22
赤になればいいのに。
僕が自転車の荷台から降りるのを、真鍋先輩はいつも支えてくれる。
足を庇いながら降りたところで、あ、マフラーって、思い出した。
巻かれたマフラーを取って、ちょっと悩んで………真鍋先輩の首に巻く。
馴れ馴れしいって、怒られるかな?
伺うように真鍋先輩を見ると、やっぱり優しい顔で笑ってた。
嫌われてはいない。よね?
うん、きっと………そう。
そうだって、思いたい。
「あったかかったです。ありがとうございました」
「風邪、ひくなよ」
「はい。………先輩も」
「じゃな」
「気を付けて!!」
行ってしまう後ろ姿を見送って。
ちょっと向こうの信号が赤になればいいのにって、願った。
そしたらまた振り向いて、手を振ってくれる………?
淡い期待で見ていたけど、信号は青で、真鍋先輩はそのまま行ってしまう。
残念。
そんなにうまくは、いかないか。
小さくため息をついた時、真鍋先輩が前を向いたまま右手をあげて…………その手を、振った。
どきんって。
した。
僕、に?
僕に手を振ってくれたの?
たったそれだけなのに。
たったそれだけが、嬉しい。
嬉しくて、笑っちゃう。
でも。
嬉しいのに、ちょっと…………悲しい。
だって分かりきってるじゃん。
僕はただの後輩。
どんなに仲良くなったって、僕と真鍋先輩はそれ以上にはならない。
だいたいそれ以上って………それ以上って、何だよ、男同士で。
寒い。
うちに入ろう。
僕、何かもう絶対彼女なんてできない気がする。
「ただいまー」
玄関を開けて、はっと、気づく。
彼女?
真鍋先輩に、彼女、いるかも。
あんなに優しくてあんなにカッコいいんだもん。
いてもおかしくない、っていうか。
いなきゃおかしくない?
はああああ。
今日一番のため息をついて。
僕は、玄関に座り込んだ。




