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冬休みは毎日のように真鍋先輩と会っていた。
部活に行ってちょっとずつ練習に参加して、帰って、用事がないときは真鍋先輩と一緒に僕の部屋で宿題をやって、宿題が終わった後………手を繋いだり、キスをしたり。
キスがね、どんどん変わってきてて、僕はいつも、真鍋先輩にしがみついてぼーっとしちゃう。
もう、かるーいやさしーいキスじゃなくて、飲み込まれちゃうような、でも、何かが引き出されちゃうような。そんなの。
クリパの時も何回かされたけど、今はもう、ずっとずっと、そんなキス。
31日になって、初詣どうする?一緒に行く?って真鍋先輩に聞かれて、その日の朝のラッキートランプがハートのJで一緒に行こうって出てたから、僕は迷わず一緒に行こうって言った。
「ふたりで行く?みんなで行く?」
一回みんなを誘って、ダメそうならふたりで行こうってことで、みんなを誘った。
「新井せんぱーい!!」
「井上ちゃーん!!」
真鍋先輩とふたりで待ち合わせ場所の駅前に居たら、透と井上ちゃんが来て、僕は井上ちゃんと再会の抱擁をした。
相変わらず井上ちゃんはかわいくて、思わず頭をぐしゃぐしゃしちゃう。
「新井先輩やめてーーー」
「元気だった?」
「はいっ」
「真鍋先輩、この子が例の井上くんです。井上ちゃん、僕らの高校の真鍋先輩」
「こんにちは、井上です。例のって何ですか?」
首を傾げて不思議そうにする井上ちゃんに、透が、な、何でもねぇよってしどろもどろで答えてるのがちょっとおかしかった。
「どーも、真鍋です。なんつーか、あれだな。真尋と井上、並ぶとぱっと見女子だな」
「いや、これでも大分マシになった方ですよ?」
「これで?」
「これで。野球部なのに女子が二人居るって、ずっと言われてたぐらいですから」
「透!!そういう余計なこと言わないでよ!!」
「女子じゃないですっ」
井上ちゃんとそう言ったけど、僕たちはただ笑われただけだった。
友弥と木戸先輩も合流して、僕たちは電車で初詣に向かった。
「わ、すごい人」
「真尋、はぐれるなよ」
「う、うん」
お昼を過ぎてたからちょっとはすいてるかな?って思ったけど、それは大きな間違いで、神社はすごい人でごった返していた。
「ほら、手」
「…………うん」
真鍋先輩のあったかい手が、僕の手を握ってくれた。
これだけ混んでたら分からないかな?分からないよね?
外で手を繋ぐなんてできないから、混んでて良かったなんて思っちゃう。
「真尋、神さまに何お願いした?」
おみくじ引こうよ!!っておみくじ売り場に行く時に、真鍋先輩にこっそり聞かれた。
「えー?それは秘密だよ」
恥ずかしくて言える訳ないじゃんね?
ずっと真鍋先輩と一緒にいられますように、なんてさ。
「じゃあ先輩は何お願いしたの?」
「教えたら真尋も教えてくれんの?」
「………やだ」
「やなのかよ」
「………恥ずかしいもん」
100円を入れて、おみくじを引く。
「やた!!大吉!!」
「俺は中吉」
「わーーー!!透先輩どうしよう!!ボク凶だよ!!」
「井上ちゃん………」
「マジか、受験生」
泣きそうになっている井上ちゃんを慰める透と、笑う僕たち。
井上ちゃんって何か、こういう時引きが強いよね………。
「俺は、真尋が早く名前で呼んでくれますようにって頼んどいた」
「え?」
名前で呼んでくれますようにって!!それって神さまにお願いすることなのっ!?
って、真鍋先輩を見たら。
いつものあまーい顔がそこにはあった。
「真尋は?」
「言わなきゃ、ダメ?」
「教えて」
あまーい顔のまま、そう言うから。
「先輩と、ずっと一緒にいられますようにって………」
真鍋先輩が、こめかみをぽりぽりしている。
僕だって恥ずかしいってば。
「真尋」
「なあに」
「今すっげぇお前にキスしたい」
「………うん」
赤くなった僕を見て、真鍋先輩は僕の頭をくしゃくしゃっと撫でた。