直じゃないので上手に伝えることができませんし、最近だと会話も満足にできていません。


「俺友達と遊んでくるからもう行くわ」


 このブサイクでもなければ特別イケメンでもない人が私の兄である藤堂遊です。こんなお兄ちゃんが私は大好きなのです。


「…………行けば」


 はぁ、またやっちゃった……どうして素直に『私と一緒にいて』とか『行ってらっしゃい、お兄ちゃん』とか言えないんだろう……こんな自分が嫌い。ううん、大嫌い……だけど、そんな私にもお兄ちゃんは嫌な顔1つ見せないでいてくれる。だから、つい甘えちゃうのかな……


「はぁ、たまには素直にお兄ちゃん大好きっ!って言えんのかねコイツは」


 それができたらこんなに悩んでないよ……


「気持ち悪いこと言ってないでさっさと行けば?」


 本当は『行かないで!』って言いたいけど、しょうがないよね。お兄ちゃんにも友達付き合いがあるし……14歳の私がこんなこと言っても気持ち悪いだけだし……


「母さん、晩飯は冷蔵庫に入れといて」

「車に気を付けて行くんだよ」


 玄関からお母さんとお兄ちゃんの会話が聞こえる。もう出かけるんだ……私も玄関でお兄ちゃんを見送らなきゃ。だけど、お兄ちゃんにまた冷たく当たっちゃう……私は行かない方がいいよね?


「へーい、行ってきまーす」

「はーい、行ってらっしゃい」


 玄関からはお兄ちゃんがドアを閉める音が聞こえる。私は自己嫌悪に陥りながらも部屋に戻ることにした


「はぁ、どうして素直になれないんだろう……」


 私は部屋に戻るといつもこんな感じで自分を責めている。私はベッドに寝転ぶと置いてあったぬいぐるみを抱きしめた。


「お兄ちゃん、大好き。ううん、愛してる」


 ぬいぐるみにこんな事を言っても仕方ないよね


「お兄ちゃんに好きって言いたい……そして、名前を呼んで抱きしめてほしい……切ないよぉ……お兄ちゃん」


 私はせめて夢の中だけでもお兄ちゃんに名前を呼んで抱きしめてほしいと思いながら目を閉じた。


「ふわぁ~よく寝た。今何時だろう」


 私が時計を見て時刻を確認すると時刻は17時であり、あと3時間もするとお兄ちゃんが帰ってくる


「下に降りよ」


 私は身体を起こしてリビングに降りることにした。


「お母さん、今日のご飯は何?」

「今日は餃子だよ」


 ちょっと、お母さん!お兄ちゃんとキスする時に臭ったら困るじゃん!そんなの夢のまた夢だけど!


「わかった。ところで、お父さんは?」

「もうすぐ帰ってくるんじゃない?」

「ふーん」


 自分で聞いといてなんだけど、お父さんよりもお兄ちゃんの帰りの方が待ち遠しい


「あら、意外と興味なしな感じ?」

「あ、いや別にそんなわけじゃ……」

「まぁ、遊華が遊にしか興味ないのなんて遊以外は知ってるし」

「はあ!?別にお兄ちゃんに興味なんてないし!」

「またまた~好きなんでしょ?遊の事」

「そ、そりゃ家族としては好きだけど?」


 私はお母さんの質問の意図が家族としての好きだと思って好きと言ってしまった。


「遊華、私は異性として好きなんでしょ?って意味で聞いたんだけど」

「す、好きじゃないもん!!」


 慌てて誤魔化す私にお母さんは真剣な表情で私を見つめていた


「な、何さ?」

「遊華、言わないと伝わらない事だってあるの。言わなかったら一生後悔する事もね」

「わ、私は……」

「うん、私は?」

「私は……」


 お母さんは私の言葉を急かさずに待っててくれた


「私はお兄ちゃんが好き!」

「それはお兄ちゃんとして?それとも、1人の男の子として?」

「私はお兄ちゃんを1人の男の子として好きだよ」

「そう」


 お母さんの返事は短かったけど、表情は優しかった。


「じゃあ、遊にもう少し優しくしてあげなさい」

「うっ……わかった」


 お母さんめ……痛いとこついてくるなぁ……


「遊華が遊と恋人になれれば私も嬉しいわ」

「それってどういう意味?」

「いずれわかるわよ。いずれね」


 お母さんの言い方には引っかかるものを感じるけど、応援してくれていることだけはわかった。今はそれだけでいい。


「何か引っかかるけど、ありがとう」

「どういたしまして。さて、もうすぐお父さんが帰ってくるからご飯の準備しないとね」

「うん!」


 いつかお兄ちゃんに告白できるといいな。ううん、絶対にしてみせる!待ってなさい!藤堂遊!


