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俺がミスコンに巻き込まれる件について

今回は遊がミスコンに巻き込まれる話です

ミスコンに巻き込まれた遊はどんな行動に出るのでしょうか

では、どうぞ

 怒涛の旅行から2日が経過した。俺は帰ってきた次の日に浩太と敬に買ってきたお土産を渡しに2人に会いに行き、手渡しでお土産を渡した。ちなみに中身は精力増強剤である。どうして精力増強剤かって?特に意味はない。ただの嫌がらせだ。日頃俺を弄ってくる事へのな!だが、それのツケが回ってきたのか、俺は今、自室でとんでもないものを見つけた。それは────


「“ミス声優コンテスト”か……」


 女性声優で最も美人の人を決めるミス声優コンテストのページである。声優ってふざけて検索したらトップにこれが出てきた。撮影の仕事同様に俺は何も聞かされていないぞ。これは放置しておくと俺にとって嫌な予感がする


「遊華たちが騒ぎ出す前に逃げるか?それとも、この期間中は姿を眩ますか?」


 このミス声優コンテストは一般からの投票は既に済んでおり、残るは声優の投票結果を残し、発表を待つのみとなっている。つまり、一応は羽月さんの事務所の所属声優って事になっている俺にとっては厄介な事この上ない


「逃げるとしてどこに逃げればいいんだ?」


 姿を眩ますなら、この家の隠し部屋のどこかに籠ればいい。だが、逃げるとなると話しは別だ。俺には浩太と敬以外に知り合いはいない。親父の仕事場に逃げ込んでもいいが、あそこには羽月さんがいる。そうなると親父の仕事場はなしだ


「逃げ場を失った……」


 完璧に詰みだ。逃げる事を前提として考えるなら俺には逃げ場がない。そうなると必然的に選択は決まってくる


「隠し部屋に籠って姿を眩ますか」


 この時だけは親父がアホの女好きで助かった。母さんにしろ、羽月さんにしろ怒ったら怖い。万が一の事を考えて親父はこの家に隠し部屋を3つ用意している。1つは俺の今使っている部屋だ。あとの2つのうち1つは美月の部屋にある。で、残り1つは───


「雑草に埋もれてなきゃいいが……」


 庭の隅にある。家に入れない時はそこを使っていると親父から聞かされていた。俺は入った事はないが、この部屋と作りは全く同じであり、美月の部屋にあるのもそうだが、全て親父が定期的に掃除したり、冷蔵庫の中身などを入れ替えたりしているらしい。今も続いてるか知らんが


「庭の草は綺麗に片付いてたし、草に埋もれてるなんて事ないか」


 大豪邸ではないし、ハウスキーパーを雇う金はまぁ、あるんだろうけど、親父の方針で雇っていない。もちろん除草業者や庭師もだ。行ってみない事には始まらない。俺はパソコンの電源を落とし、立ち上がった


「ん?何だこれ?メモ?」


 ドアノブの裏にメモが張り付けてあった。この内側から開けないとこのメモの存在に気が付かないようになっているらしい。だったら昨日、一昨日あたりに気付けよって話だが、お土産を配りに行くので頭がいっぱいで気づかなかったらしい


「え~っと、何々?」


 ご丁寧にテープでノブの裏に止められていた。地味だ……剥すのに苦労はしなかったが、果てしなく地味だ


「“遊へ、このメモを見ているという事はミス声優コンテストのページを見たという事だね。遊の性格上、投票するなんて面倒な事を嫌がると思ってこのメモを残したよ。どうせ庭にある隠し部屋に逃げ込むだろうしね。その隠し部屋は庭に出なくても、遊が今いる部屋の浴室の壁のスイッチを押せば行けるからね。行けば面白いものがあると思うから。頑張ってね~”って言われても……」


 どうやら親父は俺の行動パターンをある程度は把握しているらしい……はぁ、厄介な親父だ


「庭に出なくても行けるなら最初から口頭で言えよ」


 いつ帰ってきたのかは知らんが、書置きじゃなくて口頭で伝えてほしかった……


「とにかく、行ってみない事には始まらないし、行くだけ行ってみるか」


 この家を建てた親父のいう事だから一応は信用しておく。全部はしないけど


「で、浴室に来たはいいが、スイッチの場所どこだ?」


 メモには壁にスイッチがあるとは書いてあるが、具体的な場所は書いていない。ちゃんと場所を書いておけよ……家はタイルの壁じゃないんだから、パッと見じゃわからないんだぞ……仕方ない


「親父に電話だな……」


 探すのが面倒になった俺は親父に電話する事にした。電話する時間を考えろ?知るかそんな事!それを言うならちゃんと説明しろ。だが、現時刻は12時だから昼飯の為の休憩をしていてもおかしくはないだろ


