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水不足の村

こんな感じでいいんだろうか?

 かなり歩いたと思うんだけどなあ。

 腕時計を見ると、あれから約1時間もたっていた。

 ここまで人とすれ違うこともなく、それどころか生物や植物すら見ていない。

 砂漠ってサボテンとかオアシスとか普通にあると思ってた。


「そろそろ休憩するか。」


 さらさらした砂の上を歩くのはかなり体力を使う。

 この砂の上で乗り物は使えないだろうと思いらくだを描いてみたりもしたけれど、なぜからくだは出てこなかった。

 僕の画力の問題か、それとも生物は生み出せないということなのだろうか。


「何よりも、この日差しと気温がきついな。」


 とりあえず水分補給をするために、さっき同様オアシスの絵を描く。

 ヤシの木は要らないかとも思ったが手抜きのような気がしたので、周りにサボテンも追加して描き上げた。


「ぷはー、生き返るなあ。」


 何度もオアシスを描くのはさすがに手間なので、水筒を作って水を汲む。


「あ、いいこと思い付いた。」


 氷の絵を描き、水筒に氷を入れる。


「これでよし、十分くらいしたらまた出発しよう。」


 そういえば、なにも考えずにオアシスやサボテンを作ってしまったが、これは自然環境に影響を与えてしまうのだろうか。

 その辺りも考えると、やっぱり人に会わないといけないようだ。


「そろそろ行くか。」


 水筒を持って、出発しようとしたそのときだった。


「おい、オアシスがあるぞ。」


「助かった、これで俺たちは助かるぞ。」


「こんなところにオアシスなんかあったか?」


「おい待て、人がいるぞ。」


 少し遠くから人の声がする。北の方角だ。

 このオアシスを目指しているようだから、無事に人に会えそうだ。

 にしても、ここは日本じゃないと思ってたんだが、どうやら聞こえてくる声は日本語のようだ。


「そう慌てる必要もなかったみたいだな。」


 そんなことを考えているうちに、声の主たちがオアシスにたどり着いたようだ。

 十人ほどの大所帯だ。


「えっと、こんにちは。」


「ああ、こんにちは。突然ですまないんだが、このオアシスの水を分けてもらえないだろうか?私たちの村は最近ひどい干ばつで、水が全く足りていないんだ。」


 ちょっと厳ついおじさんが丁寧に頭を下げている。

 よほどの深刻な状況なんだろう。


「それは大変ですね。構いませんよ、その代わりに聞きたいことがいくつかあります。」


「そこをなんとか・・・え、いいんですか?おお、ありがとうございます。聞きたいこととは何でしょう?私たちの知ることならいくらでもお答えします。」


 今の日本で水道の通っていないところなんてそうそうないし、断水でもしてるのかな?

 干ばつって言ってたし、きっと農業用の水が足りないんだろう。こんなとこから水を運ぶなんて、農家って大変だなあ。


「聞きたいことはいくつかありますので、先に水を運んだ方がいいでしょう。僕もお手伝いしますから、村に案内してもらってもいいですか?」


「水をもらっただけでなく、手伝いまでさせるわけにはいきませんよ。おーいみんな、早く水を汲んでこの方を村まで案内するんだ。」


 一斉に桶や樽に水を汲んでいく。

 何人かはすれ違い様に手を合わせてお礼を言っていく。

 そんなに真剣に農業をしているなんて、やっぱり日本人は真面目なんだなあ。


「え、嘘でしょ。」


 よく見ると、水を大量に浮かせている人がいる。

 もしかしたら、僕の絵が現実に出てくることと関係があるんだろうか。

 もしかしたら、僕のこれはおかしくもなんともなくて、そういう道具が発明されたのだろうか。

 そうだとしたら、科学はすごいなあ。


「さ、みんな汲み終わりましたんで、村まで案内しましょう。精一杯のもてなしをさせてもらいます。」


「いえ、お構い無く。」


「いえいえ、恩人にはきっちりお礼をしなければ、村の名誉に関わりますので。」


 結局、村に着くなりお祭り騒ぎになってしまった。

 しかし、村に来て気づいたことがある。

 ここはやはり日本ではない。

 彼らがは砂漠の上に住んでおり、欲しがったのは飲み水だった。

 下水も上水もない、料理法も焼く、煮る、切るくらいしかない。

 少なくとも先進国ではない。


「この方が我々にオアシスを使わせてくださった、命の恩人だ。みんな、彼を存分にもてなしてやってくれ。」


 そりゃこんな環境で干ばつが起きれば大惨事だろう。

 水を分けただけでこの歓迎も頷ける。

 しかし、こんなに田舎に水を浮かせるような技術力があるというのは不自然だ。


 僕はもてなしを辞退し、自分の国に帰りたいからオアシスは要らない。そのために聞きたいことがあり、有益な情報をくれるならオアシスを譲るという趣旨を村長に話した。

 ちなみに村長はさっきのおじさんだった。

 その村長の自宅で色々な話を聞くことができた。


「なるほど。」


 話した内容をまとめるとこうだ。

 まず、彼らは日本語を話しているにも関わらず、日本という国を知らない。

 いろいろ試してみたところ、口の動きと声が一致していないということがわかった。

 つまり、彼らは僕の知らない言語を話しているが、僕には日本語に訳されて聞こえている。


 次に、あのとき水を浮かせていたのは魔法だという。

 何度か聞き直したが、どう聞いても魔法だと答えているので、あり得ないとは思うが僕自身があり得ない体験をしているので納得するしかない。


 最後に、日本がどこにあるか探すなら集会所という場所に行くといいと言っていた。

 とくに冒険者用の集会所は多くの情報が集まり、一つの地域に一つはあるのが普通らしい。

 ここから一番近い冒険者集会所は、西に徒歩1時間ほどで着く場所にあるという。


「では、早速集会所へ向かおうと思います。ありがとうございました、オアシスは好きに使ってください。」


「お待ちください、まだこちらは大したお礼をしておりません。」


「失礼します。お父様、今少しよろしいですか?」


「ああ、彼女はリオと申しまして、私の自慢の孫娘です。」


「はじめまして、リオと申します。この度は村を救ってくださり、ありがとうございました。」


「いや、救ったなんて言われても・・・」


 かなり美人ではあるけれど、絵にするには少し痩せすぎているなあ。

 美人を見ると絵にすることを考えるのは、一般的にはあまり誉められたことではないか。


「いいえ、それだけの物を私たちは与えられました。先程の話は聞きました、私に案内を任せていただけませんか?砂漠に慣れていなければ、方向感覚を失い砂漠をさ迷うことになってしまいます。必ずお役にたてるはずです。」


「お気持ちだけ、受け取っておきます。方向だけ教えていただければ、僕は迷ったりしませんから。」


 コンパスさえあれば、方向を見失うことはないし、いくら砂漠に慣れていても男女では歩くスピードに差が出てしまうだろう。


「それでは、僕はこれで失礼します。」


「あ、お待ちください。」


 足早に村をあとにする。あまり長居をすると、彼らは僕をもてなそうとするだろう。

 あまり裕福でなさそうな彼らに気を使わせるつもりはないので、リオさんには悪いがさっさと出発することにした。

 とにかく冒険者集会所を目指そう、確か西に行くんだったね。


 そういえば、魔法については気になったから色々質問したけれど、冒険者ってなんだ?

結局名前は決まりませんでした。

これ、遅くなればなるほどハードル上がるやつですね。

急がねば…

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