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ここはどこ?

例のごとく、見切り発車なのでオチはなんとなく固まってるんですが、この先どうなるかは作者もわかってません

 真っ白なカンバスが美しいと思った。

 そう言うなれば、生まれたての赤ん坊が最も無垢であるように。


 描けば描くほど、生きれば生きるほど、美しいカンバスを、きれいだった自分を、汚しているような気がしてしまう。


 生きていることが耐えられない。

 全てが汚く見えてしまう。


 美しいものはきっとあった。

 美術館にでも行けば、いくらでも美しい絵はあるのだから。

 ただそれが、僕にとっては真っ白なカンバスに劣るというだけで。


 僕は美しくもなれないし、美しいものを作ることもできない。

 ただ汚してしまうだけ。

 だから僕は、生きることを諦めた。


 はずだった。




「ここはどこだろう。」


 一面の砂漠、オアシスなんかどこにもない、どこまでも続く水平線が遠くに見える。


「きれい・・・だな。」


 誰の手も入っていない、足跡ひとつないどこまでも続く砂漠。

 まるで、僕が美しいと思った真っ白なカンバスのよう。

 これは神様が死んだ僕にくれた、最後の贈り物か何かなのだろうかとも思った。


 だけど、これは


「何か、違う。」


 砂漠なら、僕か何か描いてもすぐに消えるはず。


「そうだな、砂漠ならやっぱりオアシスかな。」


 持っているものも何もない。

 だから砂に指で絵を描いていく。

 色も濃淡もない、ただの線だけで絵を描くなんて久しぶりだな。


「こんなもんか。」


 あまり時間をかけると風で消えてしまうため、かなり単純化したけれど、ちゃんとヤシの木が二本と湖だとわかる程度の絵にはなった。


「これじゃ、よくあるちゃちなイラストだな。」


 やっぱり絵なんて描いても意味はない、と絵を消そうとしたときだった。


「うおっ、やべ。」


 大きな風が吹いた。


「あー、目に砂が入った。」


 目を洗いたいが、周囲に水なんてない。

 仕方なく一歩踏み出した瞬間


 バッシャン


 水にはまってこけた。


「ぶはっ、ふえ?」


 水?

 とにかく水があるなら、まずは目を洗おう。

 変な味はしないから、汚い水ではないと信じたい。


 バッチャバッチャ


「ふー、助かった。」


 辺りを見渡すと小さな湖と二本のヤシの木が、僕の絵に描いた通りにあった。


「嘘だろ。」


 僕の描いた絵は跡形もなく消えていた。

 それだけならば、さっきの風で消えたのだろうということで納得できる。

 しかし、このオアシスはついさっきまで絶対にここにはなかった。


「僕の絵が、現実になった?」


 普通ならそんなことはあり得ない。

 しかし、僕はさっき自分で考えたことを思い出した。


『神様が死んだ僕にくれた、最後の贈り物』


「そんな、まさか。」


 あり得ないと思っていても、一度考えついたことは頭から離れない。

 そうなれば、できることはただひとつ。


「確かめてみるか。」


 さっきと同じように、絵を描いてみればわかるはずだ。


「…」


 テーマも何もない状態で絵を描くというのは、案外描きづらいものだ。

 そういえば、少しお腹が空いてきた気がする。

 なぜか頭に浮かんだのは、リンゴとパイナップルだった。


「なにも起こらないな。」


 やっぱり絵が現実になるなんて、おかしなことが起こるはずもないと砂を払って絵を消した瞬間だった。


「…」


 驚きすぎて、言葉にならなかった。

 絵に描いたリンゴとパイナップルが、何もない空間から突然現れた。


「食べられる・・・のか?」


 リンゴの表面の砂を払い、恐る恐るかじってみる。


 シャクッ


「うまい。」


 うん、リンゴだ。みずみずしくて甘い、蜜入りリンゴかな。

 パイナップル・・・はそのままじゃ食えないな。


「なんなんだこれ、僕にどうしろと。」


 よくよく考えたら絵が現実になるのもおかしいが、僕がこんな砂漠のど真ん中に居るのもおかしい。

 夢にしては感覚がリアルすぎる。

 考えられるとしたら、さっきも思ったことだ。

 そもそもなんで僕は『神様が死んだ僕にくれた、最後の贈り物』なんて考えたんだろう。


「僕は死んだのか?」


 昨日の夕食の内容も友達との会話も思い出せるが、死んだ記憶など全くない。

 しかし、肝心なことが思い出せていないような気もする。


「まあ、とりあえず移動するか。」


 絵が現実になるのなら、食糧や飲み水の心配はないが、ここがどこなのかわからない。

 ここまで広大な砂漠となると、日本ではないだろうし、人もなかなか通らないだろう。


「とりあえずコンパスでも作るか。」


 日除けのためのフードつきのマントや、ついでに腕時計も作ったが、そもそも今の時間がわからないため、太陽がほぼ真上にあるということで十二時ちょうどに描いた。


「あとはどの方角に行くかだな。」


 砂漠といえばサハラ砂漠だけど・・・とりあえず北に向かうか。

 海に着いたなら海岸に沿って進めばいいし、人里に着いたのなら人に尋ねればいい。


「よし、出発だ。」


主人公に名前を付けていないということに、あらすじを書くまで気づかないという自分の天然振りに驚いた(決してアホではない)。

今から考えます。

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