「よーし、お兄ちゃんが帰ってきたら『ただいま』って言うぞ!」


 私はお兄ちゃんに素直な気持ちで接する事を新たに決意した。


 決意している間にお父さんが帰ってきた。お父さんとお母さんと私は3人で夕ご飯を食べた。もちろん、お兄ちゃんの分は冷蔵庫にしまってある。


 夕ご飯を済ませ部屋に戻って私は1人ぬいぐるみを抱きしめながらつぶやいていた


「早く帰って来ないかなぁ……」


 その日、お兄ちゃんが帰ってくることはなかった。


 それから少し話が飛んで1週間後の話をしますね。


「ううっ……お兄ちゃん……寂しいよぉ……私を1人にしないで……」


 私はお兄ちゃんが帰って来なくなって1週間自分の部屋で泣き続けた。周りに友達がいないわけじゃない。むしろ友達は多いし、それこそ告白もたくさんされる。だけど、お兄ちゃんがいないのなんて私にとっては孤独も同じ事だ


「はぁ、お兄ちゃんがいないと私ってこんなに脆いんだ……」


 私はお兄ちゃんの事を思うとまた涙が出てきた


「おかしいな……たくさん泣いたのにまた涙があふれてくる……へ、変だな」


 お兄ちゃん、私……お兄ちゃんがいないとダメなんだよ?お兄ちゃんが帰ってくるならなんだってするから……だから……


「だから、帰ってきてよぉ……」


 お兄ちゃんがいなくなってから1か月が過ぎた。そした2か月のある日、お母さんが交通事故で亡くなった。聞いた話だと打ち所が悪く、即死だったらしい。それから私は人形のようにただ毎日を過ごすだけの生活を送った。ただ、お兄ちゃんを返してくださいって神様にお祈りは欠かさずにしていた。


 ビラ配りやお兄ちゃんの友達への連絡?そんなのは最初にやったよ。私のお兄ちゃんへの愛を甘く見ないで!甘いくていいのはお兄ちゃんが私を呼んだ時の声で十分!


 それから、お父さんの仕事の量が多くなったり、新しいお母さんとして羽月さんを紹介され、その娘である香月さんと美月さんを紹介されたが、私にはお兄ちゃんのこと以外はどうでもよかった。だけど、お兄ちゃんが帰ってきた時に説明できるように頭の片隅には留めておこう。


 お父さんとお義母さんである羽月さんが結婚してから私は羽月さんや香月さん、美月さんとトラブルを起こさないように過ごした。だが、お部屋の問題があり、私はお兄ちゃんのお部屋に移ることになった。


 お兄ちゃんの事を写真やお父さんの話でしか知らない奴にお兄ちゃんのお部屋を使わせるもんか!お兄ちゃんのお部屋も含めてお兄ちゃんの全ては私のものだ!他の人には絶対に渡さない!!


 お兄ちゃんがいなくなって10年が経った。私はお兄ちゃんが帰ってくる気がして駅前に買い物に来ていた。すると、10年前にいなくなったお兄ちゃんが本当にいた。


 会いたくて会いたくてたまらなかった人が今目の前にいる……


「え?嘘……まさか……お兄ちゃん!?」


 私は思わず声を掛けた。


「え?」


 お兄ちゃんだ……私の大好きなお兄ちゃん……お兄ちゃんはポカンとしているけど、私には関係ない。大好きなお兄ちゃんが戻ってきた。私にはその事実がただ嬉しかった。





今回は遊華視点でのお話でしたが、どうでしたか?

遊華さん、少しは遊以外の事に興味持ちましょうよ・・・

最後まで読んで頂きありがとうございます!

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