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そろそろ俺行くわって、透が立ち上がった。
「え?もう?」
「今さら隠す必要ないから言うけど、圭がうち来るから」
「ええ!?」
「マジ?」
「おお、やるなぁ渡瀬」
「へぇ」
時計を見ると11時。
そっか、もう11時なんだ。
「勉強するだけだよ」
照れ隠しにそっぽを向いてむすっと言ってる透を、みんなで笑った。
うっせーよって、言いながら荷物を持つ。
「んじゃおれらも行くか、ハヤ」
「俺らって何だよ」
「え?一緒に帰ろうよ」
「何でだよ」
「照れんなよ」
「照れてねぇよ」
え?友弥も帰っちゃうの?
ってことは僕も帰らないと、ダメかな。
本当はもうちょっと居たいけど……。
「じゃ」
「真尋はまだいいだろ」
僕も帰りますって、言う前に真鍋先輩に先を言われて、3人がニヤニヤしてる。
し、視線が痛い。
「あ、うん。大丈夫」
「玄関まで行くよ。真尋も来い」
「………うん」
真鍋先輩の指が僕の指に絡まって、そのまま玄関まで手を繋いで行った。
バイバーイって手を振って、戻るぞって真鍋先輩に引っ張られて、行こうと思った時に、友弥が昨日買っていた木戸先輩への1ヶ月遅れの誕生日プレゼントを渡してるのが見えた。
どんな顔で友弥が渡してるのか、どんな顔で木戸先輩が受け取ってるのかが見えなくて、ちょっと残念だった。
何だかんだ言って、あのふたりってラブラブだよね?
「真尋?ほら寒いから」
「うん」
差し出された手を握って、部屋に戻った。
何か、さ。改めてふたりきりって、さ。落ち着かないんだけど、どうしたらいいんだろう。
「あの、先輩………」
「何?」
「髪の毛、くすぐったい………」
今、真鍋先輩の中学時代の卒業アルバムを見せてもらってるんだけど、後ろからぎゅってされてて………あの、余計に落ち着かないんだけど………。
「先輩は、中学の時もサッカー部?」
「そう」
「あ、居た!!」
真ん中に座って睨むように写ってる真鍋先輩は、カッコいいっていうより、ちょっとかわいい顔。
ふふふって笑ったら、何?って肩に顎を乗せられた。
「先輩、何でいつもカメラ睨んでるの?」
「………………反抗期」
「反抗期!!」
「無駄にイライラしてたんだよ」
「今は違うの?」
「今?」
「今」
肩越しに目が合って、真鍋先輩がふって笑った。
卒アルとは全然違う、眉毛が下がった、優しい顔。
「今は、違う」
「違うんだ」
「何でかな。お前見てると、イライラしてる暇もないわ」
「………僕?」
「ドキドキは、するけどな」
「………うん」
ドキドキする。ドキドキ、するね。
僕もずっとドキドキしっぱなしだよ。
「先輩」
「ん?」
「………大好き」
「ばーか。煽ってんじゃねぇっつーの」
「いたっ」
ごつって、頭をぶつけられて。
ふたりきりの部屋で、僕たちはそっとキスをした。