36
「木戸先輩………」
ふふふって笑いながら木戸先輩が部屋に入ってきて、僕の勉強机の椅子に座った。
真鍋先輩がそれを苦笑いしながら見て、ベッドの方に来る。
どうして一緒に来たの?どうやってここまで来たの?
絶対に聞けないけど、僕の中でぐるぐるしてる。
「アイス買ってきたけど、食う?」
「食べたいです!!」
「熱は?」
「あ…………」
「ん、朝よりいいな」
パクパクって、魚みたいに口が動いちゃう。
だってまた、また。
コツンって、真鍋先輩のおでこがくっついて。
しかも今度は、後頭部を押さえられちゃって。
離す時にくしゃって、その手で頭を、撫でるから。
「光ちゃんおれの前で堂々とイチャイチャしないでよ」
「してねーっつーの」
「してるって」
「ほら、亮平くんも食べるんでしょ?アイス」
「あ、いるいるー」
ああ。もう。
僕の気持ちが上がったり下がったり。
急上昇の急下降。
せっかく、真鍋先輩と会えるって。会いに来てくれるって。
だからおとなしく、寝てたのに。
「新井ちゃん、食べよ?」
優しく笑う木戸先輩に、僕は複雑な気持ちで、イッパイ。
「いただきます…………」
甘いはずのアイスが、全然甘く思えなかった。
「また明日な」
「じゃあねー、新井ちゃん。お大事に」
結局アイスを食べながら僕は、真鍋先輩と木戸先輩が仲良く喋ってるのを、泣きそうな気持ちで見てるしかなくて。
帰るって雰囲気に、ほっとした。
これ以上2人を見てたら、本当に泣いちゃう。
だってやっぱり、仲がいいんだもん。
「明日休みでも、朝、寄る」
木戸先輩が先に階段を降りて行って、母さんがわざわざありがとうーなんて言ってる間に、真鍋先輩がそう言ってくれた。
「先輩………」
「明日な」
「はい」
ぽんって、僕の背中を叩いて、真鍋先輩も階段を降りて行った。
明日、学校行けるかな。行きたいな。
でも、行けなくても。
寄ってくれるって。
そっと窓を開けて、こっそり覗いた。
いつも僕が乗ってる自転車の後ろに、木戸先輩が乗ろうとしてるところだった。
ズキンって。胸が、痛い。
見るんじゃなかったって、閉めようとしたその時。
真鍋先輩がこっちを見て………笑って、くれた。
真鍋先輩。
好きだよ。
小さく手を振って、心の中で、呟いた。




