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も、もう動きたくない………。
ありがとうございましたーって全員で挨拶をして、初練は終わった。
終わった、終わったけど………。
「まー、大丈夫か?」
ヨロヨロしながら片付けていたら、透が貸せよってバットを持ってくれた。
「まーくん、鬼筋トレお疲れさま」
「つーかーれーたーよー」
「久々だったもんなぁ」
「久々だったもんねぇ」
「僕もう今から明日がコワイ」
「動けないな」
「動けないよね」
「だよね………」
「まあ、それは俺らもだから」
「だよね」
「痛いよね、絶対ね」
はああああああ。
3人で、がっくりと肩を落とした。
片付けが終わって、部室に戻って、真鍋先輩待ってるんだろ?って、透と友弥はニヤニヤしながら着替えてる。
「俺、木戸先輩が学校来てるはずだから、探してくる」
「俺は圭が門のとこに居るから」
「うん、じゃあね」
「鍵、頼むな」
「お願いね、まーくん」
バイバイって手を振って、誰も居なくなった部室で僕もノロノロと着替え始めた。
ダメだ、身体がだるーい。おもーい。
「新井、居る?」
汗まみれのTシャツを脱いで、ズボンを履き替えて、タオルで身体を拭いていたら、部室のドアが開いた。
「滝沢先輩、どうしたんですか?」
「ん?忘れ物」
滝沢先輩はそう言って僕の方に来て、今日使っていたロッカーを覗く。
僕は特に気にすることもなく、リュックから違うTシャツを出して着ようと滝沢先輩に背を向けた。
その時。
「真尋」
「……………え?」
真尋、って。
滝沢先輩が急に僕を名前で呼ぶから、びっくりして僕はそのまま振り返った。
滝沢先輩が。僕を、見てる。
「滝沢先輩………?」
コワイぐらい、真剣な顔。
今までそんな風に見られたこと、なくて。思わず1歩、滝沢先輩から離れた。
滝沢先輩が、1歩、近づく。
「真尋」
「は、はい」
心臓が、ドキドキしてきて、変な汗が出てくる。
これ、何か、まずくない?
いやいや、大丈夫。まずくない、まずくないよ。
僕、男だし。男同士だし。
って、真鍋先輩と色々しちゃってる僕が言うのも何だけど。
一生懸命、落ち着こうとする。
けど。
もう1歩、滝沢先輩が僕に近づく。
僕、服、着てない。
寒い。
……………こわい。
「滝沢先輩?」
そして僕は。
「滝沢先輩……………!!」
滝沢先輩に。
思いきり、抱き締められた。