 俺は電話を取り出し、親父に電話を掛ける。親父の仕事って作家だから、出てもらえない可能性も考えておこう。それでダメだったら──────自分で探すか


『もしもし?どうしたの?遊』


 出てもらえない事を前提として考えていたから、出てくれるとは思わなかった。しかも、1コールで


「親父のメモ見て今浴室にいるんだが、隠し部屋のスイッチの場所がわからん」


 用件だけ簡潔に伝えて電話をさっさと切ろう。親父との長時間の会話は真面目な話以外だと俺が弄られる未来しか見えん


『あ~、それなら鏡の右上の辺りにあるよ』


 鏡の右上ね……俺は電話を片手に鏡の前に立ち、その右上に手を添えた


「今、親父の言う通りに鏡の右上に手を添えた状態なんだが?」


 親父は右上の辺りにあるとは言ったが、手を添えろとは言っていない。だが、電話を切ってからじゃ遅い。電話を切る前に隠し部屋の扉を開けておこう


『そのまま力を入れてごらん?』


 親父の言う通りに添えた手に力を入れる。すると────────


「ひ、開いた……」


 鏡が上にスライドし、1人分が通れるスペースが現れた。


『入ったら自動で閉まるようになっているから』

「わかった。じゃあな」

『うん』


 通話を切り、中へ進む。本格的に親父の収入がどれくらいなのか気になってきた。普通じゃこんな隠し部屋や自動ドアは付けられないと思う


「おいおい、さっきの部屋と全く同じかよ……」


 さっきまでいた部屋と家具の配置や部屋の構造が全く同じだった。つまり、俺が普段使っている部屋と今いるこの部屋は全て同じな為、新たに覚える事はほぼない


「出入口が違うくらいか……それ以外、浴室の隠し扉も同じだったな。いや、まだ全部は見ていないから探せば違うところがあるはずだ」


 浴室から出てリビングに出てきただけで、その他の場所にはまだ行っていない。つまり、リビングと浴室が同じってだけだ。


「……全部同じだった」


 さすがに全てが同じはあり得ない。リビングと浴室は同じでも他がそうとは限らない。俺はそう思っていたし、そう思って寝室、パソコンルームを見てきたが……全て同じだった


「いや、極端に違ったりするよりはいいが、全部同じはさすがにねーよ」


 過ごしやすいから文句は言えんが、親父の部屋を作る時のセンスを疑う瞬間だった


「さて、ミス声優コンテストについての詳細を検索するか」


 さっきは逃走する事しか頭になかったが、今は違う。ミス声優コンテストがどのようなもので、どこの企業あるいは事務所が主催しているのかを落ち着いて調べる余裕がある。


「なるほどな……」


 調べた結果、ミス声優コンテストは女性声優の中で誰が1番美人か?を競うものであり、主催は声優事務所が合同でしたものらしい。ついでに調べた事だが、一般投票は既に終わっている。これはいいが、問題は声優からの投票である。この投票は有名、無名の声優ほぼ全員が済ませている。そう、この俺、藤堂遊を除いては。そして、ミス声優コンテストのページの1番最後にはこう記されていた


「“投票が済んでいない藤堂遊の票については藤堂遊を捕まえた女性声優の方に入ります”……か」


 要約するまでもない。早い話が俺の票がほしけりゃ捕まえて獲れ!って事だ。本人としては誰がミス声優になろうが興味はないし、誰かに入れるつもりもない。だからと言って簡単に捕まるつもりもない。こんなので票が入っても、それは自分から入れてもらったものではなく、強制的に入れられたものだ。ファンはその人が美人だから入れてくれた。票欲しさに亡者の真似事をしていいもんだろうか?


「企画としては面白いと思うが、俺の票に関しては半強制か……」


 気に入る気に入らないはどうでもいいし、投票していなかった俺にも問題はあるだろう。しかし、1位になる。もしくは票を得る為ならどんな手を使ってもっていう部分はどうかと思う


「俺を捕まえた奴に票が入るのなら、俺はしばらく女性全般とコンタクトは取らん」


 怒りや呆れを通り越してバカバカしいとまで感じていた俺は部屋のドアを徹底的に施錠した。無論、俺が通ってきた隠し扉も例外ではない。ここがいつもの部屋と同じという事は、当然、家に仕掛けてあるカメラと、家に音声を届けるマイクはある。


「まぁ、ここにはトイレ、風呂、キッチンがあるし、食材や飲み物もある。飢え死にしたりすることはないだろう」


 ミス声優コンテスト?んなもん知るか。やりたきゃ勝手にやれ。その期間中は外には出ない


「このコンテストの期間は1週間か……つまり、俺は1週間籠っていればいいわけだ」


 1週間部屋に籠るくらいどうって事はない。ここには娯楽があるし、いつもの部屋から資料も持ってきた。つまり、部屋から出ずとも遊んだり、読書したりできる


「誰だよ」


 パソコンの横に置いてあった携帯がなる。俺に電話してくる人間は浩太か敬か親父くらいだと思うんだが……とりあえず出てみるか。


「やっぱり……」


 着信画面には“浩太”と表示されていた。何の用だ?まぁ、浩太がミス声優コンテストなんて知ってるわけないか


「浩太か、何の用だ?」

『おう!いや、用って程の用じゃないんだがな。遊はミス声優コンテストって知ってるか?』


 浩太がミス声優コンテストの存在を知っているのは意外だ。そういうのには興味ないと思っていたぞ


「ああ、投票してないのは俺だけだしな。知ってるよ。それがどうした?」

『あ、いや、そのミス声優コンテストに関してなんだがな……』


 浩太にしては歯切れが悪いな。何かあったのか?コンテストが中止とか?それはそれでありがたいんだが


「どうした?歯切れが悪いぞ?」

『あ、ああ、実はな、遊の票欲しさに女性声優がお前の事を探し回っているから、部屋から出るなって言おうと思って電話したんだが』

「安心しろ。俺は1週間の間は部屋から絶対に出ないから。用件はそれだけか?」

『いや、もう1つある』

「何だ?」

『絶対に捕まるな』

「任せろ」


 浩太と少し話をした後、電話を切った。捕まるな?当たり前だ!バカな連中のバカな催し物に付き合ってられっか!冗談は親父や羽月さんだけにしてくれ

今回は遊がミスコンに巻き込まれた話でした

誰に投票するのも自由だと思う

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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