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「真尋っ」
「先輩‼︎」
滝沢先輩が出て行って、真鍋先輩は僕を抱き締めてくれた。
怖かった。色々な意味で、本当に怖かった。
僕も真鍋先輩にぎゅって、しがみつく。
「滝沢に何された?大丈夫か?」
僕を覗き込む真鍋先輩の顔が、すごくすごく心配そうで、僕はちょっと、泣きそうになった。
「ぎゅってされて、おでこに………キスされた」
「他には?」
「それだけ…………」
「ごめん、俺がもっと早く来てれば」
「ううん………ありがと。先輩、カッコよかったよ」
僕のほっぺたに触れる、真鍋先輩の冷えた手。
「でも、殴り合いになって推薦取り消されたらって、怖かった」
「ごめん………」
カッコよかったよ、真鍋先輩。嬉しかったよ、すごく。
大好きが、もっともっと大好きになったよ。
怖かったけど、それは本当。
「大好き」
「………真尋」
真鍋先輩がやっと笑ってくれて、僕のおでこに消毒って言って、キスをしてくれた。
「マジ、焦った」
「………うん」
「お前、無防備すぎるわ」
「え?」
「そんな格好で目の前うろつかれたら、襲いたくなるっつーの」
僕はまだ服を着ていなくて、素肌の上に真鍋先輩のブレザーを羽織ってるだけ。
自分のすごい格好に恥ずかしくなって、また真鍋先輩にしがみついた。
「真尋」
「なあに」
「キス、させろ」
「ここで?」
「ここで」
「………うん」
「いい?」
「………して」
真鍋先輩の唇が優しく僕の唇に触れて、真尋が好きだって、言ってくれた。
だから。僕も好き、大好きって繰り返した。
それに応えるかのように、キスがどんどん深くなって。
「………ひゃあっ」
ブレザーの中に真鍋先輩の手が入ってきて、僕の背中や脇腹をなぞった。
冷たいその手に、その感覚に、身体が跳ねて………。恥ずかしく、なる。
「真尋、真尋」
熱っぽく僕の名前を呼ぶ。
耳、首筋、更に下へと行こうとする、唇。
「やっ……………」
首筋、鎖骨を辿って。
真鍋先輩がくいっとブレザーを横に引っ張った。
露になった、僕の身体。
真鍋先輩の顔が、まるでスローモーションのようにそこに近づいて。
唇が、身体に、触れちゃう。
ひゃあああああって、身体を竦めた。その時。
「はっくしょん!!」
………くしゃみ、出ちゃった。
寸前で止まった真鍋先輩が、がくって頭を下げた。
「わり。寒いよな」
「ん、寒い」
「着替えろ」
「………うん」
くるっと背中を向けた真鍋先輩と、同じように背中を向けた、僕。
ほっぺたが、熱いよ。