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Led by cards  作者: みやぎ
130/131

129

こーちゃんが、眠ってる。






薄暗くなった部屋のベッドの上。



たくさんキスをして、そのままくっついて、時々しゃべって、またキスをして。






いつの間にか、眠っちゃってた。






こーちゃんを起こさないようにそっとベッドから抜け出して、落としたままだったブレザーをハンガーにかけた。



エアコンは効いてるけど、布団から出て上半身裸だった僕は、さむってなって、セーターを着た。






窓の外。



空が、キレイな夕焼け色。






そうだ。



トランプ、ひいちゃおう。






何となくそう思って、トランプを出した。






残りはジョーカーを入れて3枚。






もう、ジョーカーが出ても、いいよ。



ラッキートランプは本物だった。



僕はこのトランプに導かれて、こーちゃんを好きになって、こーちゃんに好きになってもらえて、幸せになったよ。






だから、もう、ジョーカーをひいたって大丈夫。






3枚をテーブルの上でまぜて。



1枚、めくる。






スペードのK…空を見上げて






もう1枚、めくる。






ハートのK…ずっと一緒にいよう






最後の1枚。






ジョーカー。






「………え?」






最後の最後まで出なかったジョーカーが。



その、絵が。






「どうして………?」






ピエロのだったはずの絵が。






………変わってる。






これは………天使?











「真尋?」






ぼんやりとした声が聞こえて振り向くと、こーちゃんが目を覚ましていて、僕はトランプを全部持って、ベッドの端っこに座った。



こーちゃんに、トランプのことを言おうって。






「こーちゃん、見て」

「ん?何、これ」






起き上がったこーちゃんが、トランプを見る。



何も言わないまま、1枚また1枚と、トランプをめくっていく。






「こーちゃん、空、キレイだよ」






全部見終わってジョーカーに辿り着いたところで、僕は窓の外を指差した。






広がる夕焼け。



赤い赤い、夕焼け。






後ろから、こーちゃんが僕を抱き締めてくれる。



まだ、素肌のままの、こーちゃん。






あったかい。






「ずっと、一緒にいよう」






手を握って僕は言った。






こーちゃんは、僕の言葉が何か分かったみたいに、くすって笑って。






「………ずっと、な」






優しく、答えてくれた。






そして、ふたりで見上げた空に。






「あっ!!」

「うおっ!?」






見間違い!?






びっくりして、こーちゃんを見る。



こーちゃんも、くりくりの目を更にくりくりにして僕を見た。






「こーちゃん、見た!?」

「見た………」






こんなこと言ったら笑われちゃう?



でも。



でもね。



見えたんだよ。本当に見えたんだ。



背中に大きな翼を広げた。






………天使の姿が。






「真尋に、似てた」

「え?そう?」

「うん、似てた」

「天使、だよね?」

「多分?」






多分、天使。






優しい顔で笑って、僕たちに手を振った天使らしき人。






らしきって確信が持てないのは、その翼が、真っ黒、だったから。






「あれ?」

「こーちゃん?」

「トランプ、ないぞ」

「え!?」






その後どんなに探しても、ラッキートランプは出てこなかった。






だった1枚。



ずっと一緒にいようのカードを、残して。

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